第57話  綾乃の免許

2週間ほど経つと軽トラが別荘にやってきた。その日から綾乃さんは軽トラでカフェの近くを何回も行ったり来たりして運転の練習している。

やがて普通に運転出来るようになった。


二人は下の町のスーパーまで買い物に行くと、お寿司や刺身などを買って車が使えるようになったお祝いをした。


「久々だなあ……お寿司とか……」ハイボールを飲みながら僕は喜んだ。


「ねえ新さん、私は頑張って運転出来るようになったわ」


「うん、綾乃さんは偉いなあ……」


「そうじゃなくて……もう付き合い出してずいぶん経つんですけど……」


「そうだねえ、時が経つのは早いね」


「だから……私たちはキスから進んでませんけど?」


「そうだねえ、綾乃さん忙しかったからねえ」


「そうじゃなくて……もう……新さんは私の運転免許を取るのにいつまでかかるんですか?」思い切り頬を膨らして睨んでいる。


「ん…………」


「綾乃さんの運転免許?……あっ!!!」僕は赤面し固まる。


「一分一秒はどうなったんでしょうね?」不服そうな顔で僕を見ている。


「それは……そのう……まだ学科試験でさえ受からない状況で……どうやったら免許が取れるんでしょうか?」


「私もわかんないけど……いつまでもキスだけってわけにはいかないでしょう」


「どうしたら良いんでしょう?……」


「新さんはいつも分からないことは検索するんじゃないの?」


「ウィキペにはそんなこと載ってませんよ」


「でしょうね!……でも二人でお風呂に入れるようになりたいわ、だって冬になったらお店が冬季休業になるから、ちまきシスターズは熱海の温泉に行くんだって。私も新さんも一緒においでって誘われているのよ、しかもお部屋には二人で入れるお風呂がついてるんだって」


「そうか二人で入れるお風呂か……そうだ水着を持っていけば良いんじゃない?」綾乃さんを見るとにらんでいる。


何も言えなくなった僕は、下を向いて綾乃さんの手の上に乗るくらい小さくなった……ような気がする。

「頑張ります……」蚊に負けるような声量で返事をした。

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