第4話 ギルドで座学(2)


2日目

講師のシムス氏から地理についての話を聞き直し、大陸西部の地図を確認させてもらった。やはり大陸地形は地球によく似ているようだった。


現在地はホーラント東部の地方都市。空白地帯はおよそベラルーシ一帯。ウクライナの森が地球で言うウクライナの国全域を指すのかはわからないが、とんでもない巨大な森があり、エルフの国家があるのだという。

ロシア南部とカザフスタン、モンゴル、中国の一体がほぼ「帝国領土」とされており、東部についてはどこを指すのかは不明で、東の帝国領国境がどうなっているのかわからない。

ロシア方面は山と雪に隔てられた一帯があり、大陸北部と西部に行路は無い。

【西の魔王】の領土はスペイン、フランス、イタリア付近を全域支配しているらしい。オランタ、ヘルキー、あたりが魔王領との境界にあり、魔王軍との戦いを続けている。大陸南部というのはトルコより向こう。インドやパキスタン方面を指すのだろう。地球世界と似ているという事でなんとなく全体像は理解できたが、海路が無い異常他の大陸や、例えば日本列島がどうなっているかは全然わからないのだ。


 いつか行ってみたいな・・・


【属性】

魔法による属性は数多く存在する。

水、火、風、土、光、闇、木、金、重力、無、聖、邪など。国や地方によっても多少理解が異なるらしく、多くの魔導士が研鑽を続け、魔法という存在の系統図を確立しようとしているのだとか。

火は水に弱い、というような単純な属性相性による弱点とか、そういったモノは無いらしい。

魔力が強ければ火は水を蒸発させてしまう。ということだ


また、複数属性の合成魔法で霧魔法、熱魔法、錬金、錬成魔法なども存在するとか。

【魔力の素養】

ヒト族の場合、魔力の素養を持つ者が8割で、そのうち半分が無属性魔法しか使えないそうだ。無属性魔法は【空間収納】【身体強化】【探知】【遠視】などと言った魔法で、軍の一般兵や村町の自警団などに多い。

魔力の素養の無いものは闘いには向かないので、商人や町民として普通に生活している。魔力の素養のある者のうち残りの半分は、無属性以外の魔法に適性を持つ。

半分ほどが2つか3つの属性適性。残りの半分は4つ以上の属性適性を持つ。

極まれに神聖魔法と闇魔法以外のすべての属性に適性を持つものがいるそうだが、

その全てで上級以上の魔法を使える者となると、歴史上でも数えるほどしかいないそうだ。

【マナ量と魔力】

マナ量というのはつまり最大MPのことであり、魔法を行使する魔法力の量を指す。

魔力というのは一度に発動できる魔法の威力の事で、出力の事を指す。

無限のマナを持っていても、魔力が低ければ高出力の魔法は使えないし、高出力の魔法を習得しても、マナ量が少なければすぐ魔力切れになってしまう。

【マナプール】

膨大なマナ量を持っているが魔法を行使できないとか、魔力が弱い者をマナプールと呼ぶ。マナ量の少ない冒険者が、マナ量の多い者をマナ貯蔵庫要員として冒険に連れていくこともあるらしい

【冒険者のランク】

SランクからGランクまで分かれており、それぞれのランクは持っているタグで判断できる。簡素な木などで作られたタグは下位ランク。高位ランクになるとタグも金やミスリルを使ったモノになり、Sランクの冒険者が持つタグはオリハルコンという鉱石を加工したものらしい。冒険者の身分証明だけでなく、吸収したマナの残滓を読み取り討伐記録を証明したり、契約に使用する署名に使うなど用途は様々。

ランクが低いと高額報酬のクエストは受けられない。

【昇格】

FランクからEランク、EランクからDランクへの昇格は、規定任務をこなす事や規定数の魔物討伐で昇格できる。Cランク以上については、昇格任務という特殊任務をこなす事と、ギルドでの面接などを経て、適正だとみなされないと昇格はできない。

【移動手段】

冒険者タグがあれば国境を越えて行き来が出来るが、トラブルを起こせば指名手配されることもある。

空間収納魔法を使った瞬間移動魔法などの移動手段はとんでもない高額費用がかかるため、王族や貴族でもなければ使えない。

徒歩か、馬車か、契約を結んだ動物や魔獣に騎乗するなどの移動手段がポピュラーである。

【ギルドでのパーティメンバー探し】

ギルドの掲示板でクエストを受注する際、メンバー人数や職業、能力に指定がある場合もある。また、新たなパーティメンバーを希望する場合、ギルド受付で申請すれば、マッチング機能もある。地方都市シノスでも120人以上の冒険者が滞在中らしい。

マッチングされたメンバーは、それぞれで報酬の取り分やリーダーなどの役割分担を決める。クエスト完遂後、帰路にてパーティ内で取り分でもめて争いが起きて、パーティメンバーに殺されてしまうという話もあるため、「仲間探しは慎重に!」という警告の張り紙も見かけた。

