第6話 雨の日の来客のこと

雨の日の来客のこと








「んがぐぐぐぐ・・・ぐううおおお・・・」




「きゅ~ん、きゅ~ん」




廃校での大立ち回りの翌日。


俺は、布団から起き上がることができずにいた。






燃え盛る廃校を出て拠点に帰り、夕食後にサクラと風呂に入って早めに就寝。


そして起きてみたら、全身に激痛が走っていた。






そう、筋肉痛である。






考えてみれば、昨日は怒りに任せて暴れていた。


肉体の限界も考えず、飛んだり跳ねたり。


明日の筋肉痛が心配だなどと思っていたが、まさかこれほどのものが襲ってくるとは。


だがまあ・・・年を取ると2日遅れで筋肉痛になるというし、その点では若いってことかなアイタタタタ!




傍らのサクラは俺の苦しむ様子に慌て、起きてからずっと周囲をぽてぽて歩き回っては悲し気に鳴いている。




す、すまんサクラ・・・




今の俺には撫でるために手を持ち上げる元気すらない。


昨日は死体の首を掴んで持ち上げたりできたのになあ・・・


・・・いやむしろアレのせいだろ腕の筋肉痛は。




マジで怒りでリミッターが外れていたらしい。




壁を蹴りつけて三角飛びとかもしたしな・・・


不幸中の幸いというやつか、筋が痛んでいる様子はない。


・・・よく筋肉痛だけで済んだものだ。




「きゅん!ひゃん!あぉん!」




サクラは休憩室の襖をかりかりと前足で搔いている。


おい、そっちは神崎さんの寝室だぞ。


何をする気だサクラ。




「お、俺は大丈夫だから・・・神崎さんに迷惑をかけたら駄目だ、まだ寝ているだろうし・・・」




腕時計を見るのもおっくうだが、感覚的に今はまだ早朝のはず。


昨日の戦いで疲れているであろう神崎さんを起こしてはいけない。




「な、サクラ・・・寝てれば治るから落ち着くんだ」




「きゅ~ん・・・」




俺の声にこちらへ戻ってきたサクラが心配そうに顔を覗き込んでくる。


『ほんとに?ほんとに?』って顔だな。




「ぬ、ううううう」




ぎしぎしと軋む腕を伸ばし、サクラの頭に乗せる。


涙目になりながら撫でてやると、サクラは少しだけ落ち着いたようだ。


ふう、朝飯の時間までにはなんとか起きれるように頑張ろう・・・




「ふぁ・・・どうしたのサクラちゃん」




が、遅かった。


襖がそろりと開き、寝ぼけ眼の神崎さんが顔を出す。




「きゅ~ん!きゅ~ん!」




途端にサクラが反応し、神崎さんの方へ寄っていく。


頭に置いていた俺の手は、重力に従って落下。


床に落ちたことで全身に振動が伝わり・・・




「ぎいぃ!ぎゅううううう・・・!!!」




激痛に思わず呻く。




「・・・えっ!?た、田中野さん!?」




寄ってきたサクラを寝ぼけ眼で撫でていた神崎さんが覚醒。


慌てて俺の方へ寄ってくる。




ぐううあ!


もう振動が伝わるだけでヤバい!!




「ど、どうされたんですか!?どこか痛むんですか!?」




必死に俺の顔を覗き込んでくる。


あ、かわいいパジャマですねああああああああ!?


前!!前のボタンを閉めてください前の!!


うわあ腹筋がセクシー!!




反射的に思わず顔を背けたことで、肩の筋肉にも激痛。




「あがぁ!?」




「田中野さん!ちょっと!田中野さあん!!」




「ゆゆゆ揺すらないで死ぬ!!死んじゃう!!いだああああ!?」




揺らされることも痛ければ自分で叫ぶことでも痛い。


無間地獄だこれは!!!






