第40話 御神楽高校訪問のこと

御神楽高校訪問のこと








ノーマルゾンビから黒ゾンビへの進化。


それを目撃した俺たちは、すぐに車に乗り込んで高柳運送へ帰還。


神崎さんは帰るなり秋月へ連絡していた。




目撃したものを報告し、詩谷や秋月でも厳重に警戒してもらうためだ。


黒ゾンビは、自衛隊なら問題なく処理できるとは思うが・・・今までのゾンビとは桁が違う戦闘力を有している。


戦闘員ならともかく、生存者の方々はノーマルゾンビにも苦戦するのだ。


この上あんなのが発生したら、目も当てられないだろう。




報告が終わった神崎さんに聞いた所、秋月では共食いをするゾンビ自体目撃されていないようだ。


宮田さんや太田さんにも自衛隊経由で連絡を取ってもらったが、あちらでもそうらしい。


ほっと胸を撫で下ろしたが、この先もそうだとは限らないので十分に注意していただきたい。




モンドのおっちゃんには、宮田さんが伝えてくれるそうだ。


・・・まあ、おっちゃんなら苦戦はしないだろうが、なにしろあそこには非戦闘員が多いからな。


美玖ちゃんや由紀子ちゃんたちに何かあったらと思うだけで、胃がキリキリする。


だがまあ、現状これくらいしかできないからな・・・




「それにしても、なんで龍宮だけが・・・ああいや、他の県にもいるかもしれんですが」




「他府県との連絡が途絶していますからね・・・純粋に、人口が多いほどゾンビの数も多いですし、突然変異というか特殊個体の数も多いのではないかと思いますが・・・」




報告を終えた神崎さんと、屋上で一服しながら話している。


空は曇り模様。


・・・一雨きそうだな。




「・・・俺、嫌なことに気付いたんですが。あの、テレビ局の時」




「奇遇ですね田中野さん、私もです」




どうやら2人して同じことを考えていたようだ。




「黒ゾンビも・・・頭ボリボリ喰ってましたよね」




「ええ。と、言うことは・・・」




うすら寒い気持ちを覚えながら、言葉を紡ぐ。






「黒ゾンビの・・・『その先』もあるかもしれないってこと・・・ですよね」






俺達の間に、じっとりとした沈黙が満ちる。




そうなのだ。


ノーマルゾンビが頭だか脳を喰って進化?したというのなら。


黒ゾンビが同じことになる可能性もあるのだ。


ワンチャンただの共食い&脳味噌好きということも考えられるが・・・




「ううむ・・・これは俺たちの手に余りますなあ」




「もっと情報が必要ですね、こうして考えているだけでは何にもなりませんし」




その通りである。




ではどうするか・・・


詩谷や秋月では共食いゾンビの気配すらなく、現状新たな情報源はない。


とすると・・・




「・・・いい機会だし、行ってみますか」




「ええ、私もそう思っていました」




そういうことになった。








ビルの間を縫って走る二代目愛車。


他には車が走っている様子はないが、しっかりと偵察しておかないとな。


チラホラ見えるゾンビは、全てがノーマル。


今のところ、黒ゾンビの姿はない。




俺達は、御神楽高校へ行ってみることにした。




山中さんの娘さんのことや、璃子ちゃんの同級生のこと。


それになにより、ゾンビの情報や自衛官の消息。


色々気になることがあるからだ。




もしも警察の手によって避難所が運営されていれば、詩谷との連携も取れる。


・・・この前の俺の大怪我でうやむやになってしまったが、ここらで訪問しておこう。




「例によって神崎さんに大分お世話になりますね・・・足を向けて寝れないなあ」




「いいえ、連絡網の構築や関係各所との折衝は私の仕事ですから。田中野さんはいつも通り私の護衛・・・いえ相棒をよろしくお願いしますね」




くすりと微笑み、助手席でそう言う神崎さん。


ううむ、天使か。


できた人間であることよなあ・・・




今回は先輩方はお留守番だ。


戦闘の予定はないし。


・・・ないよな?