ファンタジーというか、夢に見た異世界冒険の想像とは、全然違う過酷な現実を見た気がした。

【魔道具】

一般に普及している魔道具は冒険者が使う者は比較的高価で、一般市民が使うものは安価でも購入できる。

●銀貨1枚~100枚程度で流通しているもの

トーチ:マナを通すと火がつき、狭い範囲を火で照らす。明るいが、持ってる人は熱い。火を付けたりするにも使えるので野営には必須アイテム

ランプ:魔力を通すと灯りが点いて周囲を照らす。トーチより明るいが虫が寄ってくる。魔物に見つかりやすいというデメリットがある。街の街灯としても活躍している

センサー:周囲にいる魔族のマナを感知する。半径30m程度の効果

コンパス:マナを込めると東西南北が分る。異常マナ地帯では使えない

ボード:マナを込めると地上20cmくらいで浮く板。歩くよりは早い。子供のおもちゃ用で、マナ消費を考えたら歩く方がいい。

デコイ:ヒト型の人形を放出し敵の目を逸らす。敵がデコイを攻撃すると粘着したり爆発したりとニ次効果を生むデコイも多いが使い捨てのわりにけっこう高額なのでいざという時に使うべし

フラッシュグレネード:使用すると強烈な光と音で相手を驚かせたり目を眩ませる

トラップ:設置すると様々な効果を発揮する罠になる

●銀貨100枚~1000枚程度で流通しているもの

フトン:寝袋のような一人用の袋。気配遮断、静音の魔法がかけられた結界袋

ミニテント:気配遮断、静音、魔物除けの魔法がかけられたテント

中型テント:以下同文 5、6人は入れる

ボックス:空間収納魔法アイテムでLv収納魔法と同程度の空間

ハイボード:大型の板で地上20cm~80cmくらいで浮く。マナ消費はボードと変わらないのでコスパは良い。動けない仲間を運んだりするのに使う事が多い。スピードはあまりでない

●金貨300枚以上の高価な魔道具

スーパーボード:飛ぶ、早い、省エネと高性能のボード。昔魔女と呼ばれる魔法使いがほうきに乗って空を飛ぶ魔道具の初期型を発明したが、数千年かけて改良されここまで進化した。

シェルター:10人以上の人間が快適に入れる安全結界。防音、耐魔物、気配遮断、魔物除け、虫除け、マナ回復、体力回復などの様々な付与がなされた手厚い結界

ハイパーソナー:周囲1km以上の範囲の生物すべてを探知する。風、土の魔法適性中位以上の能力が無ければ効果を最大限に活かせない

ハイパージャマー:真っ黒な外套で被ると気配遮断、無音などの効果を発揮する。

シーフなどが好んで使うが、とても高性能。犯罪利用を回避するために購入者は名簿に記載され、商会やギルドで登録しないといけない。

ミサイル:専用の空間収納魔法に封印されており、使用したらキャンセル出来ない。

マナを込めてターゲットを指定すると凄いスピードで飛んでいき着弾と同時に大爆発魔法が起動する。基本的に軍などが使用するので、Bランク以上の冒険者でなければ購入出来ないうえ、これも購入者は全て登録される。



 魔道具がとんでもなく便利で、科学よりむしろ使い勝手が良さそうだ。

マナを込めればトーチやランプも壊れない限り永久に使える。乾電池要らずだ。

発電機とか、そういう科学技術が全然発展しない理由は魔法が便利すぎたからなのだろう。魔法が多彩に使えるものは、魔道具無しで同じ効果を発揮できるが、魔法を使えない者や、属性適性が無いものも、ほとんどの魔道具はマナを込めれば使えるわけだ。野宿は嫌だと思っていたが、あまり心配は無さそうだ。


2日目もアリーシャと食事をしたので、こういった魔道具についても色々聞いたが、地方都市ではテントやトーチやランプくらいしか売ってないらしかった。

女性の冒険者には最近流通が始まった水魔法を使ったシャワー結界が大人気だそうだ。あとトイレ結界魔法は必需品らしく、女性冒険者にはギルドから補助金が出るんだとか。

ただ、この世界では食事をするとほとんどマナとして消化吸収されるため、元居た世界とは比べ物にならないくらいトイレに行く回数が少ないようなのだった。

 (そういえばこの世界に来て3日目だが、まだ一度もトイレに行ってなかったな)

武美自身も今頃になって気づいた。お腹が痛くてトイレに駆け込む心配も少ないというわけだ。


 ホブゴブリンの討伐とタチガエルの討伐報酬はギルドへの登録費用と服を買う費用で無くなった。明日からは宿泊費用も自分でなんとかしないといけない。


食事と宿泊費用で最低1日銀貨5枚、武器や防具、それにトーチなどの魔道具を買うために金貨10枚は必要だ。

ゴブリン1匹で銀貨2枚、、、カエル1匹で銀貨3枚、ホブゴブリンなら銀貨10枚


Lvが低ければ命がけなのにこの稼ぎか・・・しんどいな。


授かったのは童貞縛りのアビリティだけで、全裸でこの世界に放り込まれて、今になってあの武神にムカついてきた。

明日から外に出て魔物を倒したり、クエストを受けて冒険することになる。

しかし、ワクワクするよりも、家も無い職も無い中で一人で生きてけよと言われているような気がして、ファンタジーの異世界冒険どころでは無かった。


 「まあ、魔王を倒すのが目的じゃ無いし。タケミナカタの名を広めて信仰を集めるのが目的なんだから、危険を避けてやっていけばいいか・・・」


明日はギルドの掲示板そばでアリーシャと待ち合わせだ。

彼女でもなんでもないが、それだけで少しウキウキできた。

待ち合わせの前の日の晩なかなか眠れない、、、なんとなく覚えがある感覚・・・


 「明日、9時半に商店街の前のバス停のとこに来てね!寝坊しちゃダメだからね!」

薄れゆく意識の中、彼女の待ち合わせの言葉を思い出して返事をする

 「わかってるってマッキ」

おぼろげな記憶の中、寝言のように呟いていた
















































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る