My sweet home~恋のカタチ。12 --poppy red--

森野日菜

第1話 Little Romance(1)

「おれとつきあってくれ!」



ひなたは


そんなセリフを目の前で吐かれて。



しばしの沈黙の後



「・・ムリです。」



その一言で


彼を一蹴してしまった。




「え? マジ? 高野センパイがっ!?」


ひなたの親友・園田裕香はびっくりして身を乗り出した。



「なんっか・・いきなり呼び出されて。 びっくりした。」


二人は向かい合って給食を食べていた。



「で? どーしたの?」



「え? 断ったよ。」


迷惑そうにそう言った。



「断ったの~~?」



「だって知らない人だよ? ワケわかんないし~。」



「高野センパイってバスケ部のキャプテンで! 生徒会長じゃん! なんで知らないの?」


「そーなの?」


全く興味がないようだった。



ひなたは4月から中学生になった。


地元の公立中学に進み、小学校の時の友達もだいたいそのまんまで


あんまり緊張感のないまま中学生になった。




「え~~、もったいないよ~。 すんごいカッコいいのに~~。」


裕香は自分のことのように残念がった。



「そうかなあ。 普通じゃない?」


ひなたは頬杖をついて言う。



「ほんっとひなたってさあ・・理想のハードル高いし。」



「はあ?」



「小学校の時もさあ。 男子からすんごい人気あったのに。 興味ゼロって感じだった。」



「なんか。 つきあうとかって意味わかんない。 そんな大人みたいにどっか行ったりとかできるわけでもないのに!」



とにかく。



誰が見ても父親にソックリな彼女は


小さい頃から近所でも評判の美少女で。



その上スポーツも万能で、小学校4年生の時にヒップホップダンスに目覚めて、


今は週に2日ほどダンススクールに通っている。



勉強は全くできないが、とにかく活発で男勝りで。


仲間うちでもリーダー的存在だった。



当然


男の子たちからも


モテモテであったが


本人はもう


全く持ってそういうことには興味がゼロだった。



「ひなたはさあ。 『ファザコン』だから。」


裕香は笑った。



「『ファザコン』? って? なに?」



「ひなたはパパが大好きだもんね~。」


からかうように言われて、



「なに、それ。」


ムッとした。



「ほら。 パパがかっこいいからさあ。 他の男子とか全然って思っちゃうんだよ!」



「・・それも意味わかんない、」


ひなたはため息をついた。




「おい! ひなた!」



帰ろうとすると下駄箱のところで呼び止められた。



「ヒロト、」


幼稚園の時からずっと一緒だった同級生の岡田浩斗だった。



「おまえ、高野センパイからコクられたって、ホント!?」




またその話か・・



ひなたはげんなりとして、


「裕香がしゃべったなあ・・」


モロに機嫌が悪そうに靴を履いた。



「断ったの?」


浩斗はさらに聞いてくる。



「ことわったよ。 あたし、その人のことぜんっぜん知らないし。」



浩斗はバスケ部でその彼の後輩にあたる。




「3年女子からいじめられんじゃね?」



「なんの心配? あたし別に悪いことしてないし。」



「おまえは目立つからな~。」



「なんか。 バカバカしいよ。」


ひなたはボソっと言った。



「え?」



「つきあうとか。 そーゆーの。 好きだって思ってればそれでいいのに。」



「子供だな~~。」


浩斗は笑った。



「子供はそっちでしょ!!」


ひなたは鞄で彼の足をバシっと叩いた。



「いってえなあ!!」


それを無視してずんずんと歩いて行ってしまった。


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