6.心配だからいるんだよ

「どうかなさいましたか殿下?」

「それ……僕が送ったドレスとアクセサリーだよね?」


似合うとは思ってたけど…

わかっていたのに一瞬見とれてしまうとは…


「そうですわ。ご自分で贈られたものをお忘れで?それとも似合わないものを贈ったから着てこないとでも思っていらしたの?一応・・婚約者からましてや王子殿下から贈られたものを身につけないのは不敬ですからね。」

「いや!似合ってるよとても。」


着てくれるだろうとは思っていたけど不安はあったんだ。

着てくれなかったらどうしようかと…

シャルが着ているドレスは贈ったものの中でもフリルが少なく…

でもシャルの髪と同じ色のドレスはほんのりとピンク色の装飾が控えめに付いている。

贈ったアクセサリーはペリドットを使用したものばかりでそれを身に着けている。

自分の瞳と同じ色のものをシャルが身に着けてくれているのがすごく嬉しい…


「お世辞は結構ですわ。流行やデザインなどばかりに力を入れずその人に合ったものを贈るようお願いしたいですわね。」


お世辞ではなく本心と言っても信じてくれないのだろうか。

でもそれ以上に…


「贈るのはいいんだ。」


出かけたときに買ってあげようとすると拒むけど…


「そもそも婚約者なのに何も贈られないのは不審に思われるのでは?でも個人的にはやめて頂きたいですわね。こんな…いえ控えさせて頂きますわ。私以外の方に贈る場合それも考えなくては呆れられますわよ。」


だから毎回律義に何かしら送ってくれるんだろう。

いままでの黄色い百合や紫陽花だったり、薔薇のお返しか15本の小輪の黄色い薔薇だったからね。

あとシャル以外に何か贈る気なんて全くないんだけど…

綺麗に踵を返して歩き出す姿に見とれてしまったけどこのままだと不味い。

誰かに言い寄られてしまうかもしれない。

急いで追いかければ案外すぐに追いつくことが出来た。


シャルが挨拶をしている姿は洗練されていて本当に鏡といわれるだけあると思う。

それだけでも息をつく者が多数いるというのに今日は普段と違う装いということで…

挨拶されたものも貴族としては信じられないほど驚いている。

夫人のほうが復帰が早くとても明るい表情でシャルの手を握っている。

そんな彼女らに近づいていけば夫人ははっとした表情でシャルの手を離し口を開く。


「こ、これは殿下も…」


ここで気が付いたが僕は婦人にまで嫉妬してしまっていたのだろう。

シャルの絹のような白い手をほかの人が触ることに…

それに僕が普段会ったときに手を握ろうものならシャルは”何ですか殿下。離してくださいませんか。”というだろう。

僕に気が付いたシャルは一瞬だけ大きな目をさらに大きくしたがその後は完璧な令嬢を崩さなかった。

僕は何度も見とれそうになったりシャルがほかの男に声をかけられないかハラハラしていたというのに…

少しくらい僕自身のことを見てくれてもいいと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る