てんしとのであい

バブみ道日丿宮組

お題:真実の天使 制限時間:15分

てんしとのであい

 桃色の天使が降臨した時、僕は言葉を失った。

 正確にいうならば、どうしたらいいのかわからなかったし、転んだ痛みで余計に理解しにくかった。

 天使は転んだ僕を介抱してくれた。いい匂いのハンカチまでも僕のために汚してくれた。

『ありがとう』

 その言葉を伝える前に、天使は腕時計を確認すると驚いた顔をして去ってった。

 

 それが半年前。


 この街に唯一ある高校に入学する前の僕に訪れたターニングポイント。

「……あっ」

 高校として存在するのに、中学までは通信制の教育。成長が熟した頃にようやく他人とのコミュニケーションを許される。

 それが僕らの街のあり方。

 とはいっても、街にその子どもがいることには変わらないから、出会いがないわけでもない。子どもは誰とでもすぐ仲良くなれる。そういう生き物。ただ子どもとはいってもルールを完全に知らないわけじゃないから、誰かの家に行くということはなかった。

 名前も断片的で、本名なのかすらわからなかった。

 だからこそ、教室に入って彼女を見つけた時僕は生きててよかったと心から思ってしまった。一生再会することはないだろうと思ってたその人に出会うことができたのだから。


 そしてまた半年。


「そんな風に思ってたんだ」

「駄目だったかな」

 彼女は頭を振る。

「天使ってのはわたしのようなものじゃないよ。教会にあるステンドグラスに見えるキレイなものたちだよ」

「正確な天使を表現するならそれに近いかもね。でも……子どもの頃の僕には君は天使に見えたんだ」

 遊んだこともない、桃色の髪を持つ清楚感のある少女。童話に出てくる神秘さを感じた。

「ふーん。それで幻滅した?」

「なんで?」

「ほら、わたしってばどちらかといえば男勝りじゃない? クラスの喧嘩にもしょっちゅう巻き込まれるでしょ」

 喧嘩が絶えないクラスだからというものもあって、仲裁役は必要不可欠。

「それができるのも魅力の一つだと思うよ」

 ちゃかさないでと、彼女は笑う。

「あなたと出会えたことは幸運……だったかな」

 彼女はいつか見たときのように腕時計を見る。

「そろそろ授業が始まるわ。いきましょう?」

 差し伸ばされた手を掴む。

 あの時羽ばたいてった天使は、ここにいる。

「また怒られちゃうかもね」

 僕らはこうして一つになった。


 あの時出会わなければ、こうして話すこともなかったと思う。

 そんな偶然が誰にも存在する。

 制限をかけた世界。

 偶然は偶然じゃないかもしれないけど……。

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てんしとのであい バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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