第106話
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[ダモン]
[年齢:17歳]
[武力:72]
[知力:56]
[人望:51]
そして驚愕した。
17歳で武力72だと?
ジントは10代で武力80を超えていたようだが似たようなものじゃないか。
多少違いはあるものの、どうやら原石を発見してしまったようだ。
青年期には大きな変化が起こるもの。17歳なら18歳、19歳になるだけでもその能力は一気に開花する。
たくさんの村人が集まっているおかげで隠れた真珠をもうひとつ見つけることができたというか。
こうした人材探しもそれなりに楽しかった。
ゴードゥンやメロルも逸材とは言えないが十分に登用価値のある人物だ。
だが、ダモンの場合このまま成長すればエイントリアンの大きな軸となるかもしれない人材だった。
俺はすぐにエイントリアンから戻って来たばかりのジントを呼んだ。
「あの少年を相手してみろ。ただし、お前は武器を持つな」
ジントに命令した後、ダモンを見ながら言った。
「ダモン、あの兄さんと勝負してみないか? 俺が必ずご両親の敵を討たせてやる」
俺がそう言うとダモンはジントを見た。そして、うなずく。
大人だろうと怖くはなかったからだ。
ダモンの竹槍がジントに迫る。ここに集まった村人たちに負けたことのない少年は自信に満ちていた。
だが、ジントがあっけなくその竹槍を足で蹴飛ばすと少し戸惑った様子。
ここまでということだったら失望するところだった。
だが、少年は戸惑いながらもすぐに態勢を持ち直して攻撃を浴びせ続けた。
竹槍の先を上向きにしてジントの頭を狙う。
ジントはそれを避けたが少年の連撃は続いた。その動きには無駄がない。
次々と竹槍による連続攻撃を仕掛けるダモン。
攻撃が最善の防御という言葉を立証するかのように手を止めることなく攻撃を続けた。
その攻撃を全て受け止めるジントに少年が疑心の目を向けた瞬間、俺はジントにうなずいた。
すると、ジントの回し蹴りが竹槍をへし折った。
「そこまで!」
俺はすぐに中止を命じた。
能力的にはだいぶ満足だ。
「ダモン、よくやった。負けたからと挫折するなよ。あいつは俺よりも強いんだ」
ダモンは以前、俺に一度負けていた。
だから、ダモンはとても驚いた顔でジントを見つめた。それは尊敬の眼差しだった。
もちろん、大通連を使った俺より強いわけではないが、とりあえずジントに尊敬の念を抱かせた方がいい。
そうすることでジントが育ててくれるだろう。
ダモンの目つきも気に入った。
自分より強い者にあれだけの熱望を持てるということは、それだけ成長の可能性も高いということだから。
「だが、君も十分に強い。ジントをあれだけ追い込めるとは大したものだ。今回の蜂起で先頭に立たせてやる。ご両親の敵を討つといい」
「ありがとうございます!」
嬉しそうな顔をした少年の声が響き渡る。
「さあ、訓練に戻っていいぞ」
そう言った俺はジントに囁いた。
「どうだった?」
「すごい力だ」
おぼろげな顔で答えるジントに俺は苦笑した。
ジントもまだ22歳だ。
過去を懐かしむような年齢ではないだろ。
まあ、それだけ能力のあるやつだ。
***
ついに蜂起の日。
それほど長い時間をかけて訓練に励むつもりはなかった。どうせ奇襲だ。
村人たちが兵士を相手してくれれば俺とジントは思ったより自由に動けるようになる。
「うぉぉおおおお!!」
村人たちは喊声を上げながら反乱軍が占拠したエストレンの王都に攻め込んだ。
計画は単純だった。
王都の門は開いている。その門を出入りするのは民だ。
王都にある村の民を糾合したその数は10万に達していた。
エイントリアンの初期の人口は22万。
ここはエストレンの王都だ。王都と王都付近の村の人口は40万に迫っていた。
そのうち戦える民は全員突撃していたためもの凄い喊声だった。
もちろん、訓練度は30と酷かった。それさえも急いで訓練させて10から30に引き上げたのだ。
代わりに士気は90とかなり高かった。
「っ、何だ!」
奇襲も同然だったため、ルシャクが自分の領地から率いてきて王都の親衛隊にした反乱軍が止めようとしたが、城門を閉めることはできなかった。
すでに城門は占拠されていたからだ。
さらに俺はジントを南門に送った。そっちの守衛もぐうの音も出せず死んだことだろう。
俺は先頭に立って約束通りダモンを隣に置いた。少年は意欲を燃やして反乱軍と戦った。
初めての実戦だから人を殺すことへの恐怖があると思っていたがそうでもなかった。
そんなことより親の敵を討つという怒りがずっと大きいようだ。
とにかく俺は次々と兵士を斬り倒した。
それもわざと大通連を振り回し、もの凄いマナ効果を発揮しながら。
一度の[攻撃]で数十人もの一般兵士が倒れていく。
S級に上がった強力な攻撃のおかげだった。
ナルヤ王のように基本武力が110の存在がいないため思いっきり暴れてやった。
「う、うわぁ……」
ダモンを含め俺についてきた村人たちは驚きのあまり唖然としていた。
そのまま王宮の門を破壊して俺たちは一気に王宮内へと攻め込んだ。
うぉぉおおおおお!
