第4話

今日はどういう理由か、なぜか午前のホームルームだけで今日は終わってしまった。

理由を先生に訊いても「大事な会議」と言うばかりで、その詳細は分からなかった。

会議がある日は、普通なら早めに生徒を帰すと思うが、今日はそういう感じではなかった。いくらなんでも早すぎる。こんな午前だけのホームルームで返す日なんか絶対ないはずなのに。

なにかあったのだろう。

俺にはそれしか考えられなかった。


「――あ、おえりなさい綾乃さん」


家に帰ると、スカート姿の氷空が出迎えてくれていた。


「おっと......」


リビングに行くと、朝は会えなかった愛梨がソファに座って俺の事をじーっと見ていた。


「......な、なんだ......俺の顔になんかついてる?」

「きっと、あやのさんのことが好きなんじゃないんですかねっ」

「ちょ、おまっ、ち、違うからな!?べ、別に綾乃の事なんか......!」


愛梨はそう言うと、慌てて二階の方に走り去って行ってしまった。


「あ、あはは......」


俺は氷空の方に視線を送り苦笑い。


「ま、まあ......いずれ、仲良くなる日が来ますよ。ああ見えて、結構いい子なんですけどね......」


なにその自分の子供みたいに言うのは。


「そ、そうなのか......?」


俺はちょっと疑問を抱きつつも、テレビのリモコンでテレビをつけた。


「そう言えば、今日帰ってくるの早かったじゃないですか。なにかあったんですか?」


ソファに座ってテレビを見ていると、俺の隣に氷空が座ってきた。


「え、ああいや、なんか会議っていう事で帰されたんだけど......」

「会議?......なるほど......」

「なるほど?」

「あっ、い、いやなんでもないです!」


慌てて今言ったことを隠そうとする氷空。

......何か怪しい。

怪しいとは思ってもその詳細が分からない。

というより、そもそもこの子が何者なのかもよく分かっていない。(愛梨も同様)

それに今日、今まで学校では見たことも無い少女を見た。

転校生なのかという訳でもなく、午前のホームルームは普通に終わったのだ。

その帰る時、クラスを見渡してもその少女はどこにもいなかったのだ。


「うーん............」


いくら考えたとしても、この子は何者なのかとか、あの少女は何だったんだというのは分からないままでいた。


「あの......一つ聞いてもいいですか?」


とそこへ、少し遠慮がちに質問をしてくる氷空。


「今日、学校のどこかで知らない少女を見ませんでしたか?」

「えっ......」


俺は一瞬怖くなってしまった。

氷空が言っていることは多分......今日目が合ったあの少女のことを言っているのだろう。


「ああ、やっぱり......」


独り言のように言う氷空。

どこかをまっすぐ見ながら俺に言う。


「綾乃さん、その少女ってどういう感じでした?」

「ど、どういう感じって......」

「見た目とか......もし喋ったなら、どういう雰囲気とか......」


そこで俺は、あの少女について思い出してみた。


考える事数分。

ようやく話すことをまとめた俺は、どういう見た目だったかを氷空に伝えた。


「まあ、普通に可愛かったけど......?でもなんか、右目が赤かったような気が......」


あの少女は、目が合ったとき右目だけが赤かったのだ。俺は、ただ充血でもしているのかと思っていたのだが......違うらしい。


「......分かりました」


氷空は、さっきと同じくどこかをまっすぐ見たままそう答えた。







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