「・・・筋肉痛、ですか?」




「ハイ」




「・・・揺らしたの、痛かったですか」




「ハイ」




「・・・す、すみません」




「コチラコソ」




「・・・え?」




「ナンデモナイデス」




もだえ苦しむ中でなんとか神崎さんに筋肉痛のことを伝え、ようやく無間地獄から解放された。


何故か布団の横で正座している神崎さんと、その膝の上で俺を見つめるサクラ。




「どうも、昨日無茶しすぎたみたいで・・・もう少し休めば動けますから」




我ながら情けないことである。




「昨日はいつもより数段鋭い動きだと思っていましたが・・・かなり無理をされていたんですね」




「そ、そうみたいですね・・・恥ずかしながらキレ過ぎて限界を超えてたみたいです」




すると、目を輝かせた神崎さんがにじり寄ってくる。


近い近い近いよ!


サクラなんてもう俺の顔にくっついてるじゃん!!




「南雲流に、そのような技があるのですか!?」




「にゃい・・・たびゅん、ないでしゅ」




ほっぺがサクラと衝突しているので不明瞭な発言になってしまう。




「たぶん!?」




「ぷあ!・・・師匠ならできると思いますけど、俺なんかとてもとても」




サクラから頬を離脱させ、話す。


前にそういう話をしていた記憶がある。


なんでも自己暗示めいた方法でリミッターを外すらしいが、俺にはできん。


というか、できたとしてもこの状況は変わらんだろ。




「しかし・・・これじゃあ探索はできそうにありませんね・・・申し訳ない」




「いいえ、昨日の働きで十分ですよ田中野さん。それに今日は雨のようですし」




へ?そうなの?




「微かに雨音が聞こえます。なので今日はゆっくり休んでください、休むことも大事ですよ」




「そう、ですか・・・」




「そうです。ゆっくり養生しましょうね」




なんというか母性に満ちた笑顔で神崎さんが微笑む。




まあ、そういうことならお言葉に甘えようか。


なんとなくだがもう2、3時間ほど休めば動けるようになるような気がする。




「じゃ、すいません・・・もうちょい寝ます」




「はい、おやすみなさい。サクラちゃんはお預かりしますね」




「くぅん・・・」




心配そうなサクラを抱っこして、神崎さんは隣の部屋に戻って行った。




それにしても雨か・・・


廃校の火事も鎮火するな。


昨日の夜はここからでもバッチリ見えたもんなあ・・・


周囲に見られただろうな。




ま、廃校に行っても何もないし大丈夫だろう。


校舎は燃え、車は残らずガス欠の上にボコボコだし。




考え事をしていたらどんどん眠くなってきた。


寝るより他にできることもない。


寝てしまおう寝てしまおう。




おやすみなしあ・・・








ふあ、よく寝た。




なんか楽しい夢でも見ていたような気がするなあ。


サクラを拾ってからこっち、以前のような悪夢?も見ていないし。


アニマルセラピーって効果あるんだなあ。


・・・心が弱っているつもりは一切ないのだが。




うぐ、痛いけど腕は動くな。




枕元に放置していた腕時計を確認・・・今は朝の9時か。




・・・神崎さんが言っていたように、耳をすますと雨音が聞こえる。


さっきは筋肉痛でそれどころじゃなかったもんなあ。


しかし、この休憩室にまで聞こえてくるとはなかなかの大雨だな。




なんとか体は動きそうだ。




「スゥーッ!ハァーッ!!」




深呼吸しながらゆっくりと体を動かす。


まずは指先、次に手首・・・


体の末端からゆっくりと。


息を止めずに。




医学的にはどうか知らんが、俺はいつも筋肉痛はこうして治してきた。


ここまでのものは人生初ではあるけども。






「うぬぬぬぬ・・・!!」




四苦八苦することしばし、ようやく俺の両足は大地・・・畳に立った。


正直動く度に鈍痛が走るが、早朝と比べればマシだ。




ゆっくり歩き、神崎さんの部屋との境界線に移動する。




「お、おはよう、ございます」




「田中野さん!?もう起きて大丈夫なんですか!?」




「きゅん!ひゃんひゃん!!」




襖の向こうから神崎さんの驚いた声と、サクラのうれしそうな鳴き声がする。




「開けてもいいですか?」




「どうぞ!」




・・・あ、サクラが飛びついてくるかも。




警戒しつつゆっくり襖を開けると、すぐ前にかしこくお座りしているサクラが。


おや、飛びついてこない。


あれか?俺を心配してくれているのか?




