第94話 プレゼンの天才

当日は留美・綾乃・美由紀・松本と俺5人で会議室へ向かう。

留美さんと綾乃ちゃんでプレゼンが始まった。


「殆どの女性は綺麗になりたいと思ってます、綺麗になるには健康的な要素が必要です、飲むだけで美しさと健康を………………」


役員たちは渋い顔をしている。森田専務が口を開く。


「そもそも根拠がなあ……女性が綺麗になりたいと言うのは何となく分かるんだけどなあ……うちは化粧品屋さんじゃないし…………」


留美さんと綾乃ちゃんは一通り説明すると席へ戻った。しばらく沈黙となり、綾乃ちゃんは俺に目配せする。俺は大きな息を一つすると立ち上がった。


「少し説明を捕捉させて頂きます。そもそも何故女性は美しくありたいのでしょうか?……それは本能が求めているからだと思います。

人の顔はその人の遺伝情報や健康状態を80%表してると言われています。

もしある女性の顔に”私は健康で多くの子供を作ることができます”そう言う情報を男性が感じたら、その女性にアピールするでしょう。

つまり女性が健康で美しくありたいと思うのは本能に支えられた切実な想いなんです。

しかし現代社会は良い食事を時間をかけて取る事は難しいのが現状です。だから一瞬で取れるランチは女性の力強い味方になると思います。

ただ手軽に取れる食品という流行りの物ではなく、そこに内側から健康を支えてくれるところにこの商品の価値があると思います。これは将暉社長の信念でもある売れる物と良い物の融合だと考えられるのではないでしょうか。

忙しい現代女性が一瞬で健康と美しさを手に入れることができるなら、それは男性としても嬉しいことだと思います。

是非商品化の一歩を踏み出せるように、ご理解をよろしくお願いいたします。



将暉社長はゆっくりと拍手をして頷いた。役員達もつられるように拍手をした。

新企画は商品化へ進み始められそうだ。女子マーケティング部の初仕事となるだろう。マーケティング課へ5人は戻ってきた。


「美由紀ちゃんコーヒー入れて」留美さんの指示でコーヒーが用意される。


「新さん、カッコ良かったですよ!……新さんはプレゼンの天才ですね」松本くんは感動している。


「そうね……パパの好きな本能や遺伝子でせめてくるとは思わなかったわ」


「初めは何を言い出すかと思ったけど、そこも演出の一部だったのね」留美さんも感心した。


「私、やっぱり綾乃さんより先に出会いたかった」美由紀ちゃんが悔しそうな顔をしている。


綾乃ちゃんは舌を出して「残念でしたー……」そう言って笑った。


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