皮一枚
……退屈だ。片っ端から友人に電話をかけたが、今日は誰もつかまらない。
その男は大の字になって寝転ぶと、ため息。次いで大きな欠伸をした。
少しの間。漏らした息の音も耳の奥で乾き、静けさの中、ただ天井の木目を見つめる。
すると、何か話し声が聞こえた。
テレビの音だろうかそれともラジオか。
このアパート、壁薄いんだよな……でも、なんだろう? なにか……。
気になった男はよっと起き上がり、壁に耳を近づける。
音の出どころは隣の部屋で合っていたようだ。ボソボソボソボソと。女性、それも年寄りの声のようだ。
電話だろうか? それにしては絶え間も起伏もなく喋り続けているように思える。
……念仏?
ふと男はそう思った。
だが、しっくりくる。すぐに仏壇に手を合わせ唱える老婆の姿が頭に浮かんだ。
……だがそれがなんだ。つまらない。
男は壁から耳を離し、また横になった。しかし。
……ん? 音がさっきより近い?
そう感じた男はもう一度壁に耳を当てた。
それは壁一枚隔ててもはっきりと聞こえた。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
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