つくり

バブみ道日丿宮組

お題:犬の広告 制限時間:15分

つくり

 あるネットショッピングに犬ばかり広告がでるようになった。

 こういうのは日頃から使ってる検索ワードで引っかかるらしいのだが家に犬はいない。誰かがパソコンを使って調べたわけでもない。じゃぁなんで表示されるのかといえば、見当がつかない。

「……」

 まず第一に家にいるのは2匹の猫と、4匹のハムスター。犬に繋がる要素がない。動物という概念は同じであるため、広告として犬を今後飼うかもしれないという暗示が秘められてる?

 人間の飼育さえまともにできなかったのにいまさら犬を飼うなんてありえないが……。

 薬漬けの実験サンプルはもう研究室に数多くいる。人の形をしたなにかさえも作られてる。パーツ化し、部分生存させてるものもある。

 ここにいるのはその失敗作。家に暮らしてるのは保管場所がないのと、どれだけ生きられるか、理解できるのかを調べるためであって、他に意味を持たない。動物というものに愛着はないし、人間というのに愛情をかける神経も持っていない。

 親はただの猫、ただのハムスターと思ってるみたいだけど、思考能力は人間以上。普通に放し飼いできるほどに猫とハムスターは人間アピールし続けてる。

 彼らもそれを理解してるためか親の前だと猫を被り続けてる。

 動物はもともと言葉を理解できる構造をしてるということもあるが、改良型は脳の使い方が異なる。より人間に近いと言える。

 とはいえ、食べるものは人間と同じとはいかない。味覚はそのまんまの動物である。その味覚さえ、失敗作はまともに感じることはできない。薬品で栄養をとるやり方でしか生きていけない。

 ただのサンプル。人間様という存在を活かすために作られた生命体。これから先も同じように引き取ってデータをまとめるのが私の仕事。

 どれだけの投与で肉体が壊れるのか、また精神がいかれるのか。そこに注意を向けるモノでしかない。

「ほら、注射の時間だ」

 言葉に従い、足元に動物が集まる。

 彼らが生きるための方法は私の薬品を受け入れることだけ。逃げ出すこともしようとはしない。

「……次」

 動物たちに注射をして気づいたことがあった。

 パソコンに表示された犬の広告は、動物の言葉をデータ化したものが反映されてるのではないか、と。様々な言葉でパソコンのデータを作り上げてるのだから、関係なくはないだろう。

 なら、次のパーツはパソコンとデータを取りあう、デジタル生命体に近いものを作るべきなのかもしれない。

 

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