第9話 魔法の使い方を教わろう
昼過ぎ、ギルドへ戻り、倒した分の魔物の核をギルドへ提出し、換金した。
核(小)18個で銀貨36枚。
昨晩の宿泊費を差し引いて12+36。銀貨48枚になった。
その後、ギルド長に頼んで、手の空いてる職員さんから魔法の使い方について教わる事になった。
「仕方ないですね。暇ではありませんが、、、冒険者でマナの使い方が分からないのは問題です。異世界人だとバレてしまいますからね。下手をすると」
(最初の魔法適性検査の時に居た人だ・・)
小柄なヒト族のギルド職員だ。身長は155cmくらいか・・・
(綺麗というよりは、可愛いって感じかな・・)
そんな事を思いながら、なんとなく見ていると
「なにを薄笑い浮かべてるんですか?キモチワルイ」
いきなりキモチワルイと言われてしまった。
「女性の立ち姿をニヤニヤと笑みを浮かべて眺めるなんて、悪趣味です」
言いたい事はズバッと言う人らしい。思考を読まれたかのごとく、叱られた。
「すみません・・・。つい」
「つい、なんですか?もう見慣れたでしょうに。異世界の人なんて」
異世界の人だから見てたわけではないのだが・・・。何を言っても叱られそうだ。
「失礼しました。つい見惚れてました。魔法の講義、始めてください」
タケミは謝罪し、真顔に戻った。機嫌を損ねてしまうわけにはいかない
「・・・ま、まあいいでしょう。では始めます」
彼女は少し慌てた様子で教壇に立った。
「まず、魔法とは、マナを体外へ放出する事で事象を引き起こす事です。
手を触れずに物を動かすというような、簡単な事もできます。」
それが元の世界で出来たら超能力だ・・・
「体内にはマナが巡っており、これは【オーラ】とか【気】とか、地域によって違う言い方もしますが、根源は同じです。」
【気】とかもあるのか・・・
「核を持つ魔物を感知することはできますか?」
そう聞かれて、タケミは魔物を探知しながら狩りをしたのを思い出した。
「出来ます。今だと半径300mくらいの範囲の魔物の気配はわかります。
町中の人の気配は多すぎてごちゃごちゃですが、、、魔物は核の魔力を感じ取ります。動物は気配が小さく、臭いで判別。あとは、、昆虫は気配が小さすぎて分からないです。」
午前中、魔物探知していた時の事を思い出しながら話した。
「300m!!!!???そんなに?」
「え、、はい。そうですね。だいたいそれくらいは」
「それは凄いわ。Bランクの熟練冒険者の上位レベルよ」
なるほど、探知能力も10倍だからな・・・ワーラビットやワーキャット族よりも探知範囲は広かった。本来なら10~30m内の範囲しか探知できないだろう
「それは、武神の加護によるものですね。たぶん」
「そうでしたね。全能力が10倍なんでしたっけ・・・。」
「はい・・・」
そこでしばし無言になった・・・・
「・・・・・・・ックククク・・・w」
なにやら彼女が笑いをこらえているように見える
「どうしたんです?」
「いえ、なんでもありません。講義を続けます・・・w」
どうせ【童貞縛り】の発動条件の事だろう。人には笑う事を失礼だと言ったクセに
タケミはムッとした。
「ごめんなさい。私が悪かったわ。」
ギルド職員は申し訳なさそうに頭を下げた。
「体内のマナの流れに集中し、マナの循環を感じる事が出来るのであればあとは、属性変換だけです」
「属性変換?」
「はい。体内のマナは基本無属性です。種族特性で最初から属性マナが体内を巡っているような場合以外は、基本的に無属性なの」
「種族特性・・・・?」
知らない言葉がちょくちょく出てくるので、オウム返しに質問してしまう。
「種族特性。。例えばエルフやフェアリーなんかは、体内のマナが最初から風属性だったりします。なので風属性魔法が得意、、というか、風魔法と無属性魔法しか使えない事が多いです。ノームは土。ウンディーネやイフリートなんかは氷と炎とか。特定属性に特化した種族や精霊は、それ以外の属性魔法が極端に苦手だったりするの。」
「へぇ。ウンディーネとかイフリートがいるんだ」
ファンタジーの世界みたいだな。。。。。いや、そうなんだけど。
「人族は種族特性が無い代わりに、あらゆる属性に才能が開花します。もちろん個人差がありますが、、、5種類以上の属性に適性がある人はけっこうレアですが、それらすべての属性で上位以上の魔法を極める天才も、稀に居ますね」
タケミ自身は無属性以外にも水、風、重力魔法に適性があった。これはなかなか良い方なのだろうか。
「タケミさんは無属性+3属性でしたね。もちろん、それぞれの属性が初級しか習得出来なければ、あまり役には立ちませんけど、、、極めれると良いですね(^^)」
