第87話 綾乃の料理教室

結局忙しくなってしまった俺と綾乃ちゃんは、火水木の3日間マサキに出社することになり、火曜と水曜の夜は将暉邸に泊まることになった。

将暉パパはまた綾乃が作るママ譲りの手料理が食べれられると喜んでいる。

その事を知った留美さんや美由紀ちゃんは綾乃に料理を習いたいと言い出す。

その結果、運転手として先輩や松本君も呼ばれて将暉邸は賑わいを見せた。


綾乃は女子達に教えながら料理を作っている。


「まず出汁の取り方はこうやってアクを取りながら……野菜の切り方は加熱する火の具合と料理によって馴染むように……」綾乃らしいいさぎよい教室となっていた。

リビングでは将輝パパが男3人にボンペリを進めている。

留美さんがそれを見つけて「運転手さん達は宴会始めてますけど」親指で彼らを指す。


「もう……パパ!、何やってんの、それじゃあ運転手になんないじゃん」


「大丈夫だよ、タクシーチケット出すからさあ、それにこの家が賑やかになって嬉しいんだよ」


「呆れた」綾乃は腰に手を当て怒っている。

ミホさんが「社長も寂しかったんだと思いますよ」モジモジしながらフォローした。


料理が完成すると、結局大宴会となった。


「綾乃さんの料理美味しいっすねえ」松本は肉じゃがを食べながら頷いた。


「なるほど、これならポンカ……新さんの胃袋をつかまれても不思議じゃないわ」美由紀ちゃんは悔しそうだ。

「綾乃ママの直伝だからねえ」将輝パパも嬉しそうだ。

火曜の夜は料理講習会と言う名の宴会になってしまった。


やっと木曜の夜になって別荘へ戻ってくると、綾乃ちゃんはいきなり抱きついてきた。


「3日間もしんどいわあ……」


「そう……」俺は綾乃を優しく抱きしめる。


「3日間も甘えられないと心が折れそう……」


「えっ、そっち???」


「もちろんそっちでしょう」


「仕事はしんどくないの?」


「だって、みんな月金で働いているのよ」


「そりゃあそうだね」


「甘えられないのがつらいだけなの」


「はいはい」綾乃ちゃんを強く抱きしめた。


綾乃はコタツに入っても俺から離れようとはしなかった。


「そう言えば……あのポンカンLINEは助かってるんだけど、なんか綾乃ちゃんに昔のことをチクチクされてるみたいでどうも心が痛いなあ」


「何もやましいところが無ければなんともないんじゃない?」


「やましい所はないよ……」


「ねえ、初恋のともみちゃんには私と美由紀ちゃんどっちが似てる?」


「えっ?何を今さら」


「どっちが似てるかなあって思って」


「まあ、強いて言えば美由紀ちゃんかなあ」


「やっぱり……危なかったね……早く会えてよかった」


「えっ、何?」


「何でもない!!!」




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