まあ偵察はしっかりするし、もし御神楽高校がヤバい状況になっていたら即引き返す。


その後戦闘員総出で突撃すればいいだろう。


完全に壊滅していたら突撃もしないし。




「帰ったらラーメンパーティですよ神崎さん!・・・何味にします?」




賞味期限ヤバいしな。


なんか即席めんの賞味期限、意外と短いよな。


他の保存食と比べればだけども。




「ふふ、そうですね・・・私は豚骨が好きです」




おや、意外。


なんか塩とかが好きそうなイメージだった。




そんなことを話す間にも車は進む。


・・・今のとこヤバそうな車はいないが、油断は禁物だ。


神崎さんも、いつでも発砲できるように拳銃を手に持っている。


動きやすいようにシートベルトは外しているが、こんな時なので道路交通法は無視する。


誰も守ってないし。




「うわ、悪しきテレビ局が・・・忌々しい」




赤い電波塔が、遠くのビルの間からちらりと見えた。




「テレビ局には何の罪もありませんが・・・」




ごもっともである。


どちらかというと、ヤクザとかいう広域指定放射性廃棄物が悪い。


・・・もう今度からは見かけたら全力でぶち殺す。


生きてても何の利益ももたらさないカスだしな、うん。




「えーと・・・ここが大滝通りだから・・・ああそうか、交番のとこを右折して・・・」




カーナビを見ながら道順を確認する。


前の愛車とは微妙にインターフェースが違うので、若干の違和感があるな。




「ここに、立体駐車があります。ここから偵察しましょう」




神崎さんが、目的地から400メートルほど手前の場所を指差す。


お、確かにそうだな。


ここなら上から見下ろすことができそうだ。






カーナビの誘導に従って走ることしばし。


目の前に、7階建てほどの大きな立体駐車場が見えてきた。


進入路はフリーなので、そのまま軽トラを進める。




「そうかそうか、電気がきてないからなあ・・・んぎぎぎぎ」




『駐車券をお取りください』とも言わず、発行機は沈黙している。


いつもなら券を取れば開くはずのゲートを、無理やり持ち上げる。


結構重い・・・帰りのことも考えて、反対側も上げておこう。


神崎さんは周囲の警戒をお願いしている。


・・・ふう、上がった。


重かったなあ。




車に戻って発進させる。




放置車両はそこまで多くない。


だいたい20パーセントくらいの占有率・・・かな?


車内に人影はなく、その周囲にもゾンビの姿はない。


ふむ、平日だったからかな?




1階、2階・・・とぐるぐる回りながら上がって行く。


途中でゾンビを3体見かけたが、神崎さんがそれはもう見事なヘッドショットで仕留めていた。


動く車の中からよくもまあ・・・




それ以外は何事もなく、屋上へと到着した。


周囲には、車は1台もない。




車を外から見えない場所に停め、降りる。


しばらく黙り、階下からおかわりゾンビが追いかけてこないことを確認。


どうやら大丈夫そうなので、御神楽高校側へ移動する。




「お待ちを。私が初めに行きます」




神崎さんが双眼鏡を持って匍匐前進。


以前のような狙撃を警戒しているんだろう。


周囲にはここより高い場所はないが、用心に越したことはない。


俺もこれ以上穴だらけになるのは御免である。


セクハラになるといけないので、あまり神崎さんの方向を見ないようにしながら待つ。




「大丈夫です、どうぞ」




お許しが出たので俺も中腰でおっかなびっくり向かう。


神崎さんの隣まで移動すると、懐から単眼鏡を取り出す。


覗き込むが・・・ううむ、遠くて何が何やら。


最大望遠モードにする。






御神楽高校は、その敷地内に附属中学校や図書館などを抱えたマンモス女子高だ。


勉強はもとより、運動にも力を入れているので広大なグラウンドや大型プールなども完備。


卒業生には、スポーツ選手やら政治家やら芸能人やらがゴロゴロいる。


女子高でこれくらいの規模って、全国的にもかなり珍しいんじゃないだろうか。




4階建ての校舎・・・あれは高校だな。


その影にある3階建ての校舎は・・・確か附属中学校だったはずだ。


璃子ちゃんが通ってたのはあそこだな。




広大な敷地を、高い塀でぐるりと囲まれている。


死角の部分はわからないが、ここから見る限り外壁に損傷は見られない。


建物にも破壊の跡やなんかは見えないな・・・


とりあえすガワは無事なようだ。




国道に面した大きい門が見える。


恐らくあれが正門だな。


ううむ・・・外に2人、中に・・・4人、か?


