39話 南集落防衛戦のこと 後編

南集落防衛戦のこと 後編








「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!ゴオオオオアッ!!!」




口の端から涎めいたものを撒き散らし、黒ゾンビが迫る。


そいつは、両腕の部分に左右非対称で鋭利な装甲板がくっ付いている。




「ふうぅ・・・!!」




短く息を吸い込みながら、真っ直ぐ踏み込む。


踏み込みながら、兜割を突きの位置へ。




「ギャバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」




俺を掴み取ろうとするように、黒ゾンビの両腕が前へ差し出される。




「っし!!」




その両腕を躱すように、一段体を低く踏み込みながら。




「おおおおっ!!!!」




同時に、諸手突きの要領で兜割を突き出す。




「ゥウッガ!?!?」




鋭く尖った兜割の先端は、真っ直ぐ黒ゾンビの口に飛び込んだ。


そのまま、黒ゾンビ自身の速度によって喉に突き刺さり・・・半ば貫通する。




「しぃい・・・!!」




喉に切っ先が貫通した瞬間、両腕に力を込めて下方に落とす。


めぎ、と感触が伝わる。




「があああああああっ!!!!!」「ェグ!?!?!?」




すかさず下げた兜割を上に再度跳ね上げる。


黒ゾンビの首に、テコの原理で力が加わってへし折れる。


捻ったことで大きくなった傷口から兜割を引き抜きつつ、倒れ込んでいく黒ゾンビの後方へ抜ける。




「ァ・・・カァ・・・ァ」




前のめりに倒れた黒ゾンビは、吐息のような呻きを漏らして永遠に黙った。






南雲流槍術、『天地挫てんちくじき』






本来は槍で使う技だが、いけるんじゃないかと思ってやってみた。


ぶっつけ本番にしては上手くいった。


・・・しかしこの技、喉に突き入れた時点で相手死んでるよな?


なんでさらにテコでへし折るのか、コレガワカラナイ。


明らかにオーバーキルだと思う。


ゾンビには効果的だけどさ。


・・・戦国時代にも、ゾンビが出たんだろうか?






「神崎さぁん!今何キ・・・じゃない!今何体ですぅ!?」




「田中野さんが無力化したのでこちらは6体目!全体としては28体目ですっ!!」




必要はないがなんとなく血振りをしつつ後方に叫ぶと、打てば響くように答えが返ってきた。


へえ、もうそんなに。


あとひと踏ん張りって所かな。




「そして・・・!」




「オオオオオオオオオオオオッ!!!!!」




神崎さんの声を、野太い叫びが遮る。


その方向に眼を向けると、石川さんの姿。




「エエエェアッ!!!!!!!」「ッゲァガ!?!?」




迫る黒ゾンビの右膝へ、鋼鉄の脚絆が蹴り込まれる。


どれほどの力が込められているのか、装甲に包まれた膝は破片を撒き散らしながら反対方向へ折れ曲がった。


その衝撃によって、黒ゾンビの上体が崩れる。


膝をへし折った足をそのまま地面に突き刺して軸足にし、反対の足が鋭く跳ね上がった。




「チェァア!!!!」「ッギャガ!?!?!?」




足の甲が黒ゾンビの顔面に衝突。


めきめきと音を立てながらめり込み、装甲をばら撒きながらその首をへし折った。


黒ゾンビは、そのまま反対方向へ吹き飛んで仰向けに倒れた。




「・・・アレで7体目ですっ!!」




「はぁい!」




残心をしながら、石川さんは新手に備えている。


俺が見ているだけで、もう3体も葬っている。


鋼鉄の手甲と脚絆があるとはいえ、とんでもない破壊力だ・・・




「ッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」




おっと、新手が盾の隙間を越えてこちらへ走ってくるのが見えた。


盾隊は依然として壁のように黒ゾンビたちを受け止めているが、何体かはこうしてこちらへ逃すような動きをしている。


全部受け止めていたら盾隊の負担が半端ないからな。


潰れて総崩れになったら困るから、こちらとしてはこれでいい。




息を整え、兜割を肩に乗せて構える。


狙いは俺だろう。


迎え撃ってやる!




