プロロ-グ
あの日、小さな白い病室で大きな泣き声をあげてから6年。滉一は黒みがかった青色に明るい緑のラインが入った真新しいランドセルを背負い、満開のピンクの花々の下で、覚えているはずのない光景を思い出していた。
彼は、数万人に1人と言われる、「幼児期健忘」せずに成長した子供だった。
「滉一、ちゃんとカメラ見て―。」
父のその一言で我に返る。慌てて笑顔を取り繕う。何の不便もなく、すぐに笑顔を作れるのも、彼の特技の1つだった。
まだ入学式まで2時間あるというのに、彼の父はもう張り切っている。それもこれも、実際に式に顔を出せない母への思い出作りの為なのだろうか。息子のことなど気配りもせず、仕事を優先してしまう母を滉一はあまり好んでいなかった。
父と息子と祖父母だけの、退屈な写真撮影会を終えると、彼は友達を見つけて駆け寄って行った。
「おはよー。」
「おはよう。」
滉一の声に最初に反応したのは、親友の祐也だった。同じマンションで誕生日も1日違い。幼稚園入園前からの仲だった。
「滉一、祐也、おはよー。」
小学一年生なりの内容の乏しい会話をしていると、雪穂と瑞子が近づいてきた。
4人は共に小川第一幼稚園を卒園した仲良しだ。
後ろでは、親も集まって話をしている。
ぎこちなく制服を身にまとい、校長先生の長話を目をキラキラさせながら聞いている。
―――ように見えるが、彼らの好奇心は初めて見る周りの同級生、大きくて天井の高い体育館、ステージにスライドを映しているプロジェクターなど、全く別のものに向けられていた。
形式的な過程を経て、いよいよクラスが発表される。
今年度、46期生は男女合計149名。クラスは1組から4組に分けられる。
「まずは1年間皆さんと共に生活してくださる、担任の先生を発表します。」
校長先生の声とともに、7人の先生が現れる。
「1組の担任を務めるのは、皆さんの向かって右、
原泉先生は、一歩前に出ると自己紹介を始めた。
「今年この学校に来たので、私も皆さんと同じ1年生です。一緒に頑張りましょう。よろしくお願いします。」
「2組の担任を務めるのは、
「絵を書くこととピアノを弾くことが大好きです。皆さんにあえて本当に嬉しいです。よろしくお願いします。」
「3組の担任を務めるのは、
「サッカー、ドッジボールなど、スポーツが好きなので、休み時間みんなと一緒にたくさん遊びたいと思います。よろしくお願いします。」
「最後に、4組の担任を務めるのは、
「この市立
「それでは次に、児童の皆さんのクラスを発表します。」
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next chapter:第1話 ドキドキクラス発表 (7/9公開)
◇新作◇学級内で起こる不可解な連続事件 Season1.〜謎と生きる少年少女〜 Chromewrite(クロムライト) @SoutaBook
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