歴史が世界を創造す

成原良樹

1.無

スマホに支配されたような感じがする。

辺りを見渡せば皆が当然のように持ち歩いている。電車の中、歩行中、自転車や車に乗りながらもスマホに支配されている。別にスマホは悪くない。というより善悪があるわけでもない。ただ、俺が疲れているんだ。


すでにアラサー。

夢も希望も金も彼女も何もない。

いきる意味を見いだすために休みの日は1日中スマホに支配されている。

仕事中でさえスマホやPCに張り付いているにも関わらず。

貴重な時間はまるでスロットに消え行く紙幣のように、時は金なりとはよくいったものだ。


1日中スマホ。

前言撤回。

散歩だ。

リフレッシュのために散歩は欠かせない。

スマホから解放されて、2000円だけポケットに入れて、通ったことのない道を探索するのは飽きないものである。

休日は食べたいものを食べたいときに食べるようにしている。

何だか、生きている気がする唯一の楽しみだ。

しかし、しばしば食事とは誰か大切な人とした方が幸せだって思う。

絶対にその方が美味しい。

いつかそんな日もくるんじゃないかと漠然と思っていたが、特にそんなことはなかった。


無である。

食べたいものを食べたあとも無だ。

虚無感と言うのかわからないが

とにかく楽しくない。


別に仕事が嫌いなわけではない。

むしろ、安定して給料が振り込まれることは非常にありがたい。

ただ、意味が見いだせないことにストレスを多少なり感じる。

無意味な会議、無意味なメール、無意味な書類、無意味な人間関係。

そんな平日からのしがらみから抜け出した休日は特別な2日間である。


スマホも散歩も平日からの脱却なのだ。


それでも、本当の自分はどこにもいない。

他人はどれも幸せそうに見えてしまう。

他人無意味に比べてしまう。

増えないフォロワー、コメント、お気に入り。リアルでも友達がいないのに仮想空間で友達を作ろうなんておこがましい。


スマホで自分が見つからないから散歩で見つけようとする。

見つかったことなんてないけど、期待してしまう。

自分はいつから夢も希望もない人間になってしまったんだろう。

ポジティブになりたいのになれない。

いや、ポジティブを演じていたのに演技さえもできなくなっている。


追い詰められたら考える。

世界ってなに?

なんのためにあるの?

生まれた理由は?

生きる意味は?

地球誕生?

ビッグパン?


不毛な疑問に嫌気は指しているが、

何度問い詰めても答えなんてない。

どこにもないと。


そう思っていた。




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