テイマーとして異世界転生した飼育員はワニチートでスローライフを送りたい

第9話 昼食

時刻は正午を過ぎた頃

一度、馬車で町へと戻り昼食をとり森に入る準備を済ませてから出発することとなった。

街の中心地に位置する広場に到着し、そこから5分ほど歩いたところに

10人も入れば満員になるほどの小さい建物に着いた。

店頭には特に看板などはない

「この店は私が啓示を受けた日に父様、ダイのお爺様に連れてきてもらった店だ。

ここのグラタンは絶品なんだ。」バルシュはそう言うとドアを開けた。

カラン・・・ドアについているベルが心地よい音色で入店を歓迎してくれる。

間も無く、奥から白いコックコートを着た50歳くらいの優しそうな男性が出てきた。

「これはバルシュ様、メリッサ様お久しぶりでございます。

こちらのお子様は、ダイ様でいらっしゃいますか？」

「うむ、パンザ。久しいな。ジョージの啓司を授かりにきた時以来か。

今日は三男のダイが5歳の誕生日でな。先ほど啓示をいただいてきたところだ。」

そう答えるバルシュの表情からはコックの男性に心を許している事が窺える

「これは、ダイ様5歳の誕生日誠におめでとうございます。

この店のシェフであるパンザがダイ様の誕生日が良き日になるようお手伝いをさせて頂きますのでごゆっくりお楽しみください。」

パンザは優しい笑顔でそう言うと奥にある厨房へと向かった。

厨房で準備が始まった音が聞こえ始めた

それと同時に男の子が厨房飲み物をお盆にのせて歩いてきた。

「おぉ！チャーリー。もう手伝いをしているのか！」

と父が驚きと喜びが合わさったような顔で男児に声をかける。

「いらっしゃいませ領主様。私も父と同じ料理人の適正の啓示をさずかり、半年ほど前から父の手伝いをしながら料理人の勉強をしています！」

明るく元気だが、とても礼儀正しく返事をした。

「チャーリーはパンザの息子で生まれた月が半年早いがダイと同じ5歳になるのだ。」そうバルシュはオレに説明してくれると

「ダイ様、パンザの息子チャーリーと申します。今後もよろしくお願いいたします。」チャーリーはハキハキと言うと深々とお辞儀をした。

「チャーリー、同じ歳でオレより早く啓司も受けているんだから敬語はやめて

オレと友達になってよ！」

この世界で同じ歳の子供と出会うのは初めてだったオレはチャーリーにそう提案して右手を前に出した。

チャーリーは初め少し戸惑った様子だったがすぐに笑顔になり

「うん、よろしく！」と言って握手を返してくれた。

その後、この世界でできた初めての友は父のパンザの手伝いに厨房へと戻る。

父も母も初めて友達ができた瞬間に立ち会えた事が嬉しかったようで

とても和やかな時間が流れた。

父のバルシュは料理を待つ間に兄のフレットとジョージもここで5歳の誕生日に昼食をとった事や、これからいく魔物の住む森についてを話してくれた。

話をしているとチャーリーが厨房から料理を運んできてくれた。

その料理はいつも屋敷で食べている料理とは違った創作家庭料理のようなもので

特にグラタンはホワイトソースの舌触りと野菜の甘味が口の中に広がり、食べる手が止まらない。

子供の胃の大きさが恨めしく思うほどもっとこの料理を食べていたいと思うほどだった。

そんな至福の時間を過ごし、父はもちろん母のメリッサもとても満足げな表情だ。

そうして食事を終えて席を立つと

パンザとチャーリーが見送りにきてくれた。

「バルシュ様、メリッサ様、ダイ様。

本日という特別な日に当店に足を運んでくださり誠にありがとうございました。

また是非お越しくださいませ。」

「ダイ様！またね！今度はオレも料理を出せるようにしておくから！

その時のお客様1号になってくれたら嬉しいな！」

「うん！楽しみにしてる！」

そうオレは返し、店を後にした。