中には他にも守衛が詰めるような建物が見える。


流石県内ナンバーワンお嬢様高校だぜ・・・


目を凝らして見ると、どうやら立っているのは・・・警官の制服を着ているように見える。


だがその他にも・・・アレは多分・・・




「神崎さん、警官と自衛隊が見えますけど・・・もう1種類いません?」




「ええ、あれは駐留軍の軍服に見えますね」




やはりそうだった。


以前から影だけは散見されていた駐留軍。


・・・一瞬だけ見かけたことはあるが。


あそこは、3つの団体が共同して管理しているのだろうか。




「・・・装備にもおかしなところは見受けられません。ここからでは、ですが」




「荒れている様子もないように見えますけど・・・」




「ええ、後ろにいる学生も・・・笑顔が見えます」




目がいいなあ。


双眼鏡の性能もいいんだろうけどさ。




「少なくとも、ここからでは暴力で支配されているようには見えませんね」




双眼鏡を下ろしながら、神崎さんが息をつく。




「これ以上はここからではわかりません。・・・・少し着替えてきますね、の、覗かないでくださいね?」




「神崎さんは俺をそんなハイレベルな変態だと思っていたんですか・・・」




「ふふ、後藤倫さんが、『田中は定期的に女性の着替えを覗かないと心身に悪影響が出る』とおっしゃっていたので・・・」




「あのねえ!それだったら今までの段階で衰弱死してるでしょ俺ェ!?」




「冗談です、ふふ」




後藤倫先輩めぇ・・・


俺をどんな奇病にしたいんだ、あの人は。


神崎さんも乗っからないでくださいよ、ほんとにもう・・・






・・・屋上でバレーボールをしているな。


中等部の子と、あれは避難民の子供だろうか。


楽しそうに見える。


平和だ・・・




「戻りました」




声に振り返ると、もはや若干の懐かしさを覚える。


自衛隊の制服に身を包んだ神崎さんがそこにいた。


初めて会ったのが、もうかなり昔のことに思える。




「おお、なんか新鮮ですね・・・やっぱりかっこいいですね、神崎さん」




「じょ、女性への誉め言葉としては不適切ですよ?」




神崎さんは困っているが、かっこいいから仕方がない。


まるでアクション映画から出てきたみたいだ。




「〇ンダ・ハミルトンも真っ青だなあ・・・」




「もう・・・今度見ましょうね、その映画も」




神崎さんも慣れてきたな、俺と言う人間に。


ふふふ・・・どんどん俺が把握されていくような気がする!!