「一朗太さぁんっ!お背中、お借りしますっ!!」




「・・・どうぞっ!!返さなくっていいですからね!!」




が、後方から式部さんの声と足音が聞こえたので踏みとどまる。


軽い足音は、俺の3歩ほど後ろで消失。


続いて、腰と肩に本当に軽い衝撃。




「はっ!!」




肩を踏み切り、式部さんは逆手で二刀を構えて高く跳ぶ。


標的である俺の後ろから新手が出現したのを見て、黒ゾンビが視線をさ迷わせた。




「えぇえいっ!!!」




式部さんが鋭く両腕を振る。




「ギャアガッガガ!?!?」




光の尾を引いて、1対の三鈷剣が黒ゾンビの両目を貫く。


よろめく黒ゾンビの頭・・・後頭部に、式部さんが着地。


黒ゾンビは、後頭部に式部さんを乗せたままバランスを崩して前のめりに倒れる。




「っふ!!」




黒ゾンビが顔面を地面に接触させる数瞬前に、式部さんが両足で鋭く踏み切る。


自分の体重と踏み切りの勢いで、地面に激突した三鈷剣はさらに眼窩にめり込み・・・やがてさっきまで式部さんの足が乗っていた場所から切っ先が貫通した。




ひええ・・・まるで軽業師だ。


それ以前に、空中投擲の狙いが正確過ぎる・・・硬い装甲を避けて柔らかい眼球を狙うとは。


言うだけなら単純だが、実行するとなると凄まじいバランス感覚が必要だろう。


体幹が化け物である。




「式部さんすげえ!なんですかその技!?」




柄にもなく興奮してしまう。


神崎さんがうつったかな?




「ふふぅふ。降魔不動流、射ノ法二段・・・『制吒迦せいたか』で、あります!本来、技名は秘すものですが・・・一朗太さんには特別にお教えするであります!」




式部さんは、はにかみながら教えてくれた。


・・・技名までかっこいいじゃないか!!


俺の中の少年と青年が大騒ぎしている・・・!!!




「ヒューッ!!式部さん格好いい!最高!!」




「しょっ・・・!?そそそそんなに褒められても何も出ないでありますよォ・・・」




あの、クネクネしているのは大変かわいらしいと思うんですが・・・そこ、黒ゾンビの後頭部なんですよ?


バランス感覚はすごいけど・・・ちょいと見た目がサツバツすぎる。




「田中野さん伏せてっ!!!」「うおぉお!?」




神崎さんの声に慌てて腰を折ると、重なり合った銃声。


消音されていても至近距離だと結構聞こえるもんだなあ・・・




「ェエ・・・アァ・・・ァ」




今まさに盾から抜け出してダッシュの体勢に入った黒ゾンビが、膝から崩れ落ちるのが見えた。


・・・へ?


嘘でしょ、この距離から有効打を・・・?


撃ち抜いたのか、目を。




「神崎さんもすげえ・・・」




称賛を込めつつ振り返ると、曲げた左腕の肘に拳銃を乗せたどこかドヤ顔の神崎さん。


なるほど、ああやって安定させたのか・・・それでもこの距離を拳銃で、か。


銃の腕前は俺の遥か上だな。




「い、いえ、まぐれのようなものです」




少し嬉しそうに、神崎さんはそう言った。


まぐれねえ・・・俺なら100回やっても当たる気がしないが。


これやっぱり拙者いらないのでは?




「ごめん!2体行く!!」




古保利さんの声がする。


おっと、こうしてちゃいられない!!


自衛隊の皆さんもサポートに回っているようだが、近接ならこっちに分がある。


どんどん回していいんですよ?




