第24話 自堕落生活と新装備のこと

自堕落生活と新装備のこと








『その魔除けの梵字の力を借り、見事我が刃を躱してみよ・・・』




『是非もなし。お相手仕る・・・!』




画面の中では、燃え盛る城の中で2人の侍が刀を合わせていた。




BGMも相まってテンションが上がる上がる!


これマジでセット燃やしてるんだな・・・この時代の映画はスケールがでかいなあ。


しかし、柳生の眼帯さんはこの役者さん以外には考えられないな。


俺も習いたいなあ柳生流。


柄がこんなに長いのは何の利点があるのだろう。


・・・骨法に引き続き、柳生の本も探さねばならないな。




あ、決着がついた。


ここの『父上・・・』って小さい呟きが泣けるんだよなあ。


ここが良すぎて、この後出てくるラスボスの影が薄いのが残念。




後になって原作小説読んだら、ラスボスがラスボスじゃない上にクソ弱くてびっくりしたんだよなあ。






避難所から帰った翌日、俺は我が家の愛すべきリビングで横になって映画を見ていた。


誰かと揉めたり。


誰かを斬ったり。


隣町に行ったり。


避難所で騒動があったり。




最近何かとせわしなかったから、ここらで一息入れて休憩しておこうと思ったのだ。


せめて2日は家から出たくない!食料はあるし!


あっ庭の野菜くん達に水をぶっかけなきゃ・・・中断中断。




ふうあぶない、忘れるところだった。


適当に植えただけだけど、芽が出てくると嬉しいもんだなあ。


・・・雑草じゃないことを祈る。




雑草って食えるんだったかな?


盲点だった。


『食べられる雑草』みたいな本がどっかにないかな。




やはり本屋にはまた行こう。


できればDVDも取り扱ってるデカいところに。


食料や生活必需品は略奪の対象だろうが、まさかDVDを持っていくやつが俺以外にいるとは思えない。


こう考えると今の生活環境は恵まれているなあ。




図書館もいいかと思ったが、避難所になっている上にもしかしたらいつぞやのハーレム千手観音がいる可能性があるのでパス。


絶対に絡まれるし会いたくない。


最悪昨日のアホみたいにぶん殴ってしまう可能性がある。






昼食は自衛隊から貰った食料にする。


白米とおかずのマグロの煮つけ、両方缶詰だ。


軽く湯煎して温め、口をつける。




うまっ!ちゃんとした白米だ!


おかずのマグロも塩っ気が少しきついがご飯によく合う!


モリモリいけちゃうぞこれは!


量も多いしいいなこれは!




はー・・・自衛隊すげえ。


そりゃあ体が資本だもんな、うまいもん食ってバンバン動かなきゃいけない人たちだし。


ミリメシ、侮りがたし!


今後とも積極的にお手伝いすることを視野に入れておこう(必ず手伝うとは言っていない)






昼食後はそのまま寝っ転がって昼寝をする。


う~ん幸せ。


世界が滅茶苦茶になっているのにこんなにのほほんとしていていいのだろうか?




いいんです!




俺にできることなんて、せいぜい町をカサコソ動き回って物資を集めることくらいなのだ。


医学知識もないし、カリスマ性なんてもちろん皆無だ。


世界を救うのはそういうパッシブスキルを持つ人たちにまかせる。


俺は俺でできることをやりつつ、おもしろおかしく生き延びられればそれでいいのだ。


う~んむにゃむにゃ。






2時間ほど昼寝をして起床。


こった体をストレッチでほぐす。


柔軟はいつもやっとかないとなあ。


アシクビヲクジキマシター!とか、外でそうなったら死んでしまう。




体も温まってきたので、庭に出る。


いつもの刀を腰に差し、型の練習だ。


座の型・・・座った形からの抜刀は飛ばす。


ゾンビと座って歓談なんてシチュエーションは絶対ないからな。




足の運び、腰の動き、手首の返し、体捌き。


それらをじっくりと確認しつつやっていく。


何度も実戦をやったが、型通りの状況なんか1回もなかった。


だからといって、型が無意味かというとそうでもない。


あらかじめ体の動き方を覚えておくことで、臨機応変に対応することができるのだ。


取れる選択肢は多い方がいい。


・・・こうなってみると、もう少し練習に身を入れておくべきだったかな。




道場の先輩なんかすごかったもんなあ。


俺なんかが生き残ってるんだ、先輩なんかは楽勝だろう。


俺も使ってるデカい木刀を、小枝みたいにぶおんぶおん振り回してたもんなあ。


どっかの警備会社で働いてるはずだけど、あの人が警備する会社は無敵だろう、うん。




さて、いい汗もかいたしこの辺にしておくかな。


今日はもう1つやることがあるし。


対人武器の作成である。






て~つ~の~ぼ~う~(旧猫型ロボット)




・・・以前ホームセンターでいい感じの長さの棒があったのでだいぶもらってきておいた。


本来は何に使うのかまったくわからないが、長さは手のひらより少し長い程度。


太さは一般的なボールペンくらいだ。




まず焼き魚用の七輪に火を起こし、こいつをぶち込む。


真っ赤になったらペンチで掴み、金床に乗せてトンカチでカンカン叩いて先を伸ばす。


真昼間とはいえ音が響くが、家はバリケードに囲まれているので安心だ。


ゾンビはあーぎゃーうるさいから近付いてくればすぐにわかるし。


ちなみに金床は何故かウチの倉庫にあったものだ。


おやじの私物かな?




ある程度伸びたら冷やし、農機具手入れ用の砥石でひたすら研いでいく。


無心で研ぐことしばし、なんとか形になってきた。


素人仕事だが、まあ格好はついた。






ぼ~う~しゅ~り~け~ん(旧世代猫ロボ)




俺の流派には手裏剣の技がそれはもう多彩にある。


正面から、後ろから、奇襲等々。


それを活かすために今回新装備としてこれを作ったのだ。


本当はいかにもな四方手裏剣や八方手裏剣がいいのだが、素人では作れない。


重量バランスが悪いが、まあそこは腕でカバーする。


・・・できたらいいなあ。




立てかけた板に放ってみる。


俺の投げ方は、映画とかによくある回転させながら飛ばすやり方じゃない。


回転させずにまっすぐ飛ばす、直打ちと呼ばれるものだ。


射程距離は短くなるが、どうせ牽制のために投げるものだからそのままでいい。




肘を固定し、腕の振りだけで放った手裏剣はコッという軽い音とともに板に突き刺さった。


何本か投げて、大体の感覚を掴む。


5メートル以内なら、薄い板くらいなら貫通する威力だ。




うーん、まあまあいい出来だ。


いちいち刀を抜くのもめんどくさいもんな。


これで無力化できればしめたもんだ。


手足に刺されば戦意も萎えるだろうし


ゾンビ相手には使えないけども。




早速おやじのベルトを切って、手首に巻けるようなホルダーを作っておこう。


ベストの内側だと倒れた拍子にグサーってなりそうで怖いもんな。




最近どんどん戦闘に傾いた思考回路になってくるな。


まあいいや。


俺は悪くない!戦いを挑んでくる相手がいるのが悪いのだ!


きっとそう。


たぶんそう。






さてさて本日の作業は終了!!


家に戻って映画でも見つつ寝るか。




何にしようかな、さっき見た映画で俺のあるかなしかのサムライソウルに火が点いちまった。


時代劇縛りで行こう。




う~ん、乳母車を押すクソ強狼さんにするか、はたまただんだら模様が有名な集団のやつにするか。


幸せな悩みだなあ。

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