たぬき

バブみ道日丿宮組

お題:禁断の狸 制限時間:15分

たぬき

「今日は会えるかな?」

「どうだろう。たぬきが好きな餌は罠にしかけたから、上手くいけば……」

 彼は手元の携帯端末を覗き、

「センサー的にはなにかを捕まえったぽい」

「たぬきだといいな」

 乱獲されてあまり山にいなくなったけれど、美味であることには変わりない。

 それに……私たちはたぬきを年に数回口にしなければいけない。そうしなければ生きていけない身体の構成がある。

「きつねか、しかの可能性のが高いかな」

 不満の声が思わず漏れた。

「しょうがないよ。ルールを守らないで捕まえてる猟師がいるんだもの」

 はぁと大きなため息が耳に入ってきた。

 乱獲問題、必要以上に獲物を狩る行為のこと。

「今じゃ禁止エリアが指定されてるからたぬきとの遭遇率は低い」

 そこは一番たぬきがいたエリア。

「でも、そこさえも入り込んだ猟師がいるんでしょ?」

「そうだね。監視カメラに写り込んでる。服装だけじゃわからないから、特徴とそのときの写真がネットには出てる」

「……変わってないよね」

 うんと静かに彼は頷いた。

 禁止すると禁断症状が出ると父は言ってた。たぬきが食べたいという恐ろしい発作。そういってた父もまた牢屋に入るくらい発狂してしまった。

 うちではそんなにたぬきは食べてなかったのに、ある日突然狂った。

「おじさん、早く戻れるといいね」

 うつむいてたからか、彼が優しく頭をなでてくれた。

「原因がわかればいいのだけど……」

 たぬきをあまり食べていない人物が発作を起こすことはないって教科書にも書いてあるし、ニュース番組でも注意事項として報道されてる。

「裏切り者にするために仕組んだっていう話もあるからね」

 相槌を打つ。

「違反者が全員捕まればきっとわかる」

「その前にぼくらが発作を起こすかもしれないけどね」

「そう……ならなきゃいいけど」

 私たちは禁断の果実と化したたぬきを今日も追い求めた。

 それが……いけない結果をもたらすとしても。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たぬき バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る