魔法大学魔法研究サークル
@package
第1話 魔法大学魔法研究サークル
“えー、では部長、最後に一言お願い致します”
【単刀直入に言おう】
【魔法なんざゴミだ】
【よって貴様等もクズだ】
『っざけんじゃねえっつーの!』
「まあまあ…落ち着いて」
『落ち着いてられっか!いみじくも魔法学校の生徒ともあろう者が【魔法なんざゴミだ】って!魔法の冒涜!学校への叛逆だよ!』
「じゃあのサークルはナシって事で…」
『当然!な~にが魔法研究サークル!ただ魔法を馬鹿にしたいだけの偏屈集団の集まりよあんなん!』
「うん…そだね…他はどこ回る予定?」
『私は片っ端から新歓回るわよ!サークル見れて新歓で飯代も浮く!一石二鳥!入りたそ~な雰囲気出して先輩と仲良くなって過去問もGETじゃい!』
「そ…そか…スゴイネー…」
『貴方は何処に入るの!?テニサー!?バドサー!?はたまた漫研!?』
「私は…えと…もうちょっと考える。じゃね」
「…皆凄いな。やりたい事がちゃんと決まってて」
ドカッ
(うわ…前見てなかった)
「あの…すいませんでした」
【いや。今のは私の不注意だ。申し訳ない】
【…。どこかで会ったか?】
【…成程。でお友達が気を悪くしてしまったと】
「あ!いや!その!友達!なんて…まだ会ったばかりだし…そっか…でも友達か…いい響きだなあ…デヘヘ…」
【貴様も相当な変わり者だな】
【…よし。あんな小プレゼンで決めつけられるのも癪に障る。今暇か?】
「あ…はい。後は帰ってご飯作って食べるだけです」
【見学に来い。飯は奢る】
「うわぁ~!すごい!虹色!」
【魔法の性質を利用したランプだ。この色・光の具合は物質だけでは出せない。もう少し凝った魔法を組み込めば時間差で色を変える事も出来る】
「なんですかこれ!綺麗な宝石!」
【魔法を内蔵した宝石だ。呪文を唱えてやると…】
「うわ!火の玉になりました!」
【魔法を放出出来る。持ち運び可能で誰でも使えるって訳だ】
「あ…でも部長…隣の魔法札に火が燃え移って…」
【やっっっばい!暴発するぞ!】
【コライス!】ドオオオッ
【…すまない。ずぶ濡れになってしまったな】
「いえいえ…部室が吹っ飛ばなくて良かったです」
【本当にラーメンで良いのか?】
「ハイ!一度首都のラーメン食べたかったんですよ!」
【そりゃ良かった。この店は私のオススメだ。特にスープが絶品でな…ってもう食べてる!】
「はふぅ…美味しいです…幸せですぅ…」
【美味そうに食うな。奢り甲斐がある】
「…ところで。なんでサークル説明であんな事言ったんですか?」
【ああ…魔法なんざゴミだって話か】
「あんな綺麗なランプ作れて!物に魔法を組み込めばいつでも誰でも魔法が使える!めちゃくちゃ凄いです!魔法!」
【…私にもそんな頃あったっけな】
「え?何ですか?」
【こっちの話だ。まずは…そうだな】
【貴様は普段の生活で魔法を見る事があるか?】
「んん?えと…そりゃ勿論…アレ?」
【即答出来ない。魔法学校に入る程優秀な生徒でも、だ】
【魔法とは…元素を魔法式と呼ばれる記述式に組み込む事で
「人為的に物質を生産する行動である…ですね!」
【そうだ…よく分かったな】
「教科書は読み込んでますから!エヘン!」
【ハハ…だが、だ。こいつはとにかく疲れる】
「そうですね!私も初めて魔法使った時そのままぶっ倒れちゃいましたから!」
【うむ。所謂「MP切れ」だな。初心者によくある】
【更に魔法は調整が難しい】
【さっき“コライス”で火を消した時も…火を消すだけの勢いがあれば十分だったのに結局部室中を水浸しにしてしまった】
「確かに!魔法を小さく出すのは本当に神経使うんですよね!」
【だから日常生活では魔法は使わない。火が欲しけりゃライターを使えば良い。水が欲しけりゃ蛇口を捻れば良い】
「うむ…いやでも!ランプに組み込んだり宝石に入れて持ち運ぶ使い道が―」
【問題その2。魔法は“高い”】
「はぁ…ふむ?」
【魔法を使うアンティーク商品は人間が一つ一つ魔法を組み込んで生産する…つまり】
「大量生産が出来ない…ですか」
【正解だ。所謂伝統工芸品を更に酷くした様な物だ。とにかく高い。あのランプ一個で懐中電灯が100個買える。買うのは余程の物好きだけだ】
「じゃああの宝石やら札も―」
【宝石は言わずもがな。札もそれ専用の材料が必要になる。勿論高い】
【しかも使い道が無い。火が欲しいならライター・水が欲しいなら蛇口・爆発が欲しいならダイナマイト、ってな具合だ】
【以上。魔法学校に入る奴は皆魔法に過度に憧れてるからな。顔面に水ぶっかけて目覚まそうって事。伝わる事は中々少ないがね】
「…あの」
【何だ】
「魔法って…やっぱり利用できなきゃダメですか」
【YES。利用価値の無い研究に金は入らない。金が無ければ研究は出来ない。研究出来ない学問なぞ学問では無い】
「…………………」
【…新入生に聞かせる話じゃ無かったな。すまん】
「私が魔法学校に入ったのは…小さい頃テレビの魔法少女が怖い敵を倒して…それがとても格好良くて…魔法って凄い!って…」
【魔法を使えても魔法少女にはなれん】
「…そりゃそうですけど!」
「じゃあ貴方はなんで魔法研究なんかやってるんですか!」
【世の中には…二つの物しか無い】
【役に立つ物と】
【これから役に立つかもしれない物、だ】
【私は信じてる。いつか魔法に革命的な使用方法が発見され】
【私達の生活の礎になる日を】
「でも!そんなに甘い物じゃ―」
【現実は厳しい。しかし目は逸らせない。それは思考放棄だ】
【私は現実を見て夢を語る。魔法は…復活する】
『クハァ~!新歓で食うタダ飯はうめェ~!履修科目の過去問もGETしたし!順調な学生生活だぜィ~!』
「ハハ…よかったね…」
『そういえば貴方は何処に入るの!?もう決めた!?』
「うん…一応」
『え!?どこ!?やっぱりテニサー!?』
「魔法研究サークル…かな」
つづく?
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