第9話

*


「侍従長、城のどこかに特別な場所はあるか?」


 いくら探しても出てこないため、この城を一番よく知る侍従長に聞いてみた。なんとなく、どこか由緒ある場所だとか古い建物、そういった場所に隠されているようにも思えてきたからだ。


「特別な場所ですか……。地下に先代領主の位牌がありますが、王国時代のものまであるので特別といえば特別な……」


 王国時代の位牌?

 確かにそれは特別だ。ぴんときた俺は侍従長の話の途中で走り出した。


「ご主人様??」


 遠くで侍従長の声が聞こえたが、俺の頭の中にはもう特典という言葉しかなかった。狂ったように走って地下へ行くと鉄製の大きな扉が目に留まった。その扉を開けて中に入るとそこには広い空間が現れた。その空間には侍従長の話にあったようにたくさんの位牌が保管されていた。領主時代のものだけでなく、エイントリアンが王国の主だった時代の位牌までもがすべてそろっている。


「へぇ~」


 その位牌を見ていると少し奇妙なものを発見した。位牌の中央に置かれている細長い箱がひときわ目立っている。どう見ても何か特別な感じがする細長い箱だった。俺は迷わず箱に手をかけた。手を触れたその瞬間、光が飛び出すと同時にメッセージが現れた。


[特典を獲得しました。]

[大通連]

[武力+30]

[効果時間は30分。その後5時間のクールタイム。]

[武器スキル:破砕 / 30分に1回使用可能]


 大通連? 日本神話に出てくる神剣じゃないか。

 こんなありえない状況を作ったのがゲームの運営だとすればの話だ。運営が神だから、神剣と呼ばれるあの大通連を特典に?

 まあ、名前はそうとして、アイテムの能力値は正しく特典そのものだった。

 武力が+30にもなるアイテムなど見たこともない。特S級アイテムでもせいぜい武力+10といったところだ。

 その特S級アイテムすらゲーム内には一つしかなかった。

 それなのに+30だと?

 思わず笑みがこぼれた。

 もちろんクールタイムはある

 だが、適宜状況を見ながら使えば、これは明らかにチートだ。

 B級もS級にしてくれる武器ということ。


 +30なら現在の武力が58だから一気に88になる。少しレベルアップをしておくだけで90を超えるということ。そしたら、この世界で太刀打ちできない敵はほぼいなくなる!

 武力を70までレベルアップするだけで30分間は武力100になれるチート。

 それだけ優秀なアイテム。

 にやけが止まらない。

 正しく攻略を助けてくれる特典だ。まあ、命がけのゲームだし、これくらいの特典はないとな。


 *


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