第76話 BBQという名の面接

「ねえ綾乃ちゃん、どういう事か教えてくれてもいいんじゃない?」


「美由紀ちゃんがアレルギーで困ってるって聞いたから、池袋まで会いに行ったのよ。それで松本君にサプリやアドバイスを頼んだの。そうしたらすっかり治って感激しちゃったみたい。そしてマサキで働きたいって、だから入社してもらったのよ、とってもいい子だってパパも喜んでたわ」


「新さんの恩人だと聞いてたんですが?……」松本は不思議そうに聞いた。


「そうよ、新さんが別荘に一人落ち込んでいる時に、メル友で慰めてくれてたのよ」


「ああ、それで初めまして、だったんですね」松本は大きく頷いた。


それから6人は賑やかにバーベキューを楽しんだ。


一台の白い外車が駐車場へ入って来る。

松本くんが「あれ?社長の車と同じだ」そう言って車を見た。


「えっ、パパの車じゃん、松本君ここでバーベキューすることを言った?」


「はい、綾乃お嬢さんに呼ばれてバーベキューに参加すると報告しました」


「ダメよそんなこと言っちゃあ…………やだ、パパ来ちゃった」綾乃ちゃんは眉を寄せて唇を噛んだ。


「みなさんお楽しみのところをお邪魔してすみません、この前のお礼にと思ってシャンパンを差し入れに来ました」いつものボンペリをさしだした。


「でた!必殺ボンペリ」先輩がひきつっている。


「もう……パパは本当は参加したいんでしょう?、ってことはミホさんも一緒ね?」


「お酒を飲んだら運転できないと思って」頭をかいている。


「ほら、初めから一緒に飲むつもりじゃん」綾乃ちゃんは口を尖らせた。


「パパが来るとみんなが恐縮して楽しめなくなるでしょう?……気が利かないのねえ……信じられない」腕を組んで怒っている。


将暉社長は綾乃の前で小さくなっている。

それを見た松本君は改めて綾乃パワーに目を白黒させた。


「綾乃ちゃんパパの立場もあるだろう?……」俺は袖を引っ張った。


「だってあまりにも気が利かないんだもの」怒りがおさまらない様子だ。


『これ以上言うと、みんなにヘタレをバラすよ』そっと耳打ちした。


「えっ!…………はい新さん」綾乃ちゃんはスッと大人しくなって座った。


それを見た松本君は「新さんすごい」と感心する。横で美由紀ちゃんも頷いた。


「せっかく将暉社長にお会いできたんだから、色々とお伺いしたいわ」留美さんがフォローを入れてくれた。


将暉社長は嬉しそうにバーベキューへ参加した。


「あっ、これお土産の旅のカラスです」そばにいたミホさんがさしだす。


先輩や留美さん、美由紀ちゃんと俺も不思議そうに見た。


「これ美味しいんですよ」松本くんがニコニコしている。


将暉社長は初めは質問に答えていたが、やがて先輩や留美さんに質問して「なるほど」を連発していた。


ひとしきり楽しむと「若い人達と話ができて楽しかった」そう言って帰って行く。俺は何か胸騒ぎをおぼえた。

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