19話「婚姻届のカラクリ」ざまぁ

「昨日応接室で書いた婚姻届だけど、あの婚姻届にはローザと侯爵の名前が書いてあったのよ。幻覚の呪いをかけたから、あなたたちにはエミリーと侯爵の名前が書いてあるように見えたでしょう」


「そ、そんな……」


侯爵、どうして困った顔をしているの? 愛する人と結婚出来たのに不思議ね。


「二人の名前が書かれた婚姻届は執事長が城に提出してきたから、二人は正式な夫婦よ。よかったわね、好きな人と結婚ができて」


私はにっこりと笑う。


「ほ、本人がサインしてない婚姻届なんて無効よ……!」


侯爵の母親が声を上げた。


「あらそう? なら部屋で寝ているローザを叩き起こしてきて、婚姻届にサインさせましょうか」


「む、息子をローザとなんか結婚はさせないわ! ローザにはなんの財産もないんですもの、結婚しても侯爵家にはなんのメリットもないの……あの子はビリーの愛人止まりよ」


だから侯爵の母親は、侯爵とローザが愛し合っていても結婚させなかったのね。


ローザのことはそのうち金持ちの後妻として売り飛ばすつもりだったのかしら? まぁあの女がどうなろうと私には関係ないけど。


「どうしても侯爵とエミリーを結婚させたいって言うのなら、この家ごとここにいる全員を消したっていいのよ。突発的な落雷とか、水害とか、原因不明の火事とか、疫病とか、あなた達を消す方法はいくらでもあるの」


侯爵の母親に向かってにこりと微笑むと、侯爵の母親は失禁した。

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