第6話 5歳の誕生日

魔力循環を行い始めてから2年程たった頃

何時ものようにエリーがドアをノックする。


「ダイ様。お着替えの時間でございます」


その声にオレは「いいよ、着替えくらい一人でできるから」


そう答えるが、エリーは「はい、失礼します。」とドアを開けて入ってくる。


会話になっていない。


いつも通り、瞬きの間に着替えが済んでしまう。


続けてエリーは「本日はこの後、旦那さまの書斎にお出でください」


「あぁ、今日で5歳だからね!」そうクールに返したが、嬉しさが表情に出てしまう。


そう。今日は待ちに待った5歳の誕生日なのだ。


トランザイル辺境伯領のあるレオン王国では5歳の誕生日に教会で啓示を受けることで適正職業を知ることができるのだ。


それも楽しみなのだが、オレはこの世界にくる直前に話をした謎の声の女性に今日

がゴロウと出会う日だと言われていたのだ。


「ゴロウに会える」


「何かおっしゃいましたか?」とエリーが不思議そうに聞いてくる


しまった。声が漏れてしまった。

「ご、5度目になる。そう、5度目になるって言ったんだよ!」


「はぁ、確かに本日は5回目の誕生日ですが・・・」


ふぅ、なんとかごまかせた。危ない危ない。


なんとか危機を脱した後、父の書斎へと向かう。


書斎の前でにやける顔を整えてドアをノックする。

「父様、ダイでございます。」


「ダイか、入りなさい。」


失礼します。と一礼をして父バルシュの書斎に入る。


そこには、母のメリッサがすでにバルシュの隣に立っている。


「ダイ、お前は今日で5歳の誕生日を迎えた。

お前はこれから、守られる側から守る側の人間へとならなくてはいけない立場

となる。

それは、周りの人間だけではない。国全体を守る側の人間に成長していくのだ。

その為に、本日これより教会へと向かい適正職の啓示を受ける必要がある。

その適正職で自分の為ではなく国の為、民の為に力を使う者となるのだ。」


「承知いたしました。トランザイル家の者として恥じぬ働きを心がけてまいります。」


「・・・」


一通り仕事を終えたかのようにバルシュの表情は緩み


「うむ、誕生日おめでとう。」

「ダイ、誕生日おめでとう。」

メリッサも笑顔でバルシュの後に続く


「父様、母様ありがとうございまふっつ!?」


そう言い切る前に両親はオレのことを抱き抱える。


2歳の誕生日から毎年ハグで祝ってくれる。


前世ではほとんど経験してこなかった為、少し照れくさいが

オレもいつかこんな人間になれたらいいな・・・と毎年思う。


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