第26話 新種?のこと

新種?のこと








「むっちゃ煽ってくる・・・」




バックミラーには、しきりにパッシングをする大型バイクの姿がある。


乗っている先輩はフルフェイスで顔は見えないが、多分その下は満面の笑みだろう。




「先輩!場所知ってるんだから先に行ってくださいよォ!!」




窓から大声で叫ぶ。


それに対する返答は、小刻みなクラクションだった。




「ああもう・・・まったく・・・」




「ゆ、愉快な人なんですね、意外と」




大分言葉を選んだであろう神崎さんが、苦笑いしながらこぼす。




「ええもう、愉快が服着て歩いているような人ですよ」




煙草を口に咥え、げんなりしながら火を点けた。








後藤倫先輩と秋月で会った翌日。


俺たちは、龍宮へ向けて出発した。


あと30分ほどで高柳運送に着くことだろう。




あの後、おっちゃん宅で一泊してから帰路に就いたのだ。


・・・いや、帰路ってのは変だな。


俺の実家は詩谷だし。


まあいいか、言葉の綾だ。




美玖ちゃんは、以前より寂しさに馴れたのか泣くことはなかった。


それでも寂しそうにはしていたが、レオンくんが慰めるように鳴いていた。


うん、いい友達ができてよかったな美玖ちゃん。


また来るからな。




由紀子ちゃんたちも元気そうでよかった。


油断は大敵だが、あそこ周辺はこの先も多分平和だろう。


元々人口も少なかったし、その上孫可愛さでおっちゃんがゾンビを狩りまくってるからな。


新たちも母親と再会できたことだし、詩谷は心配なさそうだ。


それこそ龍宮から侵略でもされない限り。


なんかこれ嫌なフラグ立ちそうだな・・・


だ、大丈夫だろう・・・いざとなったら秋月病院まで逃げればいいんだし。




さて、これでもろもろの心配事は解消された。


安心して龍宮探索に挑むことができそうだ。


・・・現在後ろに新たな心配事がいるけども。


璃子ちゃんたちと上手くやってくれるかなあ、先輩。


あと、寝る場所も考えないとなあ。


高柳運送もすっかり賑やかになったもんだ・・・




「七塚原先輩たちは2階で寝てもらうとして・・・俺は倉庫で寝るかなあ」




あそこは内部にプレハブっぽい作業スペースがある。


俺1人なら問題なく暮らせそうだ。




「だ、駄目です!防犯上の理由で駄目です!」




急に神崎さんが割り込んでくる。


防犯上って・・・




「いやあ、でも今いるところは後藤倫先輩に譲ろうかと思ってるんですが・・・」




1階の休憩室は、襖で区切られた2部屋のみ。


斑鳩母娘に神崎さん、それに後藤倫先輩。


女性だけで固まってる方が安心できるんじゃないのか?


まあ、七塚原先輩は巴さん一筋だし危険はないのだが。




俺?


正直この状況下でそんなこと考えてられる余裕なんてない。


サクラとわふわふモフモフする方がいい。




「で、でしたら、2階の資料室か会議室を使われては・・・」




ふむ、そうか。


会議室はともかくとして、資料室は大きなベッドもあるしいいかも。


サクラも一緒に寝れるし。


それにしても・・・なんで資料室にベッドがあるんだろう・・・


社員さんのお昼寝スペースか何かか?




うーん、そうしようかなあ・・・


考えてみたら、風呂入って倉庫まで行ったり来たりすんの面倒くさいしなあ。


さすがに、もうこれ以上人も増えないだろうし・・・増えないよな?




そんなことを考えていたら、見慣れた看板が見えてきた。


お、もうここまで帰って来たのか。


あと少しだな。


待ってろよ~サクラ!