「ガッギャアアアアアアア!!!!」「ゴオオオッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」




左右に分かれ、黒ゾンビが盾を抜けた。


1体は振り向こうとしている・・・!


駐留軍が危ない!!




「こっちだァ!!」




すかさず棒手裏剣を投擲。


側頭部の装甲に弾かれはしたが、そいつはこちらへ振り向いた。


誘引成功、ヨシ!!




「注意を惹いた方は俺がっ!!」




「おう!じゃあ反対側は俺だなァ!!」




俺とほぼ同時に、石川さんも飛び出す。


あっちは任せておいていいだろう・・・こっちに集中だ!!




「ギャバアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」




黒ゾンビもこいつらで打ち止めだろう。


ここは、真っ向勝負だ!!




「しぃいい・・・!!」




走りながら兜割を肩に乗せる。


慎重に間合いを見極めつつ、彼我の距離は瞬く間に縮まっていく。




「ゴオオオオガッガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」




「うるっ・・・!!」




体勢を前傾に移行させる勢いで、兜割を射出。




「っせぇえ!!!!」「ギャン!?!?」




勢いの乗った一撃が、真っ向から黒ゾンビの鼻に激突した。




「ぬうう・・・っがあああああああああああああああああああああああっ!!!!」




激突の瞬間に、渾身の力を込める。


鼻をへし折った勢いを殺さず、衝撃のすべてが黒ゾンビの顔面に集中する。




「ァッ!?」




顔面の装甲が放射状にヒビ割れ、手に骨の砕ける感触が伝わってきた。


・・・殺ったァ!!


黒ゾンビの体躯は弛緩し、重力に従って地面に崩れる。




「・・・よし」




残心を経て、完全に無力化したのを確認。


念のために剥き出しの延髄に切っ先を落としておく。


トドメはしっかり刺しておかんとな。




「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」




視界の隅で、黒ゾンビが石川さんを殴りつけようとしているのが見えた。




「ッセ!!」




石川さんは、その拳に手刀を入れて迎撃。


手首の装甲を断ち割りながら、下方に巻き落とす。




「セイヤッ!!」




巻き落とすとほぼ同時に、がら空きの顔面に空気を焦がす勢いの正拳が轟音と共に突き刺さった。




「ッギ!?!?!?!?!?」




頬骨を粉砕し、片方の眼球を飛び出させ。


さらに突き入れられた正拳は、見間違いではなく頭骨にめり込んだ。


黒ゾンビの顔面に、拳が埋まる。




「カァ・・・ッバ・・・」




脳にダメージが入ったんだろう。


びくりと全身を痙攣させた黒ゾンビは、前のめりに地面へ沈んだ。




「フゥウウウウウ・・・!」




息を吐きながら、石川さんが残心。


かっこええ・・・どっしりとしていてそれでいて隙が無い。


元からそういう形の彫像のようだ。


・・・五体全てを必殺の武器と化す、『貫水流』の面目躍如って感じだ。




「御見事ですっお二人とも!」




傍らに式部さんが駆けてくる。




「がはは、これっくらい軽いぜ」




石川さんの溢れる自信が・・・凄い!


自らの力量に一切の懸念がないんだろう。


俺も百分の一くらい見習いたい!




「いやあ、どうも・・・これで少しは格好がつきましたかね?」




余裕があるので、乗っかってちょっとイキってみる。




「なにを仰いますやらっ!一朗太さんは四六時中カッコいいでありますよっ!!!」




「え、えう!?」




・・・どうしよう。


凄く照れくさい。


おおお・・・顔から火が出そう。


そんな綺麗で真っ直ぐな瞳で俺を見ないでくれませんか・・・!




