第15話 Lttle Romance(15)

「ね、みて~~。 おいしそうやろ。 今、めっちゃ話題のお店のスイーツなんやで。」



「わ~! いちごいっぱーい!!」



「シュークリームもある~~!」


南が持ってきたケーキの箱を開けた子どもたちはまるで宝箱のように目を輝かせてソレを見た。




「で。 なに? ひなたのカレシ?」


南はやってきた浩斗を見た。



「な・・」


ひなたが否定をする前に



「ちがう! 『ただの』幼なじみだっ!」


志藤が否定した。



「なんやねん、もう。 思いっきり否定して。 なかなかイケメンやのになあ、」


南は浩斗に同意を求めたが



「はあ・・」


もう曖昧な返事しかできなかった。



「でも。 ほんま事業部やめて・・なにが嬉しいっていうのか。 日曜に休めるようになったことやな。」


志藤はつくづく言った。



「ほんま。あたしたちはタイヘンやねんけども?」


南は満面の笑みでちょっとチクリと言った。



「すみません・・いろいろご苦労かけて、」


紅茶を淹れてきたゆうこは言った。



「ウソウソ。 斯波ちゃんも頑張ってるしね。 あたしはサポートするだけやし。 って、ほら。 少年! もっと食べなさいよ。 いっぱい買ってきたんやから!」


南は遠慮してケーキを食べようとしない浩斗に言った。



「はあ・・」




なんか知らないけど


キョーレツな人だな・・




「よくしゃべる人だな・・」


ベランダに座ってケーキを食べていた浩斗はひなたに言った。



「すっごいおもしろくって、あたしにもよく洋服買ってくれたり。 やさしーの。  旦那さんがすっごいカッコイイ人でさあ。 あたしが生まれる前からパパたちとずっと仲良しだったんだって。」


ひなたはニッコリ笑った。




その時


はっとした。





浩斗は家の前の狭い道路で涼太郎やこころを相手にボールで遊んでいた。



「ほんまカレシちゃうの~~?」


その様子を家の中からぼんやりと見ていたひなたに南は言った。



「だから。 ちがうってば!」


ちょっとドキっとして言う。



「もうひなたも中学生やしな~。 恋しても不思議やない年頃やん、」


南はひなたの背中に手をやって笑った。




「ねえ、みーちゃん。」



ひなたはぼうっとして言った。



「ん?」




「・・パパとママは。 ほんっとに愛し合って結婚したの?」




その質問に


さすがの南はぎょっとした。



「は・・」



「ひょっとして。 あたしがデキちゃったからさあ。 もうしょーがねーなあって感じ? ママ、泣いたりしてなかった?」



なに


イキナリのその質問は・・



南は眉間に皺を寄せた。



「あたし。 ママから・・パパがずっと昔に結婚しようとしてた人の話、聞いたから。」



「え・・」



それには少し驚いた。




「そっか。」



南はぽつりと言った。



「あたしはね。 あんたのパパとママが結婚に至るまで。 そばでずっと見てたから。  確かにね~。 いろいろあったよ。 ほんっと。  ママもパパも悩んだし。 うん・・泣いたりもしたしね。」


南はニッコリと笑ってひなたを見た。



少し心配そうにひなたは南を見た。



「でも。 間違いなくほんまにめっちゃ愛し合ってた。 パパとママは。 ううん、今だってずうっとラブラブやん。」



南はひなたの頭を引き寄せるように撫でた。



「いろんなつらいこととか全部乗り越えて。 二人は一緒になろうって決心したんやもん。 確かに・・子供ができちゃったことはびっくりしたけど。 でも、そのときはね。 ホントはもうパパもママもお互いのことしか考えられなかったと思うよ。絶対に離れられない人やってわかってたと思う。」



「みーちゃん・・」



「きっとね。 ひなたも大好きなひとができたらわかるよ。 今はまだ好きだとかそんなこと言ってるだけで幸せ。 でも大人になったら、もういろんなこと乗り越えていかなアカンもん。 一緒に生きていけるって人のことを・・愛してるってゆーんだって思うもん、」


外から浩斗や涼太郎たちの元気な声が聞こえてきた。


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