「きゅうん!ひゃん!!」




「はいはい、ここかな?」




「ひゃおん!わふ!!」




「お、ここかあ」




サクラの体にブラシを入れる。


おお、意外と抜けるなあ・・・


室内を毛だらけにしないためにも、ここでしっかりブラッシングしとかないとな。




こうして無事に帰ってきたわけだが、案の定というかなんというか、サクラは大層ご立腹の様子であった。


考えてみたら、こんなに長い事留守にしたことなかったもんな・・・


というわけで、スキンシップとご機嫌取りをしているというわけだ。


多少機嫌は直ってきたかな・・・?




「サクラちゃん、遊んでても門の所ばっかり見てたんだからね!」




ブラッシングの様子を俺の横で見ている璃子ちゃんが言う。


あらら、どこの忠犬だよそれは。


大分寂しい思いをさせたみたいだなあ・・・




「夜寝るときもさ、きゅんきゅん寝言言ってたし・・・」




「そうかあ、ごめんなサクラ」




「わふ!わふ!」




『そうだ!そうだ!』みたいなニュアンスで吠えるサクラである。


面目ないなあ・・・


せめてこれからはしっかりと遊んでやろう。


しばらくは探索の予定もないし。


自衛隊からの追加の物資は、しっかり軽トラに積み込んでもらったしな。


少しくらいのんびりしても許されるだろう。




「今日は一緒に風呂に入ろうな、サクラ」




「わん!わぉおん!!」




風呂という単語に反応し、尻尾をぶん回すサクラ。


ぶわわ!毛が飛ぶ毛が!!


口に入ったぁ!!




「・・・ところでさ、俺たちがいない間になにか変わったこととかあったかい?」




「ん~、特にないよ。ナナおじさんがスーパーから色々持って帰ってくれたくらい」




「へえ、スーパーか・・・スーパー!?この地区の!?」




「わふ!?」




思わずデカい声を出してしまって、サクラが驚いたようだ。


なだめるように頭を撫でる。




「う、うん、そうだよ?リュックサックぱんっぱんにしてさ、すごかったよ」




・・・嘘だろ。


この地区のスーパーはどっちもゾンビでみっちみちになってたハズだぞ!?


大部分が老人とはいえ、そんなところから物資を持ってきたのかよ・・・


俺なんか見ただけで嫌になったってのに・・・


たぶん、スーパーのゾンビはみんな粉々になっただろうなあ・・・




「ね、ね、それよりもさ」




璃子ちゃんが身を寄せてくる。




「なんざんしょ」




「あのバイクのおねーさん、おじさんの恋人?」




・・・後藤倫先輩が、俺の?


ぶわははは、ないない。




「違うよ、あの人は俺の道場の先輩。七塚原先輩とも知り合いだぞ」




「え!?おじさんより年上なの!?」




「うんにゃ、年下だけど道場歴は上だから先輩」




「なーんだ、そっか・・・ね、あの人も強いの?」




「強い強いとんでもなく強いぞ、俺は素手だと勝てる気がしない」




正直武器持ってても勝てるとは限らんし。


っていうか、先輩方とガチで戦うシチュの想像がつかないってものある。


ゾンビやアホ生存者だけで十分だよ、俺は。




「へえ~・・・そんなに強いんだぁ」




「ちなみに瓦を手刀で叩き割れるからね、あの人。しかも5枚以上」




「すっご!?」




初めに見た時はなんかのトリックかと思ったくらいだ。


ちなみに俺は拳で挑戦したが、2枚しか割れない上に手首をひどく傷めた。


もう二度とやらないと心に誓ったのをよく覚えている。


いいんだよ、木刀でぶん殴れば割れるんだから。


人間は道具を使いこなしたからこそ、地上の覇者になったのだ。


・・・最近はゾンビにその座を明け渡しつつあるが。




「指で割るのが最近の目標」




「ひゃわぁ!?」




「ひゃぅん!?」




璃子ちゃんとサクラが悲鳴を上げる。


一切の気配を感じさせず、後藤倫先輩が背後に現れた。


・・・相変わらず読めない気配だ。


恐ろしい。




「・・・さすがに指は無理じゃないですか?」




「できないことはない。田宮先生はできた」




・・・あの人はもうほんとに人間なんだろうか。


師匠、あんたは一体どこへ向かうというのか・・・




「田中も、木刀でドラム缶を貫通できるようになるのを目標にすべき」




「あのですね先輩、木刀は木でできてるから木刀であって・・・」




「田宮先生はできた」




「嘘でしょ!?」




完全に人間やめてんなあの爺さん!




