先輩と後輩
バブみ道日丿宮組
お題:彼と諦め 制限時間:15分
先輩と後輩
大好きな先輩と後輩が恋人になった。
「……」
部活で二人はより一層近くで作業するようになった。
花の世話ということもあって、男手が必要なところがあるから、一緒にやってくれるのはとても助かる。
けれど、私の心は雑草が茂ってとてもじゃないけど、きれいに咲くことはできない。きれいに整えることももはや手遅れ。ただ気持ちを抑えることしかできない。
「先輩、今日は先に帰っても大丈夫ですか?」
「ん、どうかしたの?」
肩越しに振り返る先輩の顔は凄く生き生きしてて、心臓がびくんとはねた。声の代わりに聞こえてしまうかもしれないと思いもした。
「えっとですね、今日新しい植物の苗を買いに行こうかと思ってまして」
「そうなんだ。一人で大丈夫?」
あれだったらと先輩は後輩と顔を見合わせた。
「だ、大丈夫です。先輩たちは作業しててください」
私よりも動ける二人がその場を離れればそれだけで枯れてしまう子もできてしまう。
「わかったわ。作業はわたしたちがなんとか終わらしておきますので、購入後そのまま帰宅しちゃってください」
はいと頷き、私は作業用具をまとめた。
「……」
顔をあげると、二人はなにごともなかったように会話を続けた。
他の部員のようにサボってれば注意もできるだろうけど、この部活のいわば主力である二人は口数のように手を動かせてる。
そんな先輩が部長だということもあるから、庭園内に暗い感情を持った人は私以外にいない。みんなペアになって作業してる。
サボるという部分も実際のところは少ない。みんな植物の世話が好きな人が部活に入ってる。それでもあまりこない人はいるけど、その分多くの仕事をこなしてくれてる。
「……」
わたしはなんだろうか。
好きになった相手が結ばれてもなおその姿を見続けるのは……。もしかしたら別れて私と付き合ってくれるとでも思ってるのだろうか? そんな甘い考えではないのは二人の姿を見れてればわかるというのに。
「はぁ……」
作業用具をしまい終えると、庭園の外へ出た。
あの二人の世界のように太陽がさんさんと眩しかった。
私が前に進むには、太陽に照らされて光る月にでも変わるしかない。
それが失恋という憂鬱な気分からの離脱する何よりの方法だと、私はなんども飲み込んだ。
先輩と後輩 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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