音楽と

バブみ道日丿宮組

お題:楽観的な音楽 制限時間:15分

音楽と

 気分を変えるために場所を変えるのは実のところめんどくさい。その場で気分爽快になるのが一番であり、移動に時間をかけるのは凄くアホらしい。頭だって有効期限がある。その一瞬が大事であって、変化を強制的に行うのは、作風に響く……気がする。

「持ってって?」

 だから、私は小説の作風に響かないやり方を選択する。

「自分で動けばいいのに」

 そういいながら彼は私を持ち上げて、車まで運んでくれる。

 これが私という労力をかけずに作品を高める方法。そのために彼がいる。

「こんなことなら親御さんの頼み断ればよかったよ」

「まんざらでもないくせに」

 勝手に言ってろと彼は運転席について、車を走らせた。

「下から上まで世話するとは普通考えないだろ……。で、どこにいけばいいんだ? 前みたいに海とかか?」

「海でのイマジネーションはもう済んでるわ。かといって山は違うし」

 途中までしかいけない場所は無意味。図鑑と、その場の空気の味がするお香をたけばいい。砂漠も砂場にいけば、思考が加速する。幻影を見るために絶食すれば、また違うのが見れるかもしれない。

 ただそれで筆を休めるのはいけない。書き続けることが私が私でいるために必要。

「潮の香りは脳にいい刺激がするってこの前いってなかったか?」

「そんな昔のことは忘れたわ。ほら、クラシックをかけなさい」

 はいはいと彼はカーオーディオを操作する。すぐに耳慣れた音楽が再生された。

「全くわからんな。目玉焼きにはちみつをつけるという異常性なみにわからん」

「そこは人の好き好きでしょう?」

 そんなことを考え始めたら、きのこたけのこ戦争というもっとも秘境に近いことがらを暴かなくてはいけない。

「人には人であるべきの選択性があるの」

「なら、自分で歩く、食べる、寝るぐらいはして欲しいものだ」

 音楽に彼のため息が交じる。

「それはご褒美というものよ。こんなにも可愛い少女のすべてを見れるのよ」

「そう感じるのはお前の読者ぐらいだろう」

 今度は私のため息が音楽と繋がる。

「あなたの美的センスが低いのはわかってるけれど、私というものの良さはわかるでしょう?」

「見・た・目だけはな」

 彼は外食にいつも使ってるファミレスの駐車場へと車を向かわせた。

「わかってるじゃない」

「わかりたくはないが、かれこれ3年も付き人というかお前の世話をしてくればだいたいな……」

 口元が緩む。

「そう。あなたもわかってきたのね」

 今度彼のことを本にして見ようかしら。それで読者が嫉妬心に突き動かされて、新しい戦争をおこすのも面白いかもしれないわ。

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音楽と バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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