「ジョーク」




「なんだ嘘か」




「本当は鉄の棒だった」




「・・・嘘でしょォ!?」




それでも凄すぎる。


一体何をどうすりゃそんな芸当ができるんだよ・・・


はあ、剣の道は高く険しい登山道だ・・・


俺はアレだ、麓の休憩所でのんびりしてたい、一生。




「おじさんの道場、すごいねえ・・・あ、斑鳩璃子です!よろしくお姉さん!」




「ん、後藤倫綾。かわいい、田中が言ってた通り」




「え~!おじさんそんなこと言ってたのォ?」




・・・璃子ちゃんを話題に出した記憶すらないんだが?




「『俺がロリコンなら即死だった』とのこと」




「言ってねえだろうがよォ!!!」




「わふ!?」




やめてくれないか俺を社会的に亡き者にしようとするのは!!


サクラがビックリしているが、ここだけは否定しておかないと困る!


ただでさえ低めの俺の社会的階級が地の底に衝突してしまう!!


いや突き抜けて温泉でも掘り当てちまう!!!




「ジョーク。田中は熟女が恋愛対象だから」




「えぇ!?え、えええ!?」




「やめろォ!!いたいけな子供になにを吹き込んでんだ!!」




ああもう、ああもう!!


先輩はちっとも変ってねえな、畜生!!


俺で遊ぶのをやめていただきたい!!






「随分と賑やかでしたね」




「逃げてきました・・・」




「わふ」




倉庫でなにやら銃器の整備をしている神崎さんと話す。


璃子ちゃんの誤解は解けた・・・と、思いたい。


切実に。




「昔っからあの人には、口でも素手でも勝てたことないんですよ・・・」




「・・・口はともかく素手でもですか?」




「打撃関節投げ技なんでもござれですよ・・・師匠のお墨付きですしね。いわゆる天才ってやつなんでしょうなあ」




「す、すごいですね・・・」




ぶっちゃけ、この前の顔面パンチも全力ではないんだろう。


本気を出されたら避けられるかどうか・・・


まあ、戦うってことになったらまずあの間合いに踏み込んだだけで決まる・・・いやいや、何考えてんだ。




「まあ、そんなことより神崎さんは銃の整備ですか?」




見れば机の上に銃がバラされて置いてある。


うわあ、細かいなあ。


プラモデルなら好きだが、門外漢なので何が何やらサッパリだ。


くそう、モデルガンマニアの同級生、山崎がいれば・・・


あいつ元気にしてんのかな?


それにしても部品がむっちゃ多いなあ、銃って。




「ええ、整備は万全にしておきませんと。これから戦闘の機会も多くなるでしょうし、いざという時に撃てないようなことになれば大変ですから。」




ううむ、考えたくはないが確かにその予想は当たるだろう。


こないだの瀧聞会にしろ、まだ姿を見ていないタイヘイのグループにしろ、敵になりそうな陣営は多い。


まだまだ他にもいるかもしれんからな。


普段は善良な市民でも、この状況下でトチ狂ったり化けの皮が剝がれた奴もいるだろうし。


・・・その上ゾンビまで微妙に強いときている。


はあ、嫌だなあ。




「どうしました、田中野さん」




「・・・ああいや、神崎さんが頼もしいから俺も見習わないとなあって思って」




とっさにそう返すと、神崎さんは急にそっぽを向いた。




「た、田中野さんも十分頼もしいですっ!」




・・・はは、お世辞でも嬉しいな。


そう思ってもらえるように、せめてここにいる間だけは頑張らねば。




「あ、そうだ神崎さん・・・」




ついでに拳銃の手入れもしておこう。


ガンオイルとか借りないとな・・・


そう思って話しかけたその時だった。






「アアアア!アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」






不意に響く声。




・・・ゾンビだ。


まったく、噂をすれば影とはこのことだ。


参るねえ、全く。


・・・いや、ゾンビの噂はしていない。




声は近くから聞こえた。


方角からすれば、正門のすぐ外かな?


