あいされていたい

さとすみれ

1話完結

 私の彼氏は常に家にいる。昼はどこかに出掛けているっぽいけれど、私はあえて聞かない。というか、聞くのが怖い。今日はどこに出掛けたのかな、聞けないけれどいつか聞きたいことを思いながら、私は今日も駅から歩いて自分のマンションに帰る。マンションが目で確認できるくらいの距離になって顔を上げ、自分の部屋に電気がついていることに今日も安心した。彼がいつかいなくなる気がしてならないから。


 家に帰れば彼の愛を受け取れる。私は自分の部屋へ歩みを進めた。


 玄関を鍵を使って開けると彼の靴があった。それで私は二度安心した。廊下を進みリビングのドアを開ける。私が愛してる彼はソファに座ってスマホを見ている。私は気づいて欲しくて、


「ただいま」


と声に出した。彼はゆっくりと首をこっちに向け、


「おかえり」


と言う。彼はソファにスマホを置いて、私に近づいてきた。私の腰に彼は手を絡める。私も彼の背中に手を回した。そのまま口づけを交わす。私は彼に身を委ねた。今日はどのように愛してくれるのかと思いながら。


♦︎♦︎♦︎


 女は俺の下でないている。俺が叩いたり殴ったりするたびに。それに対していつもは欲が湧くのだが、今日はそんな気分にはなれなかった。昼に会った女…。あいつとの方が刺激的で快感だった。どうしようか。俺は動きを止めた。


「どうしたの」


と女は聞いたがそれには答えず少し考えた。


 手で殴らなかったらいいんじゃないか。ふと頭に出てきた思考を現実にすべく、俺は暗闇を漁った。


「どうしたの」


と女はもう一回言った。早く快感を、と思っていた俺はつい、


「うっせえ黙れ」


と言ってしまった。女の顔が少し強張る。その顔には久しぶりにそそられるものがあった。


 暗闇から見つけたのは、さっきまで俺がつけていたベルト。金具のところを手に巻き付け、帯の部分で女を叩いた。


「いっ――たい――」


女は何か言ったが、それは気にせず、ただ欲望のままに叩いた。その度になく女は俺を興奮させるのに十分だった。

俺は女に向かって言った。


「愛されて痛いと思うのがお前は好きだろ」

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あいされていたい さとすみれ @Sato_Sumire

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