記憶

バブみ道日丿宮組

お題:燃える料理 制限時間:15分

記憶

「これ……なに入ってるの?」

 彼女に渡された弁当箱には見たこともない色をした食べ物じゃないなにかが見えた。明らかに人間が口にしていいようなものじゃない。実験したなにかだ。

「ん? いろいろだよ」

 いろいろって……どんな料理したら、青いご飯ができるのだろうか。いや……そもそもこれご飯なのか? 豆とか? 揚げ物?

「えっと……これ食べなきゃだめかな?」

「せっかく早起きして作ったんだよ? どうしてそんなこというの。いつも食べてくれるでしょ」

 周囲に目を配ると、羨ましそうに見てくる男子と、うざそうに見てくる女子が見えた。

 付き合ってはや数年。弁当を作ってくれてはいるがこんな奇怪なものを出されることは今までなかった。

「意外に食べたら美味しいかもよ」

「……俺もパンが良かったな」

 昼食に付き合ってくれる友人はいちごジャム入りのコッペパンをそれはもう美味しそうに食べてる。

「じゃぁ次はパン作ってくるよ」

「えっ……できるの?」

「うん、それ食べたらね」

 笑う彼女は自分の弁当箱を開く。

 そこには普通の色をした食べ物があった。

「あれ……?」

「どうしたの? 食べないの?」

 自分との弁当を見比べて、なにを勘違いしたのか。

「なーんだ食べさせて欲しいの? ほんと手がかかるんだから♪」

 箸で青い食べ物をつまみ、こちらへと向けてきた。

「はい、あーん」

「い、いやいや……」

 恥ずかしさより、得体の知れない恐怖で頬に汗が浮かんでくる。

「恥ずかしがらなくてもいいんだよ? 別に怒ってないからね?」

「怒って……?」

 何のことだ? 待てよ……ひょっとしてーー、

「はい、上手に食べれましたね」

「んっーーーーーーーーーー!?」

 記憶を辿ろうとしたが、痛みでかき消された。

「はい、お茶」

 彼女が入れたお茶を一気に飲み干しても、まだヒリヒリと口の中が熱い。

「なんのひょうみりょうだ、ほれ……」

 ろれつが回らない。

「全部食べなきゃダメだからね?」


 記憶がとんだ俺が目を覚ますと、保健室だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

記憶 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る