いやに興奮しているようだが、なにかトリガーになるものでもあったのだろうか。


入ってくることはないと思うが・・・あいつら登るとかしないし。




すぐさま拳銃の状態をチェックし、身構えている神崎さん。


ううむ、早い。


流石だ。




「近い、ですね」




「ええ、俺は璃子ちゃんとサクラの方へ行きます。用心のために」




「はい、私はいつでも撃てる所へ移動します」




俺たちは、それぞれの方向へ速足で動き出した。






「グウウアアアアアアアアアアアア!!」「オオオオオオオオオオオ!!!」「ガアアアアアアアアア!!!」




璃子ちゃんたちは後藤倫先輩がすでに避難させていてくれたので、兜割の様子を点検しつつ門の近くに行く。


・・・聞こえてくる吠え声から察するに、最低でも3体が外にいる。


避難民がいる様子はない。


神崎さんは駐車場のトラックの上で、油断なく銃を構えている。


屋上にはライフルを持った斑鳩さんと、後ろにいる巴さんの姿も見える。


先輩方はどこだろうか。




「なんか、変」




・・・気配がないなあ、相変わらず。


後藤倫先輩はいつの間にか俺の背後にいた。


・・・いつの間に長巻を持ってるんだ。


バイクの横にマウントしてた包みはこれか・・・




「中村先生のとこで貰った、いいもの」




・・・そういえば長巻あるって言ってたなあ。


ちなみに長巻とは、乱暴に言えば柄が無茶苦茶長い日本刀だ。


取り回しはいささか慣れが必要だが、長い柄を利用した変幻自在の立ち回りが特徴である。




「なんじゃあ、きな臭いのう・・・声の様子がいなげな(変だ)」




・・・七塚原先輩までいるじゃないか。


殺気がないと気配がほんと読み辛いなあ、この2人。




「巴らあは中に避難させたけぇ、大丈夫じゃとは思うがのう・・・」




六尺棒で肩をトントン叩きながら七塚原先輩が言う。


確かに、いつまでも吠え続けているのはおかしい。


一体なんなんだ・・・?




「・・・来る!」




後藤倫先輩が声に出した瞬間、正門の上にガシリとかかる手が見えた。




嘘だろ!?


正門の高さは2メーターオーバーだぞ!?


ジャンプしたっていうのか、ゾンビが!?




兜割を握りしめ、様子を窺う。




「ガアアアアアアアアアアアア!!!!」




そのまま腕の力で体を持ち上げたゾンビが、門の上に立つ。




・・・うえ、なんだありゃあ!?




いつのも肌が病的に真っ白のゾンビとは違い、そいつは肌がそれはもう真っ黒だった。


まるでくまなく墨汁でも塗りたくったように。


目が真っ赤なのは同じだが、体色以外にも色々差異がある。


まず、なんというか・・・全身の大部分が黒々とした瘡蓋のようなもので覆われている。


エビの殻みたいな感じだ。


さらに、門の上のゾンビは男だが、筋肉の発達振りが尋常じゃない。


ボディビルダーも真っ青なくらいの筋肉達磨だ。


着ている服が、明らかに内側からはじけている。


・・・ゾンビになってから、筋肉が発達したってのか?




「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」




ゾンビが天に向かって吠えると、続けて2体のゾンビがやはり門の上に立った。


アイツらも同じだ、1体は女だが・・・筋肉の発達と体色も同じ。


なんだってんだ・・・まさか、大木くんが言ってたみたいに進化したってのか!?




「駄目だ、あの様子じゃ外壁も登られちまう・・・!」




今までのゾンビはこうして籠っていれば何の問題もなかったが、アイツらはジャンプするし登れる。




なんてこった。


安全地帯が・・・消滅した!