憤慨しながら押し寄せてくる民衆を目にした王宮の親衛隊は後退し始めた。
まあ、それに先立ち暴れる俺を恐れて後退する人の方が多かったが。
その頃、ルシャクは王宮の池の前で捕まえてきた女たちを戯弄しながら酒池肉林を繰り広げていた。
公爵を称して王宮を自分の物のように使っているとは。
まったく話にならない。
「公爵殿下、人々が、大勢の人々が攻め込んできます!」
「なに戯言を言ってるんだ。貴様ら、マンシャクのことを探しもせずに気は確かか? 村を荒れ地にしてでもあいつを連れてこいと言ったはずだ!」
「申し訳ございません。ですが、今は状況が……状況が……」
外の状況を見て驚愕した兵士が何度も同じ言葉を凝り返したが、しどろもどろでルシャクには理解不能だった。
ルシャクは顔をしかめた。
「おい、貴様ら!」
そんなルシャクの耳に喊声が聞こえてきた。それもかなり近くで。
「うぉぉおおおお!」
ようやく兵士の話は本当だと悟ったルシャク。
「すぐに私を守れ。貴様ら、こんなことになるまで一体何をしていたんだ!」
そして、大げさに騒ぎ立てながら親衛隊を怒鳴りつける。
俺たちを見たルシャクは苦虫を嚙み潰したような顔で逃げようとした。
そこには彼が捕まえてきて戯弄していた女たちも残っていた。
「お父さん!」
「お兄様?」
「あなた!」
感激の再会か。
それならなお怒りが極限に達するだろう。
自分の娘、妻が戯弄されているのを見てはらわたが煮えくり返らない人などいない。
「殺せ!」
「殺せぇぇえええ!」
「それ以上近づくな。近づけば女たちは皆殺しだ!」
喚き散らしながら後ろに逃げようとしたルシャク。だが、その後ろは壁だった。
退路のない池の前で遊んでいたのが問題だ。
ルシャクという人物。
正直、俺には何の意味もない人物だ。
カシャクならともかく。
「っ、貴様は一体何だ! それにお前ら、よくもこの無骨者どもが!」
「臭うんだよ、黙ってろ!」
俺はルシャクの顔を蹴飛ばした。
彼は息子同様に歯が折れてそのまま地面を転がった。
カシャクが準備したあれだけの遺産を手にして反乱に成功した男。
もちろん、この無能な男の存在がむしろ俺にはありがたかった。
俺は彼を憤慨する民に引き渡した。
結果、ルシャクはめった打ちにされて死んだ。
俺たちはルシャクの首を持ち兵営に向かった。
兵営ではジント率いる農民軍とルシャク軍が交戦を繰り広げていた。
「ルシャクは死んだ。今、君たちは同じ国民に武器を向けている。君たちもこの地の民ではないか。武器を捨てたら生かしてやる!」
すると、あちこちで降伏し始めた。実はここにもルシャクの暴政にうんざりしていた兵士はたくさんいた。
結局、悪性反乱軍の首魁であるルシャクが問題だったわけだから。
「エルヒン様! 外から……外から集まってきています!」
その時、村長が口角泡を飛ばして叫んだ。
「どういうことだ」
別の敵でも現れたというのか。
「他の村からです。参戦しなかった人たちが集まってきています!」
村長の話を聞いて俺は城門に上った。
電話があるわけでもないため、まだこの状況を知らないはずなのに幸いにも遅れて参戦した村だった。
最初から民乱に参加したのはエリウ村とその周辺の村長と親しい村々。
もちろん、難色を示す村も多かった。
だが、今集まってくる村の数は増え続けていた。
最初の数字は5万だったが、あの人たちまで数に入れると20万は超えそうな感じだ。
「ルシャクは死んでエストレンの兵士たちは降伏した! 暴政は終わりだ!」
俺はルシャクの首を掲げながらそう叫んだ。
「うわあああああああああ!」
歓声が沸いた。
まあ、これから大事なのは噂だ。わざと派手な戦いをしたのには理由があった。
一番近くで見た人たちが戦いの話を広めるだろう。
俺の下につけば安全だという意識を植え付けるために噂を広めて悪いことなど何ひとつなかった。
こうしてエストレンの王都は農民たちの手によって征服された。
かつてエストレンの貴族、つまりルシャクに降伏していた貴族たちはそれぞれの領地へ逃げてしまった。
さらに、ルシャクは傀儡王を残して殺戮されたため、本当に残ったものとは何もなかった。
幼い王も権力を得ようとする貴族と共に逃亡したが、俺の目的はルシャクだったから別に追うつもりはない。
彼らは俺が手を下さなくともいずれ分裂するから。
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