第17話 Little Romance(17)

こんな気持ちは生まれて初めてだった。



この前


『高野』ってセンパイにコクられたときとは、明らかに違う気持ちで。



どっ


どうしよう。




家に帰ってからも何だか動揺が止まらなかった。



もちろん学校でもぼんやりしてしまい。



「早くそうじしろよ~。 女子! くっちゃべってんじゃねーよ!」


浩斗は全くいつもと変わりがなかった。



なんなのさ


あいつ。



こっちはもう・・


めちゃくちゃ悩んでるっつーのに!!




ひなたは恨めしい目で彼を見ていた。




「じゃあ、今度の社会科見学の班を決めます。 リーダーをまず決めますから。 ええっと立候補!」


担任からそう言われてもひなたはぼーっとしていた。



「志藤さん、やらないの? いつもはこういうとき真っ先に手を挙げるのに。」


いきなりそう言われて、




「えっ!!」


思わず立ち上がってしまった。



「寝てんじゃねーよ、」


浩斗は思いっきりつっこんだ。



「寝てないよっ!」


鼻息荒く彼を睨んだ。



「やっぱリーダーはひなただよ~。 はい、決まり~。」


クラスのみんなからはやし立てられて、



「あ~、もう。 ぜんっぜんやりたくない・・今回、」


ひなたはいろんなことがあって頭がパンパンだった。




しかも。


この前の中間テストが返って来て、それがかなり悲惨な状況で。


悩み多き少女そのものになっていた。





「はっ・・なにこの・・数学35点って!」


ゆうこはテストの結果を見て驚いた。



「わ~、もう! 言わないで~。 死にたいよう・・」


ひなたは両手で耳を押さえてテーブルにつっぷした。



「もう、あんまりひどいと。 ダンスやめさせるわよ。」


殺し文句も言われた。




「うう・・それだけは。 ほんっと、次は頑張るから! ほら・・理科と社会はまあまあだったから・・」



「まあまあって! それでも平均以下じゃない! もう高校入試は内申点があるんだから! しっかりしてよ~。」



「あ~あ。 なんでパパもママも一流大学を出ているのに・・あたしはこんなにバカなんだろう・・」


ひなたはため息をついた。



「はあ?」



「やっぱり! あたしを作るときに適当だったんだ!」


そして、すごい形相でゆうこに噛み付いた。



「バカっ!」



ゆうこは真っ赤になってテストでひなたの頭をひっぱたいた。



そして


「適当じゃないわよ!!」


アホらしい回答をしてしまった。




「もー。 外まで聞こえるやん。 声が。」


その時志藤が帰宅してきた。



「ちょっと! 見てよ! この点数!!」


ゆうこはもう必死な形相でひなたのテストを志藤に見せた。




「は・・」



志藤はさすがに固まったが、その後に


「悲惨やな~。 これは・・」


感心したように言った。



「感心してる場合じゃないわよ!」


ゆうこはまだ怒っていた。



「ま、でも。 天は二物を与えずっていうやろ? ひなたはもう・・めっちゃかわいく産んでやったから。 アホでもな、愛嬌さえあれば、めっちゃ金持ちの男と結婚できるかもしれへんし!」


志藤は笑った。



「そうかな・・」


その気になったひなたに



「もう! バカなこと言わないでっ!」


ゆうこはもう呆れて口が空回りしてしまった。


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