「・・・各自散開して、各個撃破せえ!!」




七塚原先輩がそう言うなり、門のゾンビ共は一斉に敷地に飛び降りてきた。




その着地を見届けるより早く、俺たちは走り出した。




「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」




「そうだ!てめえの相手は俺だよ!!」




俺の顔を見て吠えたゾンビに叫び、俺はさらにスピードを上げる。


ゾンビの方も俺めがけて猛ダッシュだ。


・・・速い!!


今までのゾンビとは桁違いだ!!




「ゴオオアアアアアアアアア!!!!」




ゾンビは俺めがけて思い切りジャンプ、掴みかかる姿勢で突っ込んでくる。


速い・・・速いが、攻めは単調!!




「っし!!」




飛んでくる顔目掛け、全力で兜割をあわせる。


こいつで、首をへし折って終わりだ!!




「っぐ!?」




が、手に帰ってくる感触が今までのゾンビと違う!


首が折れて、ない!


筋肉がショックを吸収したのか!?




「ゴオオオオオガアアアアアアア!!!」




額に兜割をめり込ませたまま、ゾンビが俺の方向へ倒れてくる。


このままだと組み伏される!


力も・・・今までのゾンビとは大違い、だ。




「・・・あぁっ!!」




兜割を首に添え、下方向にいなす。


がくりとゾンビが膝をつく。


一瞬の隙を突いて息を吸う。




「おおおっ・・・りゃああああ!!!!」




ゾンビが立ち上がるより早く、大上段から脳天目掛けて思い切り兜割を振り下ろした。




「ゲグ!!」




ゾンビの両目が飛び出し、骨を砕く感触が手に伝わってくる。


その途端に、ゾンビの全身から力が抜けていく。




・・・よし、倒し方は前と同じで大丈夫みたいだな。




あ、先輩たちの方はどうなって・・・




「っじゃあああああああああああああ!!!!」




慌てて見回すと、七塚原先輩は六尺棒でゾンビの口に突きを入れ・・・下顎から上が盛大に吹き飛ぶのが見えた。


マジかよ・・・おっかねえ・・・


敵の破壊にかけては独壇場だな・・・




「しっ!」




後藤倫先輩は遠心力を乗せた長巻で、ゾンビの首を切断・・・できてねえ!?


筋肉が硬すぎたのか、刃は首に斬り込んだところで動きを止めてしまった。


いかん、助けに・・・




「はぁっ!!!」




その瞬間、後藤倫先輩は長巻から手を離すとゾンビの上段に蹴り。


鋭い蹴りは正確に長巻の峰をとらえ、ゾンビの首は8割がた斬れた。


・・・ひええ、こっちもおっかねえ・・・


判断の速さがすごい。




・・・っていうか、俺が一番弱いじゃんこの中だと。


心配する必要性、皆無だったな。




「後続、無し!」




トラックの上から神崎さんが叫ぶ。


ふう、なんとかなったな。


しかしこれは一体どういうこった・・・






「黒いのはもういませんよー!」




「見えなーい!」




屋上から斑鳩母娘の声。


ありがたい、偵察してくれたのか・・・




「一目瞭然に今までのとは違うが、中身も違うのう・・・やーれ、硬かったわ」




七塚原先輩・・・いや、豆腐みたいに吹き飛ばしてたじゃん・・・




「力加減、間違えた。次からは両断する」




不愉快そうに長巻を高速で回転させつつ、後藤倫先輩もこぼす。




「こっちもです、確かに筋肉はすごいですけど・・・それにしても硬すぎる気がしますね」




倒れた黒ゾンビをつつく。


・・・弾力がほぼないぞ、筋肉。


まるで金属板みたいだ。


これじゃあ柔軟に動けるはずもないんだが・・・でも動きまくってたしなあ。




「田中野さん、どうやらさっきの話のように・・・気を引き締める必要がありますね」




真剣な神崎さんの声を聞きながら、俺は暗澹たる思いで煙草を咥えた。

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