「サクラ、心配かけたな」




鈍痛を無視しつつ、しゃがんでサクラを撫でる。




「晴れたらお散歩に行こうな」




「きゅ~ん、きゅ~ん」




鼻を鳴らしながら手に寄りかかってくるサクラ。


なんだこのかわいい生き物。


思わず抱き上げて頬ずりしてしまう。




がああ痛い。


・・・が、この痛みも幸せで対消滅するな。




「では、田中野さんの朝食、温め直しますね!」




神崎さんは嬉しそうに歩いていった。


食品ロスは現状もってのほかだからな、嬉しかろう。








「よーくまあ、降るもんだなあ・・・ついに梅雨突入か?」




「きゅん・・・」




遅めの朝食を食べて、俺は社屋1階のオフィスでサクラとまったりしている。


2階は注意のため開けられないので、ここでぼんやりと外を眺めているわけだ。




2度目に起きた時よりも雨量は増えているような気がする。


門の辺りが辛うじて見える程度だ。




サクラもお外に出れないので心なしか寂しそうだな。


俺の膝の上から降りしきる雨をじーっと眺めている。




「コーヒーいかがですか、田中野さん」




ぽけっとしていると、神崎さんがお盆の上に湯気の立つコーヒーカップを乗せて運んできてくれた。


俺のブラック、神崎さんのカフェオレ、そしてサクラの温めた犬用ミルク。


至れり尽くせりだなあ・・・




「いやあ、どうもありがとうございます・・・なんかこう、会社で働いていた頃を思い出しますねえ」




お礼を言ってコーヒーを受け取る。


場所もあって無職じゃない頃に戻ったみたいだ。




「ほら、サクラちゃんの分よ・・・どうぞ」




「ひゃん!」




俺の膝から飛び降り、床に置かれたミルク皿に頭を突っ込むサクラ。


・・・ぬるめだから火傷は心配ないけど、後でしっかり拭いてやらんとな。




「田中野さんって、働いている時はどんなお仕事をされていたんですか?」




「はは、しがないサラリーマンでしたよ」




う、仕事の話をしたらコーヒーが一段と苦くなった件について。


・・・このメンタリティで再就職できるのか?俺は・・・




「やはり、この騒動でその・・・お仕事を失ったんですか?」




痛いところを突いてきよる・・・




ま、神崎さんは大事な相棒だから隠すようなもんでもないか。




「いやぁ、実は社長をボッコボコにしてクビ・・・的な感じでして」




「ええ!?・・・一体何故そうなったんですか?」




「まあ、馬鹿みたいな話なんですけどね・・・」




回転するサクラの尻尾を見ながら、俺は話し始めた。






「・・・実に腹立たしい話ですね!」




俺が退職する原因の事件を神崎さんに聞かせたところ、我が事のようにご立腹である。


そりゃなあ、同じ女性として考えたら許せないだろうし。


嫌がる女性社員を無理やりラブホに引っ張り込もうとするなんてなあ。


・・・だが俺の場合、動機の7割程度は私怨なわけだが。


カッコ悪いのでそこは未来永劫黙っていよう。




「でも、その女性が無事でよかったですね・・・きっと田中野さんに感謝していますよ?」




「だといいんですが・・・」




神崎さんは優しいなあ。




あの子、元気にしてるかなあ・・・


会社は辞めたのかな?


