第7話 ドライブのこと
ドライブのこと
俺は希望に胸を膨らませて眠りにつき、ぐっすり10時間以上睡眠をとって翌朝6時に起床した。
今日の天気は見事な快晴。
俺の前途を祝福してくれているようだなあ。
いや気のせいだ。前途有望ならそもそもゾンビは出てこない。
おのれ太陽だましたな。
真空パックのチーズ味チキンとカロリーバーを齧り、コップの井戸水で流し込む。
コンロが使えるようになれば料理の幅も広がるなあ。
ちなみに庭の手押しポンプからはキッチンの窓経由でホースを引き、風呂桶に直接流し込めるようにした。
飲み水は別の容器に確保してある。
これも余裕があればデカいものを調達しておきたい。
顔を洗って歯を磨き、前回と同じ服装に着替える。
リュックを背負い、木刀をベルトに挟み、準備は整った。
さあ出発だ!
おおっと!胸ポケットに煙草を忘れるところだった。ある意味これが一番大事。ライターもね。
周囲を確認し、ガレージに入る。
ガレージと言っても屋根があるだけの簡単なものだが。
そこにある軽トラの前に立つ。
おやじと釣りに行くときに使用している、丸いライトがキュートなやつだ。
俺が大学に入るか入らないかって時期に買ったはずだから、たぶん15年は現役だろう。
いささか外装はくたびれているが、まだまだ走る。
ちょっと前に車検は受けたし、燃料も満タンだ。
リュックサックを助手席に置き、ベルトを締める。
音につられてゾンビが寄ってくるかもしれないので、一呼吸してエンジンをかけたら一気に発車する。
家の裏にある土手を上り、前回のコンビニとは逆方向にハンドルを切った。
ついてくるゾンビはいない。
ウチの周辺にはあんまりいないのかな・・・?
このまま道なりに行くと、北に渡る大きな橋がある。
何事もなく行ければいいが・・・
やはりというかなんというか、道にはそこかしこに横転、停車した車がある。
対向車が走ってくるわけでもないので、ぐねぐねと車を避けながら走る。
運転手は死ぬかゾンビになったのだろうか。
道に落ちている肉片的なサムシングを見なかったことにしながら、カーラジオのスイッチを入れた。
「やっぱラジオも全滅かあ・・・お?」
ザリザりと周波数をいじっていると、何かが聞こえてきた。
『・・・ちらは、緊急放送です。これをお聞きの皆様、どうか外出を控え、自宅から離れないでください・・・』
『屋外は危険です、不要不急の外出は控え、救助があるまで自宅での待機をお願いします・・・』
それからは同じ文言の繰り返しだ。
ふうむ、一応日本全体がしっちゃかめっちゃかになっているわけではないのか?
まあ、政府のお偉いさん用の核シェルターとかはあるだろうし。
救助、救助ねえ・・・どうするんだろ。
ヘリなら手軽だけど人数が多すぎるし、あれかな?自衛隊の護衛付きのフェリー的なもので脱出とか?
どちらにせよ今すぐにってわけにはいかないだろうしな。
不要不急の外出禁止なあ、餓死しろってことかな?
しかし俺のこれは有用緊急の外出だから問題ないな!
橋に向かう道すがら、車道のわきから何体かゾンビが出てきた。
何事か叫びながら追いすがって来たが、50メートルほどするとピタリと動きを止めてしまう。
諦めが早いねえどうも。ありがたいけれど。
昼間とか明るい所では、活発に動かないのかな?
なんかあいつら暗いとこにばっかりいる印象があるなあ。
橋に到達した。
やはり放置車両が多いな、歩道に何体かゾンビも見える。
軽トラの小柄な車体ゆえの蛇行運転。
反対車線や歩道をフルに活用して一気に走り抜ける。
あっやべっ!
横転したワンボックスの影から出てきた男子高校生ゾンビを跳ねてしまった。
横スピンしながらゾンビは川に落下。
うわっサイドミラーが割れてしまった。
ホームセンターのカー用品コーナーにあるかな・・・?
ああ違う。
男子高校生よ成仏して・・・成仏して・・・
なんとか橋を抜けた。
川にかかる橋は全部で5本あるが、いつかはそれぞれの状況を確認しておかねばならないな。
恐らく高速道路に通じている一番東の橋は使い物にならんだろうが。
ぎゅうぎゅうに車が詰まっていそうだ。
無事?に橋を抜けることができた。
右折して国道へ。
このまま道なりに行けばホームセンターは左側に見えてくる。
店内にみっちりゾンビの詰まったハンバーガーショップを通り過ぎる。
混みすぎだろ、昼飯時にゾンビが出たのかな。
こんなことになるなら、もっと食べとけばよかったなあ。
自宅周辺と違い、コンビニや牛丼屋の店内にもちらほらゾンビが確認できる。
北側はゾンビが多いのかな?
しばらく走ると、目的のホームセンターが見えてきた。
店の前にある大きい駐車場には、そこそこ車が停まっている。
こりゃあ、気を付けて探索する必要があるな・・・
そう思いながら車道に一番近く、店からは一番遠い場所に車を停めた。
エンジンを切り、素早く降車する。
見える範囲にゾンビはいない。
「よっしゃ、行くか」
俺はリュックサックを背負い、ホームセンターに向かって歩き出した。
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