第104話 新定食

二人になった賢一君と俺は仕事の話を始めた。


「新さん、僕は何から始めたらいいですか、託児所の知識なんてなんにも無いんですけど?」


「そう、私もないよ」俺は笑った。


「えっ……」賢一君は不思議そうな顔をしている。


「何も知らなくていいじゃないか、だからこそ偏見もなく新しいことが出来ると思うんだ。一般にある託児所とはスタートが違うと思う、だから子供の好きな賢一君が本当に預けたいと思うような託児所を目指せばいいと思うよ」


「なるほど……分かりました。では何が必要で、どんな託児所が求められてるのか調べてプランを出します」賢一君は納得したように頷く。


「さすが、専務の息子さんだ、飲み込みが早い」


「新さん!その息子はやめてください」


「あっ!ごめんごめん……つい……」申し訳なさそうに頭をかいた。


「あっそうだ、このパソコン使ってよ、これで何処にいても会議できるし、それに出勤は自由だから、一日働いた時間をこれに打ち込んでよ」ノートPCを渡した。


「了解です」


松本君がノックして入って来た。


「賢一、お昼を新さんが作った社員食堂で食べようよ」


「いいね、行きたいけど……今行ったら親父に迷惑がかかるかもしれないからもっと実績が上がってからにするよ」


松本君は少し寂しそうな顔をして頷いた。


「賢一君、いい仕事しようね」俺が微笑むと「はい、がんばります」そう言って出て行った。


「新さん、ありがとうございます、賢一の楽しそうな顔を見たのは何年振りだろう」少し涙ぐんだ。


そこへ綾乃ちゃんが入って来る。


「お昼に行こうよ、食堂へ」


「綾乃さん、新さんって本当にカッコいいですね」涙を拭いた。


「ええ……そうなの????」


食堂のカウンターには一品多い新専用のトレーが出てきた。


「夏菜!いい加減にやめてよ!新さんにアピールするの!」


「いいじゃない、私の気持ちよ」


「ほら、やっぱりモテモテじゃあ無いですか」松本君が笑った。

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