第18話 Little Romance(18)
「おねえちゃん、できたよ。」
ななみがひなたに話しかけた。
「え?」
「この前の。家庭科の宿題。」
と、ランチョンマットを手渡した。
「えっ! これもうできたの?」
「うん。 ししゅうもしてあるよ。」
ななみはニッコリ笑った。
「ありがと~。 ななみ~~。 ほんっともうあたしこーゆーの苦手だから・・助かったあ。 あ、ママにはナイショだよ?」
「うん。 だいじょうぶ。 ずっと部屋でつくってたから。」
「ほんとありがと! ええっと・・」
ひなたは自分の財布を出して
「ハイ。 お礼。」
と100円玉をふたつななみに渡した。
「えっ・・お金?」
「うん。 だってこんなにキレイに作ってくれたんだもん。 ほんとななみは器用だよね~。 きっとママに似たんだ。」
「いいよ。 おかねなんか。 あたし、こーゆーのすきだから。」
真面目なななみはそれを返した。
「いいんだよ。 これで。 なんかお菓子とか買いなって。 明日、一緒に買いに行こうか。」
明るく言うと、ななみは嬉しそうにウンと頷いた。
その時
ななみが浩斗のことを好きだ、ということを思い出してしまった。
なんか
複雑。
ななみは自分とは正反対で
身体が弱かったせいか、家でいろいろするのが大好きで
家事の手伝いなんかもよくしている。
きっと
かわいい女の子らしい女の子になるんだろーなあ・・
などと姉ながら思ったり。
「なにやってるの?」
ななみがひなたの机を覗き込んだ。
「え? なんかさー。 今度の社会科見学のリーダーになっちゃって。 レクとか考えろとか言われてさ。 んっとにめんどくさい・・」
「すごいね~。 お姉ちゃん、いっつもそういう役だね。」
「みんなが言うからさあ・・」
ななみもまた
いつも元気で活発でかわいい姉がうらやましくてたまらなかった。
友達もいっぱいいて
いつも笑顔が絶えなくて。
ひなたは風呂から上がって、髪を拭きながらリビングにやってきた。
父が居間でドラマを見ていて、なんとなくそれに目をやった。
すると、恋愛ドラマだったソレの場面は偶然、キスシーンとなり・・
ひなたは何となくそれを凝視してしまった。
それを見た志藤は一瞬、どぎまぎして慌ててチャンネルを変えてしまった。
「ゆ・・湯冷めするから。 早くもう寝なさい。」
もう、父親の典型のようにそういう場面から子供を引き離した。
「はあい・・」
ひなたは素直にそのまま二階に上がっていった。
キス・・
今までだって、あんなシーン
別に普通に見てたけど。
何となく自分の唇に手をやった。
好きな人とは
ああやってキスをしたくなるのかな。
そして、浩斗の顔が浮かんでしまった。
この前の時は
普通にママに言えたのに。
何だか
浩斗のことは
言えない。
ひなたは小さなため息をついた。
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