第7話
それにしても、俺に想い人?何の話だ?
自慢じゃないが、俺は小さな頃からずっと白薔薇一筋。
最初に結婚を勧めた側近の黒に、愛が重いだのストーカーだのと言われているくらいだ。
兄の第2王子にも散々からかわれている。
…最近学園で距離をとっている件か?
白薔薇から聞いたのか、それか他の誰かから?
距離はとっているが、彼女に近づく者には牽制するのを忘れていない。
仮にも王子である、俺の睨みを受けても彼女の側にいられるのは、図々しい第4王子位だ。
なので、最近は俺よりも側にいる第4王子に嫉妬しまくっている。
それなのに、俺に想い人?
とんでもない誤解だ。
王宮庭園はかなり広い。
庭園をぐるりと王宮が囲んでいる。
今光ったのは、西側でここからは反対方向。
白薔薇は普段は俺の部屋のある東側にいるから、あんな遠くまでは行かないはずだが…。
環状形になっているので、あちらまで行った可能性もある。待たせすぎたか。
宰相があんな誤解をしてるなら、白薔薇もそう思っているかも知れない。
彼女は、なぜか俺達が政略婚約だと思っていて、俺はその誤解を解いていないから…。
色々考えながら走っていたら、先ほどの稲光の辺りまできた。黄色い薔薇が咲いている。この先は西の第2王妃側の住居で第2、第4王子の住まいでもある。
普段白薔薇は東の第1王妃側の第1、第3王子の住んでいる側の庭園にしかいないのだけれど。
ここまでほぼ一本道なのに会わなかっという事はこの先に行ったのか?
胸にピリッと嫉妬が走る。
第4王子に会いに行った?
第4王子は数日年下の俺の弟で、この春俺達と一緒に学園に入学した、俺と白薔薇と同級生だ。
金髪に青い瞳、背は俺よりもほんの少しだけ高い。
そのうち抜かす予定だけれど。
以前から王宮で度々3人で遊んではいたが、白薔薇は俺の婚約者なのでそんなにべったりというわけではなかった。
が、入学してからは、べったりなんすよ!
俺が離れているのを良いことに!
再三牽制しても、白薔薇姫が可哀想だ、1人にしておけない、と言うことを聞かない。
俺の最近のイライラの原因。
ここは、周囲の生暖かい視線に耐えて白薔薇の隣を死守するべきだったのでは?と、今更ながらに思えてくる。
と、第2王子と侯爵令嬢が道の先に見えた。
『兄上?』
俺が声をかけると、侯爵令嬢は、小さな声で挨拶をして、その場を立ち去った。
なんて言ってたかはわからなかったが。
どうもこの人には、嫌われている気がする。
まあ、白薔薇意外はどうでもいいけど。
『最近侯爵令嬢と仲がよろしいですね』
当たり障りないように言うと
『君と白薔薇ちゃんほどではないよ。』
と、にやりと笑う。
…ほら、すぐにからかってくる。
でも、今はそんなこと言っている場合ではないので、
『白薔薇は?会いませんでした?』
と、食いぎみに聞く。
『いや、今日はまだ会ってないけど?こちらには来てないんじゃないかな。ああそうだ、これは君の?』
と左胸ポケットを指さす。
『?』
ふわふわの金髪に紫の瞳、白薔薇によく似た人形だ。
『…』
第2王子は人形を胸ポケットから引っ張り出し、
『相変わらずラブラブだね。人形まで作るなんて。
これを探しにきたの?』
と、的外れな事を言いながら俺に人形を手渡す。
何を言ってるんだ、この兄ちゃんは。
『白薔薇ちゃんが来てるなら、後で2人でお茶しにきなよ。用意させとくから。』
と言ってそのままひらひらと手を振って行ってしまった。
人形を受けとってしまった。
白薔薇にそっくりだったから、つい。
勿論、俺のでは、ない。
人形を作らせるなんてしていない。
それにしても、良く似ている。
なめらかで、つややかなハニーブロンド。
肌は真っ白で、頬と唇はピンク色。
瞳は薄い紫にもピンクにも見える不思議な色。
ずっと見ていて、何色なのかはっきりさせたくなる。
スカートを、めくってみた。
右手の人差し指で下からぺらん、と。
下着まで精巧に作られている。
凝った可愛らしいパンツをはいている。
一体誰が作った、もしくは作らせたんだ?
俺が婚約時、母から言われた事で強烈に覚えていることがある。
『白薔薇を、いやらしい目で見てはいけません』
6歳の子供に何を言ってるのかと思うが、当時の俺はドキリとした。自分の内側が見透かされてたようで。
俺は平静を装い
『そんなことしてないし~』
とか、なんとか言ったが、内心はヒヤヒヤ物だった。
それからずっと、気をつけている。
が、これは人形だから。
左のふとももをちょっと触ってみる。
人差し指と中指ですーっと、上から下へ。
右足に移って下から上へ。
そのままパンツの上で指先が止まり、フリルをなぞってお腹の方へ。おへその真下あたりのリボンの上で止める。
誰が何の目的で、俺の白薔薇の人形を作ったんだ。
許せん。俺の白薔薇を。
こんな精巧に。勝手に白薔薇をモデルにして、似ている事にも腹がたつ。
制服もパンツも精巧にできすぎている。
…本当にこういうのをつけているのだろうか??
人形相手にドキドキする。
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