リアル外
バブみ道日丿宮組
お題:つまらない体験 制限時間:15分
リアル外
部活が廃部になると聞いて久々に部室へ顔を出した。
「……うす」
いかにもガラが悪いやつが入ったからか、視線が痛い。
これでも部長なんだけど……いや形だけだけど。
「なにしてんの?」
「ガンプラの接着です」
後ろに立ってよく見てみると、土台に足を固定してる最中だった。
「そういうのってもっと空気が入らないところでやったほうがよくないか?」
「作成部の部室はここなんですから、ここ以外だったら家になりますよ」
確かに言えてる。
そんな状況だからこそ、廃部が決定したわけだが。
「他のやつは?」
「読書です」
「ピンナップ集めです」
「性を感じてます」
と様々な声が耳に入った。
「そうか。みんな結構楽しんでんだな」
廃部にならなきゃ顔を見ることもなかったが、案外悪い空気じゃないかもしれない。俺の格好がいわゆるおちゃらけ風じゃなければ、溶け込めたかもしれない。
だが、この道を選んだのは俺。
趣味をかえてリアルを楽しむことにしたんだ。
「……みんな悪いけどさ、来週までにこの部室にある荷物を片付けてな」
はいと静かな声が耳に入った。
「あと先輩方が残したやつは好きなの持っていっていいから、許可はとってある」
顧問は俺の姉でもあり、この部室のかつてのメンバー。そんな姉だからこそ、身内に部室を支配させたかったらしい。
ま、支配したところでなくなるんであれば全く意味がない。
「じゃぁそういうわけだから」
部室を静かにさろうと背を部員に向けると、
「……ぼくたちが実績上げればいいんですよね」
「なんのこと?」
不思議なトーンの声が身体を貫いた。
「今ボクたちのやってきたことをいろんな賞に出してるんです」
「そう……か」
「それが大賞とれば、廃部なくなりますよね?」
俺に言われても困る。
それを決めるのは教師であって、生徒じゃない。
「知らねぇよ。ま、頑張るなら勝手に頑張れ」
俺はもうこの日常を捨てたから、手を差し伸ばすつもりはない。
廊下に出ると、姉が待ってた。
「帰るの?」
「部活するわけでもないしな」
そうと入れ替わるように姉は部室に入った。
「……」
部活の何が面白いのだろう。熱がどうして入るのか。生きるリアルに必要のない行為。そうとしか思えない。
だからといって非行に走るつもりもない。
中途半端。
それが今の俺の生き方。
貴重な体験ができる場所……それが部活にあるのかもしれない。なら、やるのかと言われればやらない。
選ばないことを選んだのだから、その道をそのまま進む。
たとえそれがつまらなくても、俺らしく生きるために。
リアル外 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます