6-Ⅶ ~完成・ギジンナオールZ~
「待たせたな。これが擬人化を元に戻す銃、『ギジンナオールZ』だ」
モガミガワが持ってきた銃は、以前作っていた擬人化銃の3倍は大きい銃だった。
両手持ちのショットガンくらいの大きさである。
「何でこんなサイズに?」
「またウッキーに持っていかれてはたまらんからな」
以前の失敗はサイズ感の問題だと判断したらしい。まあ、ウッキーのサイズならこんな大きさの銃は重くて持ち運べないだろうことは間違いない。
「それじゃあ、戻しに行きましょうか」
「うむ、どこからだ?」
「先に地下にあるものから治していきましょう」
そうして、安里探偵事務所の地下室にて、いよいよ擬人化解除が始まった。まず初めに元に戻ったのは、流石に家に連れ帰れなかった7人の女たちである。
蓮が光線を当てると、女たちはみるみると馴染みと安心感のある姿に戻っていく。そして3秒も経たないうちに、女たちは蓮の衣服へと姿を変えた。
「おお―……!!」
「どうだ、凄いだろう!? ドブネズミどもも、これで元に戻してドブに捨ててやったわ」
「ただ家に帰しただけでは?」
そう言いながら、まずは無機物を元に戻していく。改めて見ると、本当にいろんなものが擬人化されていた。自転車だったりガードレールだったり、凄いものだとペットボトルなどもある。
「本当に見境なかったんだな、これ……」
「あとであのビルも直してあげないとですね。小学生男子の度胸試しスポットになりつつあるって噂ですよ」
「馬鹿ね、男って」
舌打ちしながら朱部が呟く。擬人化で生成される女性が皆巨乳だったのが気に食わないらしい。
あっという間に擬人化女子たちの収容スペースは物置と化した。
「さてと。次は動物だな」
「そうですねえ。キューちゃんも含めて」
「おう」
隣の収容スペースにいた男女にも、片っ端から擬人化解除光線を当てていく。仮として服を着せられていた人たちは、みるみると縮んでいった。やがて、服の中から、犬や猫、そして虫などがひょっこりと顔を出す。
後は、飼い主がいる動物を元の場所に戻してやるだけだ。野生動物は山にでも放しに行こう。虫かごとケージに、それぞれを入れていく。これが結構時間がかかる作業だった。
一通り動物をしまい終えた安里が、汗をぬぐいながら蓮を見やる。
「さて、次は……」
「わかってるっての」
蓮は銃を構えると、ぱっとキューの方に向き直る。
「ダーリン?」
キューは自分が何をされるのか、全く分かっていないようだった。
「……短い間だったけど、楽しかったぞ」
そう言って、蓮はためらわずに引き金を引く。
まぶしい光が、キューを包み込んだ。
(さあ、何になる。イヌか、ネコか、鳥か、それとも――――――)
光をしばらく照射し、蓮は引き金を離す。
目をつぶり、顔を腕で覆っているキューの姿が、そこにはあった。
「…………あれ?」
一瞬、その場にいた全員が静寂に包まれた。
「だ、ダーリン? 何?」
恐る恐る目を開けるキューに、蓮は再び光を当てる。
「やー! まーぶーしーいー!!」
嫌がるキューに、蓮は断続的に光を当て続けた。
「やめてあげなよ……」
さすがに見かねた愛が、蓮の手を止める。蓮は銃をちらりと見ると、モガミガワをきっと睨んだ。
「お前これ壊れたじゃねえかよ」
「その発想に至る貴様の単細胞っぷりには感心するよ」
直球で暴言をはじき返された蓮は、モガミガワにキャメルクラッチを極める。
「口で負けたからって暴力に訴えるのは良くないと思ぐわああああああああああああああ!!!」
タップしたので開放してやると、モガミガワはよろよろと起き上がって光線銃を担いだ。
「全く……壊れてなどいないことを見せてやる。いいな?」
モガミガワはそう言い、光線銃のトリガー近くについていたメモリを左に回す。そして光線銃を、近くにいたボーグマンめがけて放った。
光を浴びたボーグマンは、みるみる女性の姿へと変貌する。
「それで……と」
メモリを元に戻し、再び照射する。ボーグマンだった女性は、再び機械人形のボーグマンの姿へと戻った。
「ほら。壊れとらんだろう」
ドヤ顔のモガミガワと、ポカンとしているキューを、蓮は交互に見る。
「……え、じゃあ……まさか……」
「まさかも何もない。こいつは人間だよ。間違いなくな」
となると、今までやって来たスキンシップのあれこれというのは……。
蓮の顔が、今にも爆発しそうなほどに真っ赤になった。そして、そのまま彼は床に座り込んでしまう。
「れ、蓮さん!?」
「今まで動物だからとやって来た自分の所業に、人間だとわかって「恥」という概念を覚えたようですね」
「ダーリン……?」
キューが心配そうに蓮に近づくと、蓮はぱっと振り返って彼女と少し距離を取る。
「……せ、セクハラで訴えるのだけは……勘弁してくれ……本当に、犬とか猫とかだと思ってやってたわけで……いかがわしい気持ちがあったわけじゃねえんだ……」
手で制しながらそうぶつぶつ呟く蓮に、キューは頭に?を浮かべている。
「いつになく動揺してますね、蓮さん」
「面白いわね」
「え、え、あの……え?」
面白がって録画している安里たちと、状況に着いて行けず、おろおろしている愛。
「……ふん、呑気な奴らめ」
それを見やっていたモガミガワが去ろうとするのを、朱部が撃った銃弾が止める。
「待ちなさい。
結局擬人化させられるという事実がある以上、モガミガワのような危険人物にそんなものを持たせておくわけにはいかないのだ。
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