「?どうされましたか?」




「うえあ・・・あ、あの。そうだ!もうこれでそろそろ打ち止めですかねえ!?」




照れを吹き飛ばすように大声で尋ねる。




「そうですね、向こうの方もアレが最後でしょう」




神崎さんが言うように、坑道の出口では盾に2体の黒ゾンビが捕まっている。


その後ろには、新手の姿は見えない。


駐留軍の皆さんもこれで大丈夫だろう。




「・・・数は多かったけど、これだけの盾と軍人さんが揃ってれば大丈夫でしたね」




下準備の万全さ、それに各個人の力量。


俺・・・もちょっとは役に立ったしな。


っていうか式部さんと石川さんの力量が予想以上だった。


神崎さんは元々わかってたけど。




「アアァァア・・・」「オォ・・・オ・・・ォ」




そして2体の黒ゾンビは、盾にもたれかかるように体を弛緩させた。


よし、これで―――






―――りぃん






腰からの幻聴。


まるで、『油断するな!』と叱咤するように。


同時に、背筋が総毛立つ。




ここから見える、坑道の暗闇。


そこに、何かがちらりと見えた気がした




・・・いや、あれは。


黒、じゃない!!


あの光沢のある、黒は!!




「ヤバいのが来ます!!今までの奴とは違ッ―――」




轟音。




そして悲鳴。




盾持ちの最前列3人が、まとめてこちらへ吹き飛ばされた。


手に持っていた盾は、べコリとへこんでいる。




「―――っ!!!」




地面を蹴る。




「ギャバルガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」




坑道の闇から吠えながら出てきたそいつは・・・黒光りする肌と明らかに今までの奴より鋭い装甲を纏っていた。




「ネオ・・・ゾンビ!!」




東集落で出くわした奴と違って、ヘルメットはない。


ないが、今までの黒ゾンビと全く違う気配。


そして、瞬発力!


天然?のネオゾンビか!!




「距離を取れ!決して1人で向かうなッ!!事前情報にあった新型の特殊個体だ!!!」




「Be careful!A new individual! !Take charge of multiple!!!」




古保利さんとオブライエンさんの声に、駐留軍4人が一斉に盾を構えつつ走る。


盾の陰に全身を隠したその姿は、まるで装甲騎兵の突撃のようだ。




「ギャッガガガッガガガガガガガガ!!!!ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」




前方から迫る盾持ちに対し、ネオゾンビが両手を大きく振りかぶる。


いかん!前の個体と同じだとするとアイツは・・・っ!!




振り上げた両腕の手首あたりの装甲が、瞬時に伸びる。


瞬く間に、それは刃渡り1メーターほどの鋭利な直剣めいた形状へと変わる。




「ガガガガ!!ガアアアアアアアオウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!」




空気を切り裂き、両手が振り下ろされる。


盾に接触した刃が火花を散らし、重厚なはずのそれへ斬り込む。


ヤバい!・・・貫通する!!




しかし流石は百戦錬磨の駐留軍。




刃が食い込んだ盾を持つ2人は、すぐさまブレーキをかけながら盾から手を放して後方へ跳躍の姿勢を取った。


だが、アーマーの重さが仇となった。




「ガァア!?」「ッグ!?」




盾を貫いた刃が、ギリギリ体に触れる。


一番厚いだろう胸部の装甲板から火花が散る。


致命傷ではないだろうが、それでも2人は衝撃で地面へ尻もちをつく。




速く!もっと速く!!




走りながらヘルメットを外し、防弾ベストを脱ぎ去る。


今は何よりも速さが欲しい!




残る盾持ち2人は仲間の状況を見て盾を放り捨てた。


そして、スタンバトンを構えながら雄たけびを上げて肉薄する。


怪我人が離脱する時間を・・・稼ぐ気か!




「やめろ逃げろ!!そいつが伸ばせる装甲板は1か所じゃないッ!!」




俺が叫ぶのと、ほぼ同時だった。


ネオゾンビの両腰の装甲板が、左右へ凄まじい勢いで射出される。




「―――!?」「ッゴァ!?」




左の隊員は肩口を貫かれ。


右の隊員は鎖骨周辺を貫かれた。




あのままネオゾンビに動かれたら、右の人は致命傷だ!!