このギルド職員が笑顔を見せたのは初めてだった。
(やっぱり可愛いな。)
「そういえば、ギルド職員には人族が多いみたいだけど、、何か理由が?」
ふと思って、聞いてみた
「もともと街では人族の割合が多いというのもありますが、ギルド職員というのは公務員なので、貴族家の次男三男、次女三女が就職するケースが多いのです。」
「え!?貴族なの!??」
「ええ。家督を継承しない貴族家の子供は、冒険者になるには危険だし、力仕事などしたことなかったりするので、、、親の口ききでギルドへ就職する事がかなり多いです。」
親の口ききで・・か。まあそれはそうだろう。
「もちろん、上位貴族家へ執事として働きに出る事がありますが、それは上位職のバトラーやスチュワードであったりするので、よほど有能でないと無理ですし。。。」
・・・ああ、なんか聞いたことあるな。執事系。
「私は子爵家の3女なので、出来る事も少なくて。就職し、毎日忙しくしています。」
子爵家でも十分な貴族な気がするが・・・。タケミにはよくわからなかった。
「マナを感じ取る流れは同じなので、体内にあるマナに意識を向けるのです。そのマナをイメージの中で手ですくい取り、属性魔法の色に変化させるイメージを作るの」
「色に変化・・・」
「そう、風魔法は青や緑をイメージする人が多いです。水魔法は水色や青。色のイメージは人それぞれです。自分のやり方でけっこうですよ。」
タケミはマナを水色に変化させるイメージをしてみた。
タケミの体内のマナが変色するのを、感じ取る事が出来た。
「なんか・・・分かった気がする。これを、、、放出するのか・・」
水魔法・・・・「ウォータ」
心の中で小さく唱え、コップに水が入るのをイメージして手を差し出した。
ドンッ!!!!!!
手から放出された水がコップを満たし、さらに溢れてデスクを水浸しにして吹っ飛ばした。
「きゃあっっ!」
ギルド職員が悲鳴をあげて後ろへ下がる
「おお・・・出た」
タケミは驚いた。しかし、コップを満たす程度の水が出るだけのつもりが、その10倍の水が噴出した。
・・・これも10倍かあ・・・
童帝のスキルの効果で、魔法の威力も10倍だった。
これは手加減が難しい。日常生活魔法を使うのは無理そうだった。
「ありがとう!なんとなくわかったよ!」
タケミは嬉しさのあまりギルド職員に抱き着いた。
「もうっ!だめですよそんなこと!!」
ギルド職員の女性はタケミを思い切り突き飛ばした。
「あ、ごめんなさい。つい」
「つい。でいきなり抱き着いたりしないでください。相手が悪ければ捕まりますよ!」
全くその通りだ。浮かれてしまった。元の世界でもいきなり女性に抱き着いたりすれば逮捕されるだろう。
そのあと、風魔法、無属性魔法、重力魔法も試した。
どれも威力が10倍なので、攻撃魔法として使うか、途中の詠唱で用途や効果を完全にイメージして使うなどしないといけないと教わった。
魔法を使う際、「詠唱」は威力や効果を間違えたり暴発を防ぐために使うらしいのだ。
風魔法「ウィンドカッター」 風の刃で相手を切り裂く
水魔法「ウォーターガン」 大量の水を勢いよく放出して敵を吹っ飛ばす
無属性魔法「身体強化Lv1」 身体能力を強化する。Lv1で10%程度アップ
無属性魔法「空間収納Lv1」 押し入れ程度の広さの空間収納スペースを持つ
重力魔法「加重100%」 任意の相手の体重を100%追加する
重力魔法「減重50%」任意の相手の体重を半分にする
手に入れたのはこれらの魔法だ。
イメージしやすい簡単な魔法をひとまず習得し、間違いや暴発が起きないようにトリガーとなる【魔法名】を名付けた。
イメージで即発動できる簡単な魔法なので詠唱まで考える必要は無かった。
重力魔法だけは【グラビティ●●】みたいなかっこいい効果の魔法を使えないかと色々考えたが、風や水と違い、重力でイメージ出来たのが体重だけだったのだ。
体重を軽くする魔法や、重くする魔法で感覚を掴んだら、
その辺の岩を飛ばすとか、地面を陥没させるとか、いろいろできるような気がした。
・・・後日御礼(と称しての謝罪の意味をこめたご機嫌とりだが・・)の差し入れをすることで、ギルド職員の女性の機嫌は直ったようだった。
午後からは再び外へ出て、魔法を試しながら魔物狩りをし、午後は銀貨50枚を稼いだ。
タケミ Lv4
銀貨48枚+50枚=98枚
宿泊費銀貨3枚
晩御飯(アリーシャにお返しで御馳走した)銀貨3枚
所持金 銀貨92枚
明日は掲示板のクエストを見に行こう。
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