第1話 【ボーイ・ミーツ・ガール編】ガール・ミーツ・最強さん。
1-プロローグ ~世界崩壊への序曲~
ブラジルの主要都市、リオデジャネイロ。
賑わう街並みから外れたスラム街の一角に立つ廃ビルを、警官200人ほどが囲んでいた。その武装も拳銃どころではなく、機関銃から手榴弾、果てはドローン兵器まで飛び回っている。ざわめく人々の道を塞ぐのは、パトカーではなく装甲車だ。
ビルの上には報道ヘリが何台も舞い、ブラジルどころか世界中のメディアが注目しているのがわかる。
廃ビルには、世界的にも有名なテロ組織が、人質を取って立てこもっていた。怪しい邪神崇拝集団であり、今にも人質を皆殺しにし、世界を滅ぼす邪神を召喚しようとしている。その儀式場が、この廃ビルというわけだ。
そして、今までにも儀式や生贄として大量殺人を繰り返している彼らは、世界的に指名手配される超凶悪犯。
そんな教団のテロリストたちは、廃ビルの隙間から外の様子を窺っている。機関銃を構える彼らの人数は、わずか3人。明らかに過剰戦力。だがそうしなければならないほど、彼らは危険だった。
廃ビルの床には鶏や豚の血で描かれた魔法陣が不気味に描かれており、その上に6人の女性が魔法陣の線を結ぶように拘束されている。儀式の生贄とするために拉致してきたのだ。
現在、儀式は最終段階。ここまで進めるのに、数多くの同胞を失っていた。今回も廃ビルに入り込むまでに、10人もの同胞が帰らぬ人となっている。
「なに、彼らの魂は、我らが悲願を果たすことで救われるだろう」
「我らも後を追うことになる。死後の世界で幸福に過ごすのだ。……さて」
凶悪犯たちはそう言うと、ナイフを取り出した。切先を向けられた女性の顔が、恐怖で強張る。
「生贄にするには、生きたままはらわたを引きずり出さなければならんのだ。銃ではできないからな」
そう言いながら、凶悪犯は恍惚とした表情で、女性の臍の下ーーーーーー子宮あたりへと、ナイフを押し付ける。
猿轡をかまされた女性は、金髪を揺らしながら「うううううう!」と泣きさけんだ。
「そう騒ぐな。神の生贄となるのだから、これほど光栄なことはないぞ?」
押し付けられたナイフが、いよいよ女性の肉を切り裂こうとした、その時。
カランと、何かが転がる音がした。
凶悪犯たちが見たのは、丸い何か。
「しまった! 閃光……」
言うよりも早く、まばゆい光が廃ビルの一室を包み込む。
光に凶悪犯と女性たちが目をくらませる中、ゴーグルをつけた特殊部隊がすかさず儀式場へと突入する。
「人質、確保しました!!」
「よし!!」
特殊部隊のチーフは、凶悪犯たちを確保しようとする。
しかし、目が見えなくなり、生贄を奪われることを想定していた凶悪犯たちは、すでに覚悟を決めていた。
「こ、こいつら……!! 自分のはらわたを引きずり出していやがる!!」
「ふ、フフフ……我らの魂は、神によって救われる……貴様らは、ほろ、びる……!!」
凶悪犯の一人が呟くと、3人の凶悪犯たちは揃って何かを唱え始めた。
「な、何のつもりか知らんが確保だ!! 急げ!!」
特殊部隊の精鋭が彼らを魔法陣から引きはがそうとしても、凶悪犯たちはそこから動こうとしない。
全身に力を込め、激痛にさいなまれながら呪文を唱え続けた。
そして抵抗を続けて10秒。
呪文を唱え終えた彼らは、ふと抵抗をやめた。
「……ダメだ。死んでいる。3人ともな」
特殊部隊の隊長は、首を横に振った。
「最後に何か言っていたようだが、わかるか?」
「ザ・メーン、とか何とか言ってた気がするが」
「わからん。怪しいカルト宗教だし、福音でも呟いてたんじゃないか?」
「……まあ、そうだろうな」
隊長は、死体で結ばれた魔法陣を見る。
(こいつらは、一体何を
隊長がそれを知る由はなかった。
***********************
「大変です!! ――――――邪神が、地上へ現われようとしています!!」
地上から遠く離れたところで、頭に輪を浮かべ、背中に羽の生えた男が叫んだ。
「あと数秒で、地上へ顕現します!!」
「なんとしても食い止めろ!! 全天使を動員するのだ!!」
「しかし、神様!! 今、上級天使はみな邪神の眷属との戦いに手いっぱいで、それどころではありません!!」
「ぬ、ぬぬぬ……生贄を得たことでさらに力を増したか……!!」
神様、と呼ばれた偉丈夫は、長い白髭をさすりながら脂汗を浮かべている。
「顕現の予定地は?」
「日本です!!」
「……あの魔法陣は、地球の反対側の座標へ召喚させるものだったのか……!!」
天使の言葉に、神は焦った。
「……どのみち、もう間に合わん……!! 最小限に被害を抑えるしか……!!!」
「邪神、顕現します!!! 3、2、1……!!」
神は、絶望的な状況に目を伏せた。
(世界は、滅びる――――――――――――――――!!)
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――――――小説をご覧いただきありがとうございます。
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蓮「……俺の出番は?」
――――――主人公さんはもうちょっと待っててください。
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