こんな状況だから、生きてればいいんだけど・・・




「・・・あの、かわいらしい女性だったんですか?」




何故か神妙に神崎さんが聞いてくる。




「・・・それがですね、あんまり覚えてないんですよ」




「え?」




「部署も違ったし・・・正直あの歓迎会で初めて顔をしっかり見たというか・・・」




「ひ、一目惚れですか!?」




「なんでそうなるんですか・・・あー、新入社員って女の子だったんだぁ、くらいの感想ですかねえ」




警察にも証言してくれたり、俺としても助けられたんだが・・・


いかんせん社長をボコボコにした高揚感とその後の留置場のインパクトが濃すぎてなあ・・・




「・・・田中野さんらしいですね。きっとその女性がどんな容姿をしていても、同じことをしたんでしょうね・・・」




何やら納得して少し嬉しそうな神崎さんである。


・・・そりゃまあ、あの社長をボコれるならどんな相手が絡まれてても突撃したんだろうけど・・・


なんかこれは言っちゃいけない気がするので黙秘しておこう。




「きゅん!」




ミルクを飲み終わったサクラが俺の膝に手を置く。


あああもう・・・どうやったら前足がミルクまみれになるんだよ。




「お釣りがいっぱいだなあ・・・ホレホレ」




タオルで顔やら手やらを拭ってやる。


全く手のかかることだよ。




でもかわいいので許す!!!!


何の問題もない!!!


何故ならかわいいから!!!








「・・・ん?」




「どうしましたか、田中野さん」




またしばらくまったりしていると、視界の隅に違和感を覚えた。




「なんか・・・門、揺れてません?」




降りしきる雨の中、正面の門が若干波打つように揺れているような気がした。




「・・・あ、そのようです。風もないのに・・・」




「雨だから活発になったゾンビの仕業でしょうかね?」




「あり得ますね・・・」




あ、揺れた。


今度はハッキリと見えたぞ。




揺れ方に規則性がある。


風のせいではないな。


何より雨の振り方から見ても、今は限りなく無風。


あんなに揺れるのはおかしい。




「数の暴力で門を破られても困るし、一応見に行きますか」




「私だけでもいいのですが・・・田中野さん、お体は?」




心配する神崎さんの前で、両腕をグルングルン回す。




「休憩してたらほぼ治りました!」




「・・・あの、ええと・・・はい、すごいですね、田中野さん」




新種の動物でも見るかのような目で神崎さんが俺を見る。


ははは、回復力には自信があるのだよ。




善は急げ。


とっとと確認しに行こう。


俺は兜割を、神崎さんはライフルを持って社屋から出た。






凄い雨だなあ。


外に出るとザーザー音が激しくて、周囲の音が聞き取り辛い。




体にビシャビシャ当たる雨に耐えながら小走りで門へ急ぐ。


ヘルメットのバイザーのお陰で、視界が塞がれないのが不幸中の幸いだった。




門に近付くにつれ、何かが聞こえてくる。


ゾンビの吠える声と・・・これは!




「神崎さん!!」




「はい!」




俺たちは猛然と走り出した。


あいてて、太腿の筋肉が若干痛い。


なあに、走ればほぐれるだろう。


そんなことより今は急がねば!




降りしきる雨音、ゾンビの声。


それに交じって聞こえる、人間の声。




「けて・・・あけて!お願い!開けて!!」




子供の声だ。




「俺が門柱に!神崎さんは隙間から射撃を!」




「無理しないでくださいね!」




神崎さんの声を背に、門柱に飛びつき一息で頂上へ。




「おかあさん!おかあさん!!」




「いいから!!叩き続けなさい!!私はいいから!!」




門前には合羽を着た子供が。


そして水路の上にかかる橋には、長い鉄パイプを振り回している女性。


そして女性の前には、ゾンビの群れ。


10体はいやがる!




