第44話
あおいが店に出る準備をしていると、城の兵士が手紙を持ってきた。
「おはようございます、あおい様。クレイグ様からお手紙です」
「え? クレイグ様から? 珍しい……。ありがとうございます」
あおいはクレイグからの手紙を受け取ると、早速開いて読んだ。
<おはようございます、あおい様。実はメアリー様が熱を出して寝込んでおります。薬はあるのですが、まずいと言って飲んで頂けない状況です。なにか美味しい熱冷ましを作って城まで届けて頂けませんか? クレイグより>
「えー!? メアリー様、熱出しちゃったの!?」
あおいは腕組みをして考え始めた。
「生意気な子だけど、まだ子どもだもんね。甘い熱冷ましか」
あおいは冷蔵庫の中を見て、頷いた。
「可哀想だし、ちょっと頑張って見ちゃおうかな」
あおいはまず、薬草を煮出して熱冷ましを作った。
そして、こんどは卵と牛乳をまぜたり、カラメルを作ったりしてプリンの材料を揃えた。
「これを錬金の鍋に入れて熱冷ましの薬と混ぜれば……」
釜の中が光る。
「よし! 熱冷ましプリンが出来た! 味はどうかな?」
あおいは一匙すくって食べてみた。
「うん、ほろ苦いけど甘くて美味しい。これなら、メアリー様も食べられるよね」
あおいは小瓶に熱冷ましプリンを詰めたものを三つ作って、カバンにしまった。
「よし、じゃあお城に行こう!」
あおいは城に向かって歩き始めた。
「こんにちは、クレープ屋のあおいです!」
「これは、お待ちしておりました。あおい様」
少し疲れた様子のクレイグがあおいの到着を待っていた。
「熱冷ましプリンを作ってきました!」
「それはありがとうございます。メアリー様はこちらです」
クレイグが客室へあおいを案内すると、ベッドの中に赤い顔をしたメアリーがいた。
「あら、とし……いえ、あおいさん、何しに来たの?」
「お見舞いですよ。メアリー様」
「私が弱っているのを良いことに、復讐しに来たんじゃ無いの?」
熱で声が弱々しいが、メアリーは憎まれ口を叩いた。
「これ、よく冷えていて美味しいですよ。プリンっていいます」
あおいは気にせずプリンをかごから取り出して、メアリーのベッドサイドの机に置いた。
「……食欲無いの」
ベッドの中にメアリーは潜り込もうとしたが、クレイグがメアリーを起こした。
「メアリー様、昨日から飲み物しか召し上がっていないじゃありませんか。あおいの作ってきたプリンを食べて下さい」
「……分かった。一口だけもらうわ」
メアリーは上半身を起こして、机に置かれたプリンを食べた。
「冷えてて、甘くて美味しい」
メアリーはお腹が空いていたのか、すぐに一瓶のプリンを食べ終えた。
「あら? なんだか頭の痛みが治まったわ」
「メアリー様、熱は?」
アレックスがやって来て、メアリーのおでこにおでこを当てた。
「うん、熱も下がってきているようですね」
「よかった」
アレックスがあおいに微笑むと、メアリーは頬を膨らませて、ベッドに潜り込んだ。
「それでは、食後に熱冷ましプリンを食べて、よく眠って下さいね」
「……ありがとう、とし……いえ、あおい」
メアリーは、ベッドの中からあおいに礼を言った。
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