真綿で首を絞められているようだ!・・・まあそこまで嫌ではないが。




「ま、行きましょうか」




「はい」




俺達は車に乗り込む。


さて・・・用心しないとな。


偽物の可能性も捨てきれないし。


いつでも発砲並びに抜刀できるように、準備だけはしておこう。


・・・効果があるかわからんが、軽トラのアンテナに白旗代わりの手拭いを結んでおこう。








「そこで止まれ!この避難所は満員だ!!」




正門近くまで進んだところ、拡声器・・・いやスピーカーで声がかけられる。


ふむ、電気は通っているみたいだな。




それと同時に正門の内外に立つ人員から、軽トラに向けて一斉に銃が向けられる。


うほー、すっげえ迫力だ。


警察、自衛隊、進駐軍・・・多種多様だが撃たれたら死ぬという所は共通している。


おとなしく停車すると、丸腰の神崎さんがドアを開けて降りる。


・・・急所はドアがガードできる体勢だ。




「私は詩谷駐屯地・秋月仮設本部所属、神崎二等陸曹です!指揮官である花田一等陸佐からの任務により、情報共有並びに現状確認のために派遣されました!!」




「!・・・証拠はあるか!?」




自衛隊の制服を着た門番が問い返す。




「身分証を所持しています!他に、一等陸佐より書類を預かっています!!」




「・・・そこで待て!!」




そう言うと、門内の人員は集まって話し合いをしている。


神崎さんはするりと助手席に乗り込んできた。




「・・・どうです?」




「・・・自衛隊に関しては、恐らく本物でしょう。警察にも違和感はありませんが・・・駐屯軍とは付き合いがないのでわかりかねます」




ふむ、現状ではなんとも言えないかなあ。


向こうの判断待ちだな。


信用してもらえなかったら、秋月から改めて人員を派遣してもらってもいいだろう。




「・・・神崎さん、これ」




目線を前に向けながら、棒手裏剣を何本か手渡す。


一応の用心のためだ。


十字手裏剣や手りゅう弾ほどかさばらないし。




「ありがとうございます」




「使う機会、ないといいんですけどねえ」




「ええ、本当に」




小声で会話していると、また声がかけられた。




「運転席の男は!?」




「私の相棒です!一等陸佐からも許可をいただいて同行しています!!」




うん、俺超怪しいもんね。


人相っていうか傷跡酷いし。


どう見ても堅気ではないもんな、見た目。


・・・自分で言ってて悲しくなってきた。




「・・・わかった!入場を許す!!誘導に従ってくれ!!」




「感謝します!!」




神崎さんが言うと、門がゆっくりと左右に開いていく。


・・・電動かあ。


電気は潤沢にあるみたいだな。




開いた門をゆっくりくぐる。


左右からは変わらず銃口が向けられている。


ふう、緊張する。




小走りの自衛官の誘導に従い、おそらく来客専用であろう駐車場に進む。


友愛よりも大分大きいなあ・・・さすがマンモス高校。




停車し、2人して降りる。


誘導役の自衛官が声をかけてきた。




「自分は真田三等陸曹です、ご案内いたします」




綺麗に敬礼をした彼男、俺より少し年下といった所だ。


かなり鍛えられた体をしている。


強そうだ。




「ご案内感謝します、神崎二等陸曹です」




「田中野一朗太です」




神崎さんに続き、自己紹介。




「あの、大変申し訳ありませんが・・・」




真田さんが俺の方を見る。


うん、わかってるわかってる。




「私はここで待機・・・ですね?」




「え?あ、はい、そうです」




真田さんは話の早さに目を丸くしている。


そりゃあねえ・・・・神崎さんはともかく、俺は現状謎の一般人である。


いきなり中に入れてもらえるとは思わない。




「お気遣いなく、慣れていますから。神崎さん、お気をつけて」




「はい、行ってまいります」




神崎さんは俺の方を少し心配そうに見て、真田さんと一緒に校内へと歩き出した。


心配なのは神崎さんの方なんだけどなあ・・・




・・・遠巻きに警戒されているのがよくわかる。


校舎の窓から、物珍しそうにこちらを見つめる目線もあるな。


そりゃ珍しかろうな・・・




車のドアを開け、ダッシュボードから煙草を取り出す。


とりあえず一服しとこう。


いつもなら敷地内全面禁煙だろうが・・・これくらいは勘弁してくれ。


日本刀と兜割は車内のスペースに置いてある。


俺の装備はベスト内の拳銃、それに後ろ腰に刺した脇差・・・それに全身各所に隠した手裏剣。


正面から戦えば一瞬でハチの巣にされるな。


する気もないけど。




軽トラに寄りかかり、煙草を咥えて火を点ける。


肺いっぱいに煙を吸い込み、吐き出す。


・・・はあ、こんな時でも煙草は美味しい。


少し気分も楽になってきた。


なるようになるさ。






「あの、少しよろしいですか?」




「はい、なんでsゴッハゴハ!?」




一本目を堪能していると、先程門で監視していた一団の中から、男性警察官が寄ってきた。


歩いてきた彼は、こちらに一礼する。


その顔を見た俺は、思わず咽てしまった。




「も、森山巡査・・・!?」




そう、友愛高校の森山くんにソックリなのだ。


いやもう他人の空似とかそういうレベルではない。


そのまんまだ。


・・・若干目の前の森山くん(仮称)の方が年上に見えるけど。




「ああ、詩谷から来たと聞いてもしやと思っていましたが・・・弟をご存じなんですね!」




・・・弟ォ!?