女性は必死で鉄パイプを振り、ゾンビを牽制しているようだ。


狙いは足元。


足を薙ぐように振ることでゾンビを倒し、進行を妨害している。


だが後続のゾンビが倒れたゾンビの上を乗り越え、今にも女性に掴みかかりそうだ。




「来るなら来なさいよ!あの子には指一本触れさせないんだから!!・・・リコ、門を登りなさい!!」




「いや・・・!いやぁ!!」




「早く行きなさい!!あなただけでも!!早く!!」




母親だろう女性が子供に気を逸らした瞬間、ゾンビの1体が前に出る。


―――掴まれる!!




不意に、あの人が脳裏に浮かんだ。


助かってほしかった女性。


助けたかったあの人。






『よかっ・・・たぁ・・・』






最後まで子供のことを心配していた酒井先生。


あの死に顔が脳裏に浮かんだ。






気付けば俺は、兜割を構えて門柱から飛び降りていた。




「ぬうううううああああああっ!!!!」




そのまま女性の横を通り抜け、今まさに掴みかかろうとしていたゾンビの脳天を横合いから叩き割る。




「早く子供の所へ行け!!仲間が門を開ける!!!」




「えっ・・・あ、あの!!」




「早く・・・!!」




崩れ落ちるゾンビの影から、新たな1体が肉薄してくる。


元々動きが速い上に今日は雨。


詩谷のゾンビとは大違いだ!!




「いっ・・・けぇええ!!」




だが、動きが速いってことは・・・カウンターの威力も倍増するってことだ!!


遠心力を乗せて首筋を打ち、骨を砕く。


ゾンビがフェイントとか考えないアホで助かったぜ!




だがまだ数は多い、油断はできない。


親子への進路を妨害しつつ、1体ずつ確実に処理する!




「早くこちらへ!早く!・・・田中野さん!確保しました!!」




門の開く音と神崎さんの声を聞きつつ、新手の膝関節をへし折って地面に倒す。




「・・・あと2体やったら伏せます!掃討をお願いします!!」




数が多い。


ここで減らしておかないと、ずっと門を叩かれて破られるかもしれない。


こいつら、永遠に同じ動きするからな。


ちりも積もればなんとやら、だ。




幸い後続は見えないし、ここで殲滅しておけば大丈夫だろう。


若干突出している2体を叩く!




「アア、アアアアアアアアアア!!!!」




「うるせえんだよ・・・この野郎っ!!」




元気よく吠えるゾンビに対し、腰を落としながら大股に踏み込む。


踏み込みの勢いを殺さず、斜めに打ち下ろす軌道で膝を叩く。


片膝を打ち砕かれた勢いで、ゾンビが斜めに倒れていく。




「っオラぁ!!!」




膝を撃ち抜いた兜割をそのままの勢いで体の側面で旋回させ、円を描くように上段からもう一度振り下ろす。


狙い通り、浮かぶゾンビの側頭部に兜割がめり込み、そのまま地面に叩きつける。






南雲流、『玄翁げんのう』


文字通り、地面と獲物を使って相手の頭を挟み砕く技だ。


本来は木刀か頑丈な鞘で使う。






上手くいったなあなんて思っている暇もなく、もう1体が迫る。


獣でも仲間意識くらいはあるってのにこいつらときたら!!




「っしゃあ!!」




腰を落とした状態から体を起こす力を乗せ、兜割を突きの軌道でゾンビの喉へ。


首の半ばまでめり込んだ兜割が、一瞬でゾンビを無力化する。




そのまま即地面に伏せると同時に、後方から銃声。


断続した銃声と共に、残りのゾンビがダンスでも踊るように体をのけ反らせる。




「今です!」




銃声が止むと同時に跳ね起き、走って門柱に飛び上った。




「残敵、無し!」




「了解!」




神崎さんの声を聞きつつ、敷地内へ飛び降りる。






「お見事でした、田中野さん」




「神崎さんこそ」




乱れた息を整え終わるころ、神崎さんが歩いてきた。


その後ろには先程の親子の姿。


・・・ざっと見たが噛まれた様子はない。


ふう、なんとかなったな。




俺は安堵の溜息をつきつつ、濡れた地面に座り込んだ。

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