過去の思い出と、今
一色 サラ
思い出と疑い
「おはようございます。」
テレビのアナウンサーが朝の挨拶をしている。テレビの左上に6月28日と記載されているのを見て、
「おはよう」
高校1年生になる娘の
「おはよう」
もう学校が始まって3カ月が過ぎようとしているので、高校の制服は板について気がする。
「あまり無理しないでね」
「無理なんかしてないよ」
「そう、じゃあ、行ってきます」と言って、歩美は学校に出かけて行った。薫もそろそろ出かけないといけない。朝になっても来なかった夫の
今日は、1件だけ、結婚式がある。無事、披露宴が進むことを祈るばかりだ。薫はウエディングプランナーとして、働いて、20年になる。ただ、今日は2003年の6月28日に行った、薫と保の結婚式が頭から離れなかった。今までずっと、毎年、6月28日を過ごしてきたのに、なぜか、今年だけ意識をしてしまっている。
新郎新婦がチャペルで愛を誓って、これから先の永遠と願っている。自分たちもそうだった。と、何回も見てきているはずなのに、自分たちの結婚式を思い出してしまう。今までなかったので、薫はどう切り替えればいいのか、よく分からなくなっていく。披露宴に入っても、自分たちはあんなことしたなとか、18年前の出来事が走馬灯のように、頭に駆け巡る。
自分たちの結婚式の思い出を振り払うように理性を保つように、仕事を行うようにした。無事、何事もなく、披露宴も終了した。
帰りの電車の中で、歩美かLINEが来て、「今日は、私が料理作るから」と連絡が来ていて、うれしい気持ちを何か、企んでいるのではないかと、疑ってしまう気持ちが絡みあっていく。
マンションのドアを開くと、誰が中で話しているのが聴こえてくる。
「ただいま」とリビングに入ると、歩美と保がいた。
「お帰り」と2人に出迎えれて、気恥ずかしさが出てしまう。
テーブルの上には、シャンパンとお取り寄せの料理が並べられていた。
「なんか、合ったの?」
「別にいいじゃん、お母さん」
歩美に満面の笑みで言われて、それ以上は追及しようとはできなかった。朝から、色々と考えこんでいた不安が吹っ飛んだ気がする。
ただ、お寿司屋やお肉などの料理が並んでいた。これは薫が好きなものではなく、2人が好きなものばかりだったことに、薫は自分の好きな煮物系があったらうれしかったなと思ってしまった。
「なんかさ、18年前の結婚式を思い出してね。変に今日は祝いたくなったんだよね。」
と保は恥ずかしそうに言う。ただ、夫婦揃えて、18年前の結婚式を思い出していたことに、赤面しそうになる。
「そうだね。今日だったね。結婚式」と思い出していないふりと薫はしてしまった。
過去の思い出と、今 一色 サラ @Saku89make
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