現代の聖書

第18話 死を受け入れたら負け

ヤクザでもテロリストでも極悪人と分かれば令和の剣で斬らねばならない。

これは犬士が始めた戦いである。

今や元悪人達は次々と新たな悪人を見つけてくる。

そして斬れば斬るほど更に捜索範囲は広がる。

休む暇はない。

乙姫の言う通り正にキリがなくなった。

寝ても覚めても悪人を斬る。

そうしながらも里見の死を受け止められないでいた。

◼️

かつて妖怪は退治しきった。

中東の治安も、誰にも成し遂げられなかったほどに良くなっている。

増える一方だったターゲットも居なくなった。

ついに悪人を退治しきった。

一部地域においてのみだが。

何も問題は無い。

里見が死んだ事以外。

◼️

犬神は犬士になる事を自ら選んだし、常に自分の判断で戦いに参加してきた。

強制された事は無く、いつでも辞められた。

しかし今や、選んでもいない想像を超えた人生を歩む事になった。

犬神『ならば辞めるか?』

しかし辞めようがない。

今さら犬士を辞めて、不老を捨てて何を成せると言うのか。

そもそも不老不死が不道徳とは微塵も思っていない。

むしろ死こそ不道徳だと思っている。

自殺は不道徳。

他殺も当然不道徳。

なのに皆、死を受け入れろと強要してくる。

納得いかない。

犬神『俺は負けない、、、死を受け入れたら負け、、、死に負ける?』

犬神『死は敵?死は倒すべき敵だったんだ!』

思考は前向きに狂い出す。

犬神『里見を生き返らせる』

細胞からでも復元させる?そんな科学技術が確立される迄、医学を発展させる?不老の人生をかけて?

犬神『いや、仮に実現出来たとしても細胞すらもう残っていない』

偶然か、座敷わらしを思い出した。

犬神『未来から、、、タイムトラベル、、、』

狂っている。

犬神『不老の人生をかけてタイムマシンを作る、、、俺の頭じゃ無理、、、俺じゃない?、、、いや、俺じゃなくてもいいんだ』

犬神『犬坂先生ならいつか可能にするかも知れない』

◼️

犬神「犬坂先生タイムトラベルは可能だろうか?」

犬坂「今すぐ?」

犬神「いや、いつか」

犬坂「遠い未来になら実現するかも知れません、『遠い未来』と言う条件を付ければ、どんなことでも『実現しない』と言い切る事は出来なくなります」

犬神「里見を助けたい」

犬坂「タイムパラドックスを解決しないといけません、親殺しとかの」

犬神「令和の剣で斬った者がタイムマシンを使えばそもそも殺しはしないのでは?」

犬坂「殺しだけでなく、どんな出来事でも変えてしまったらそこから違う未来になってしまいます」

犬神「死体は?死体を持ち帰るだけなら、死んだ直後の人は何も変えない」

犬坂「死体が無くなれば、起きるはずの腐敗や遺骨も残らないが、、」

犬神「身代わりの人形とすり替えれば」

犬坂「まあそうですね、、出来たとして里見だけ救って満足ですか?」

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