15話「お茶会」微ざまぁ
「ローザ様があんたにお茶会に参加してほしいそうよ」
部屋でくつろいでいると、メイド長が部屋を訪ねてきた。
「お優しいローザ様のお気遣いに感謝しな!」
場所と時間だけ伝え、メイド長は部屋を出ていった。
「お茶会ね、いわゆる一人の男を取り合う女同士のバトルの場ってわけね。いいわね! その勝負受けて立つわ!」
どうせならあいつらの度肝を抜いてやる。
「自分たちが破いてボロボロにしたはずのドレスを、私が身に着けて行ったらあいつらどんな顔するかしら?」
お茶会の場所は中庭のガゼボだった。
ローザと若いメイドが二人だった。メイドの一人は昨日私にバケツの水をかけた女だ。
「良かったわ〜、エミリー様が〜、いらしてくださって〜、三十分経ってもこないから〜もう来て下さらないかと思いました〜」
前にも思ったが、この女はいちいち語尾を伸ばさないと話せないのか?
ローザは意地悪な顔で笑みを浮かべていた。わざと間違った時間を教えたわね。
「遅くなって申し訳ありません、ドレスを選んでおりましたらいつの間にかこんな時間に」
ローザの後ろにいた若いメイドが、私の身につけているドレスを見て、青ざめた。
「そのドレスが……なぜ……そこに?」
「そんな、破いた……はずなのに」
二人のメイドの手を見ると赤くなっていた。そのうち泣き叫ぶほどの痒みを伴うわよ。
心臓にナイフで抉られたような痛みが走り、目が見えなくなり、顔中に吹き出物が出来る。
その時になって土下座して誤っても許してあげない。
「エミリー様の家は〜、お金持ちですものね〜、いいですね〜、沢山ドレスがあって〜」
ローザは黄色のドレスに、サファイアのネックレス、エメラルドのイヤリングに、ルビーの指輪を身に着けていた。
どれもこれと私の部屋から盗んだものだ。
盗んだものを持ち主の前で堂々と身に着けてくるとは、この女なかなかに肝が据わっている。
ただの考えなしのおバカちゃんなのかもしれないが。
色の統一感がないので散らかった印象を受ける。着こなしも出来ないなら、盗むな。ドレスと宝石が可愛そうだ。
「素敵なお召し物ですね」
嫌味を込めて言うと、ローザが勝ち誇った顔で笑みを浮かべた。
「これは〜、エミリーさんの物じゃ〜ないですよ〜、ビリー様に買って頂いたんです〜、たまたま〜エミリーさんの〜、ドレスや〜アクセサリーと〜似たデザインだからって〜疑わないで下さいね〜」
語るに落ちるとはこのことだ。
「ローザ様は私の部屋にいらしたことがあるのかしら?」
「ありませんよ〜、どうしてですか〜?」
「私のドレスと今ローザ様のお召になっているドレスが似ているとおっしゃっていましたが、私はこの屋敷に来てから着替えたのは一度だけですの。ローザ様のお召になっているドレスと似たデザインのドレスを持っていましたが、この家で着たことも、この家の者に見せたこともございません。ローザ様はいつ私のドレスをご覧になったのですか?」
「それは……」
間違いない、この女は私のいない時に部屋に来ている。
おそらく昨日温泉に転移し部屋を留守にした時に、訪ねて来たのだろう。
部屋の主が留守なのをいいことに、クローゼットを
私が部屋にいたら「荷解きを手伝います」とか何とか言って、ドレスを見ていくつもりだったのだろう。
どれを盗んで、どれを破くか目星をつけるために。
翌日私が食事している間に、メイドを私の部屋に送り込んだ。
気に入ったドレスやアクセサリーを盗み、気に入らないドレスやアクセサリーは壊してくるように命じて。
自分の手を汚さないとは狡い女だ。
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