「っふぅう!!」




迷ってる暇はない。


走りながら前方に兜割を放る。


そして、回転しながら落ちてくる柄尻を・・・蹴り飛ばす!!




「飛べぇええええええええええええええええええッ!!!!!!!!!!!!!!」






南雲流剣術、奥伝ノ一『飛燕』






飛翔する兜割が、ネオゾンビの胴体に命中。


胸部の装甲板にヒビを入れただけで、固い金属音とともに弾かれた。


やっぱり硬すぎるだろ装甲!?


並のゾンビなら胴体貫通するくらいの勢いは出てたと思うんだけど!?




だけどこれで注意はこちらへ向いた!!


その証拠にネオゾンビは左右を気にすることもなく、俺へ向けて吠えるように大きく口を開けた。


そうだ!俺を見てろォ・・・お、おぉ!?




ネオゾンビの胸が、目に見えて膨らんだ。




一瞬後、何かが破裂するような異音。




「―――ッ!?!?」




勘を頼りに強引に左へヨレる。


さっきまで俺の体があった場所を、何かの液体が通過していった。


ひどい、刺激臭がする。




ふざけんなよここへ来て新技?か!


ポンポン特殊能力身に着けよってからに!!




「・・・ぐぅう!?」




畜生!少し腕にかかった!


インナーが溶けるのが見なくてもわかった。


肌が、焼けるように痛む。




肘のあたりをかすっただけだってのに、なんちゅう痛さだ!!


酸かそれに準じる何かをぶちまけられたらしい!


なんちゅうゲロだ!!




「っぐぅう!」




すかさず表皮を抜刀した『魂喰』で大きく削り取る。


ちょっと大きめに切り過ぎたかもしれんが、感染するよりマシだろう!


胃液?っぽいから大丈夫だとは思うが!




食いしばった歯の隙間から息を吐き、加速。




「怪我人を下がらせてください!!俺がコイツを!!ここに縫い留めます!!!!」




俺がそう叫ぶよりも早く、周囲の軍人さんたちが走り始める。


さっすがあ!判断が早い!




「ガァボッ!!!」




再び膨らむネオゾンビの胸。


くっそ、攻撃範囲が分からんからすこぶる避けづらい!


掠っただけでこのダメージ・・・喰らうわけにはいかん!!


大きく避け・・・




「一朗太さん姿勢を低く!!私を―――信じて!!!」




いつもとは違う式部さんの声。




「―――応ッ!!」




さらに前傾姿勢になる。


俺が、式部さんを疑うわけないでしょ!!




頭の上を、何かが通過した。




「ェバッ!?」




銀光を纏った1本の三鈷剣が、俺にゲロをぶちまけようとしたネオゾンビの口腔内に突き刺さる。




「ゥオオオオゥオ!?!?ガガガガガガガッガ!?!?!?」




溢れ出たゲロがネオゾンビの口から喉までにべっとりと付着。


白い煙を上げてじゅうじゅうと音を立てる。


それ外皮には効くのか!よくわからんが助かった。




「式部さん最高!天使!大天使!!」




ネオゾンビが怯んでいる隙に、間合いに入る。




「かかって来い!!てめえの相手は俺だァ!!!」




足を止めながら、空中で柄を持ち替える。


順手から、逆手へ。


同時に柄を回し、峰の部分を前方へ。




「ギャガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」




いまだに燻ぶるネオゾンビが、両手の剣を誇示するように構えて吠える。


それを聞きながら、無手の左を前に突き出す。


逆手で『魂喰』を握る右手を、胸の前に構える。


重心は気持ち後方、迎撃の姿勢へ。




南雲流剣術、応報の型『はじき




実戦で使うのはこれが、初めてだ。




「南雲流、田中野一朗太・・・参る!!」




ネオゾンビの右手が轟音と共に迫るのを見ながら、俺の心は凪いでいた。

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