十二月 玉野にて
ここで生まれた子の最期にまで関われるということはこの上なく幸せなことだ。
三井から三菱になった【玉野造船】ではあるが、【座敷童】の入れ替わりもなく【道】の様子は依然とほぼほぼ変わることはなかった。ここで生まれた【船霊】たちも相変わらず、遊んで笑ってよく食べて、のびのびと過ごしている。そんな【道】の端っこにある【艦霊】専用に設けた建物に今日は【あの子】が来ている。
「【せとゆき】」
共用スペースのよく日の当たるところで仰向けに寝ている【艦霊】に呼びかける。
「もう、すっかりおじいちゃんじゃなあ」
そう言いながら【せとゆき】の頭側に座り前髪を分けるように撫でるが全く起きる気配を見せない。気配に敏感な【護衛艦】ならば絶対にありえない状況だが、退役を目前にし色んな装備を降ろしてしまえば一気に鈍くなってしまうのだ。
「【ありがとう】」
三十五年分の愛をこめて
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