13.距離感を考えてください!

結婚式はつつがなく終わりました。

ええそのはずです。

そのはずです!

誓いのキスの時に恥ずかしくて顔が赤くなどなっていません!

なっているように見えたならきっとそれは気のせいです!

…嘘です。

ほんとに顔から火が吹くのではと思いました…

いや…キスとかしたことなくて…


不意打ちで頬とか髪とか手とかにされることはありましたけど…

ありましたけど!!

全部不意打ちです!

唇にされたことなどございませんでしたし!

わかっていてされるなんてこともなかったんです!


そうです!

なかったんですよ!

だから仕方がないんです!


もう式も貴族向けのパーティーも終わりましたので肩の荷は降りました。

身内だけのパーティーなので気分は楽です。

でもですね…

殿下が近すぎます…離してくれません…

今まで多少近くとも気にならなかった…というか気にしないようにしていたのですが…

今はどうしても意識してしまうのでほんとにやめて頂きたい!

さっきのもあって…

恥ずかしくて死んでしまいます…

ちょっと離してください…


「殿下…腰から手を離してください…」

「なんで?」


恥ずかしいからに決まってるじゃないですか!

もう色んな方から微笑ましいとかそんな感じの目線を向けられてるんですよ!

殿下のご寵愛がとか言われてほんとに恥ずかしくて居た堪れないくらい!

何故ですか?!

確かにお会いになる頻度は多くなりましたけど婚約者としては普通の頻度だったと思いますよ!

意味がわからないです!

周りの目がなければはっきりと申し上げるのですが…

絶対私がそれが出来ないと分かってこの対応ですよね?

こうなったら…


「殿下との距離が近すぎて私の心臓が持つ気がしまいませんの…ですから…少し離れてもらってもいいですか?」


これで離れなかったら足でも踏んで…さすがに踏むのはやめましょう。

周りの目もありますし。

今回は顔を赤くして少し俯いてから涙目の上目使いです!

正直顔が赤くなるのは素で赤くなりそうだったとこなのですが…


「そう来たか…」


えぇ!そうですとも!

素が残念ということですが公爵令嬢としての振る舞いは決して残念ではないのです!

社交に使えるものでしたらだいたい出来ます!

この前“なんなら色目を使うことも可能ですよ!”と殿下に申し上げましたらとても怒られました。

“僕に使うだけなら……いやそれもだめだね。”とかいう意味のわからないことまで言われました。

まぁそれは置いといてですね。


「離して…くださらないのですか…?」

「…仕方ないから離れるよ。」


やりました!成功です!

殿下に勝った!

いやいやなんの勝負ですか!勝ち負けとかありませんよ!


『仲いいね。嫉妬しちゃうよ。』


あ、ジュンシー様。


『やぁジュンシー。』

『先程ぶりですわね。』


ええさっき形式的な挨拶やらをちゃんとしました。


『さっきも言ったけどとても綺麗だよシャル。もしリヴィが嫌になったらいつでも言ってくれ。いつでも迎えに来ようじゃないか。』


わーお。

前の帰り際の本気ですか?


『いい加減に諦めてよ。今まで遠くから見るだけで話しかけもしなかったくせに。』

『紹介しなかったやつがよく言うよ。』


はて?どういうことでしょう?

きっとお2人にしか分からないことでしょう。

ん?なんでそこで私の名前が出てくるんですか?

まぁいいや…終わりました?


『シャルほどの人となると見つけるのは困難だろうけど…こちらとしてもそろそろ本気で探さないといけないんだ…変なのを押し付けられそうでね。』


だからなんでそこで私の名前が…

もう気にしてはだめですね。

そういえば王子ですものね。

大変そうです。いろんな所から押し付けられそうで。


『ジュンシー様よく分かりませんが頑張ってくださいね。』

『…シャルに言われるのは些か複雑だが頑張るよ。』

『彼女はそういう人ですよ…こっちの気など知りもしないんですから…』


よく分かりませんが褒められていないのは分かります。


お兄様が酷いです。


「殿下…この愚妹は本当に中身が残念で仕方がないやつですが頑張ってください。」


お兄様の私への評価はいつもなんなんですか!


