ざっそうとこども

バブみ道日丿宮組

お題:今日のゲストは雑草 制限時間:15分

ざっそうとこども

 娘が雑草と話す。

「今日ね、お父さんが帰ってこないんだ」

 まるで生命がそこにあるように語る娘の姿は痛々しかった。それが少女が少女であるためにそうなってると理解しても、親となった責任を果たしたいと考えるのは当然のこと。

「うん、本当は今日もなんだけどね」

 でも……なんて声をかければいいのだろうか。

 お前のお父さんはもう帰ってこないんだ、そう正直にいうべきか。それとも亡骸を見せるべきだろうか。まだ小学生の子どもにそんな残酷な話を伝えるべきだろうか。

 世間話は私にはできない。したところで理解してもらえるようなないようじゃない。

「お母さんは最近静か。ぷくぷく泡たてて面白いよね。うん、こっちの話すことはわかるみたい。えっーー」

 娘はお父さんだけでなく、お母さんもいない。

 娘が見てるお母さんは培養カプセルで生かされてるただの物体。泡がたつのは、脳が腐らないようにカプセルが動いてるだけに過ぎない。

 そして私はそんな娘を引き取ったに過ぎない。

 

 ーーいわくつきの家族。

 

 お金がもらえるからといってほとんどの人が関わり合おうとはしなかった。呪われる。異端技術で産まれた子ども。様々なうわさがたち、少女をより一層孤独へと導いた。

 その結果が私という存在を作り出した。

 ある意味で当然といえば当然なのかもしれない。

 娘の父親と母親を知ってる人間で、距離を取らなかったものとなれば決まってる。

 けれど、二人が結婚したとか、子どもができたという話は聞かなかった。

 遠方で仕事をしてたこともあるが、二人の仲が良かったのかと不思議に思う。

「……」

 だからこその培養カプセルなのかもしれない。

 なにが起こったのか。

 想像通りならば、ただの自分勝手。

 まさに実験動物のような存在が、この少女である。

 そんな少女を作り出したとされる母親は生きてるといえるのだろうか。

 父親は私が務めることはできるが、愛を知らないものに愛を与えるのはなにかが違う。ならば、憎しみを与えるべきだろうか。

「明日も晴れるよ」

 虚ろな瞳を作る少女は、今日もまた1人言葉を作る。

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ざっそうとこども バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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