「申し遅れました、森山次郎です。詩谷にいるのは弟の三郎なんですよ」




嬉しそうに彼は話す。


・・・双子でもなかろうに、マジでよく似ているなあ・・・




「ああ、こちらこそすいません。田中野一朗太と言います・・・弟さんには、友愛高校でお世話になりました」




「弟は無事ですか・・・よかった」




・・・彼は森山くんではなく森山さんと呼ぶことにしよう。


大人な雰囲気がする。


それでも俺よりは年下だろうが。




森山さんにも煙草を奢り、2人でふかしながら話す。




「そうですか、宮田さんが・・・詩谷とは連絡が途絶しているので心配していました。後でみんなにも教えてあげないと・・・」




「他にも・・・太田警部補と言う方が別の避難所を運営していますよ、詩谷中央図書館です」




「うわあ、太田警部補ですか!よく知っていますよ・・・あ、あの・・・」




喜んだと思ったら、なにか急に歯切れが悪くなってきた。


なんかもじもじしているな。


そういうところ、弟とそっくりでござるな・・・




「た、鷹目さんという方は、その、いらっしゃいましたか・・・?」




「鷹目さんですか、ええ、お元気でしたよ」




「そうですか!はは、よかった・・・よかったあ・・・!」




おいおい、顔が真っ赤だぞ。


・・・ははーん、そういうことか。


弟とよく似ていらっしゃる。




「どうにか、連絡が取れればいいんですが・・・」




「今回のことでそうなるといいですねえ」




なにやら微笑ましく感じたので、ポッケから缶コーヒーを出して渡す。


あちらには甘いの、俺はブラックだ。




「あ、すいません・・・いただきます」




「いえいえ、どうぞ」




少しだけ打ち解けたようなので、軽く情報収集でもしておこうかな。


機密とかを聞くつもりはないので、答えてくれるだろう。




「それにしても凄い規模ですねえここは。しかも自衛隊も駐留軍もいるなんて」




「ええ・・・はじめは警察だけで運営していたんですが、今はこの形になりました。正直助かっていますよ・・・我々だけではこの状況は手に余りますから」




ふむふむ、そうなのか。


詩谷よりも殺伐としているからな、さもあらん。




「私たちも少し探索しましたけど・・・こっちは物騒ですねえ、暴徒は山ほどいるし、ゾンビまで強かったり黒かったり・・・」




「え?詩谷にはあの黒い奴っていないんですか?・・・もしやその傷は・・・!」




「いやいや、これは暴徒にこう・・・ザクっとされたんですよ。ゾンビ由来なら治癒する前にゾンビになってるでしょう?」




「ああ、それはそうですねえ」




その後も、適当に軽い話を挟みつつ情報収集した。


それによっていろいろなことが分かった。




ここには、元々の生徒や教員+避難民で合わせて900人前後の人間がいる。


かなりの人数だが、警察その他の人員が人海戦術で食料や生活必需品をかき集めたり、元々あった畑をフル活用しているため何とかなっている。


牛や豚なんかも飼育されているらしい。


まあ、設備はむちゃくちゃ豪華だもんな。


電気についてはボイラー駆動の自家発電装置やソーラー、風力発電があるお陰でなんとかなっているようだ。


しかし学校関係者に比べて避難民の数が少ないな・・・それだけ危険だったってことか、龍宮市が。


防衛能力に関しては、まあ大丈夫だろう。


この国における戦力としては最上級だもんな、銃もいっぱいあるみたいだし。




そこまで話し込んでいると、校内から神崎さんが戻ってきた。


真田さんの姿はない。




俺が愉快に情報収集をしている状況に軽く目を開き、するすると歩いてくる。




「田中野さん、ここの責任者があなたにも話を聞きたいようです。一緒に来てください」




森山さんに会釈した神崎さんは俺を手招きする。


俺に?


俺なんかの証言が役に立つとも思えないが・・・まあ呼ばれたからには行くしかなかろうな。




俺は吸殻を携帯灰皿にねじ込むと、森山さんに一礼して準備を始めた。

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