「えぇそれは…これからも苦労しそう…」


殿下もなんなんですか!


「ですよね…めんどくさい性格でしょう。」


残念で仕方がないだけでなくめんどくさいですか!

ちょっ!ため息混じりとかほんとに酷いです!


「まぁそこも含めて好きになってしまっているので仕方がないけどね。あなたも僕がどれだけ頑張ったか知ってるだろうし。」


家族の前でなんてことを…!

そういえばお兄様は元殿下付きの護衛…[今は爵位を継ぐとかでやめました。]

私が知らないことまで知っていそうです。


「…そうですね。振り回し振り回されながらになりそうですが頑張ってください。シャルもまんまり変なこと言うなよ?幸せになれ。」

「そうだね。頑張るよありがとう。」

「私変なことなんて言わないですよ…幸せになりますよ。お兄様も義姉様の事ばかりではなくティファニー家のこともお願いしますね。たまには私も構ってくださいね。」

「どうだか…俺もあいつばかりで他を疎かにする訳には行かないからな…一応可愛い妹だいつでも遊びに来いよ。では殿下。失礼します。」


その照れは義姉様についてですねお兄様!

鬼とか言われていたお兄様がメロメロですもんね!

え?お父様?!泣かないでください!

え?ん?ちょっと聞き捨てならないんですけど?

ここまで頑張った甲斐があったってどういう事ですか?


「殿下…どういう事ですか?」

「ティファニー公爵…お義父様には君を渡してもらうために頑張ったし頑張ってもらったからね。」


言い直さなくてもいいです!

それから…一体何を…


お母様は…ひたすら頑張るように言われました。

はい頑張ります…って!ちょっ…!違います!確かに必要ですけど!まだ!まだ早いです!

うわああああ!!!!なんでそんなにこにこされてるんですか殿下!!!!


陛下…フレンドリー過ぎません?

確かに家族になるわけですけど…

お義父様、お義母様呼びで妥協してください…


嬉しい言葉を沢山頂けて幸せなパーティーでした!



***



「で、殿下…」

「そろそろ意地張っての殿下呼びやめてよ…シャル?」


なんだかんだでちゃんと面と向かって愛称を呼ばれたのは初めてです。

思っていたより…ずっと嬉しい…

で、でもですね…


「…レーヴィ様退いてください。」


この体勢は不味いです。

ベッドに…押し倒されています。


「僕は愛称で呼んでいるのに…」


きゃあ!何してるんですか!

首筋にキスされました。


「なに…」

「愛称で呼んでくれてもいいよね?」


だからせめて最後まで言わせてください!

ってそれどころでは無いです。


「り、リヴィ様…」


あぁ思っていたよりずっと恥ずかしい。


「やっぱり反則だよ…」


耳元で囁かれ背筋がぞくりとしました。

なんかリヴィ様の手が…!

え?服に手をかけないでください!


「だ、だめです…」

「誘ってるようにしか見えないんだけど…」

「そんなつもりは……ん…」


唇を塞がれ喋ることが叶いません。


「シャルは初夜に夫を放って生殺しにでもするつもり?」


それを言われると…


「分かりました…その…初めてなので手加減してください…」

「努力はするけどね…」


目を逸らしながら言わないでください!

え?ちょっ…!

幾度となく重なる唇に苦しくなる呼吸。

そしてぬめりと湿ったものが侵入しそれだけで頭がふわふわとした感覚になっていき……



その後もリヴィ様に翻弄され続け翌日は昼頃まで動けませんでした。

それでも…色々と幸せなのでこの幸せが続くよう。

そして…この国が少しでもより良くなれば私は幸せに感じます。

リヴィ様!一緒に頑張りましょう!

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