第3話 人権侵害系ヒロイン
稽古を終え、自室に戻った里見が布団に入るとどこから来たのか、座敷わらしが布団に入って来た。
幼なじみの座敷わらしはいつまでも子供の姿のまま成長しない。
昔?は丸一日一緒に遊んだが、小学生になる頃には休日位しか遊ばなくなった。でも寝るときだけは今も一緒。お互いの匂いや、抱き枕替わりで毎日安眠である。
里見は犬神に比べれば過保護に育った方なのかも知れない。
◼️
ある夜、病院の時間外診察を受けに母親と赤ちゃんが来た。赤ちゃんは眠っているのか静かである。
里見は保険証を確認し待合室に案内した。
毎晩のように待合室は満員になる。
大きな病院で時間外診察もやっていると、どこでも混雑するらしい。
女性の警備人員が居るのも婦人科小児科が特に混む為であった。
虐待やいじめが疑われる症状も多い。
里見は虐待する大人に怒りを募らせていた。
いつか令和の剣で改心させてやりたいと。
◼️
令和の剣とは、切られた者を善人にする非殺傷のビームサーベルである。
人の精神を著しく歪めるので人権侵害も甚だしい。
無闇に人に対して使うべきではないのだろうが、
別段里見は対人使用禁止と言われた訳ではない。
◼️
診察の結果、赤ちゃんは眠っているのではなく脳挫傷だった。
やはり、脳挫傷。眠る、いびきをかくのは深刻な脳挫傷の時に出る症状だ。
やはり、母親の雰囲気からして軽症ではなかった。
里見は母親と看護師の話を警備巡回と見せかけて盗み聞きした。
母親は父親の虐待も認めた。
母親にもDVを受けたアザがある。
里見『野郎ぶっ殺す』
保険証の住所は暗記してある。
父親とは婚姻関係ではない。
父親は家に居ると言う。
深夜なので家で寝ているらしい。
『令和の剣を使う』
里見は休憩(仮眠)時間になると、その家に向かった。
時間外診察に来る位だから家は近い。
◼️
里見はいつもの黒いライダースーツ姿にフルフェイスヘルメットを被っている。バイクは電動故に静穏。
ナビ替わりのタブレットには狛ちゃんソフトがインストールされている。
現地付近に着いた。バイクを降りる。
『奴の家は四階建ての集合住宅104号室』
郵便受けの並びから二階の端と断定した。
建物の周りを半周してベランダが並ぶ人気の無い庭側に移動、
あえて三階に届きそうな勢いでジャンプ、
二階ベランダの天井に手を付いて勢いを殺し、
ベランダ内側へ音も立てずに侵入した。
リビングらしき部屋の明かりは消えている。
ベランダのガラス戸に鍵はかかっていなかった。
『治安がよくて助かった』
侵入している時点でよくはない。
足跡は残せないので靴を脱ぎ、リビングに入った。
暗闇に目を慣らしながら男の気配を探る。
仏壇に幼稚園児の写真があった。
『まさか、二度目?』
普通なら死刑しかないんだろう虐待DVひも男を別の部屋で見つけた。
半袖寝間着から見える上腕に和風の刺青。
刺青はおそらく背中にも続いているヤクザ男。
『終、身、刑!』
心の中でそう唱えて令和の剣で突き刺した。
男が苦しみ、気を失った。
善人なら痛くも痒くもないが、
邪悪さに応じて痛みが増すのが令和の剣。
気を失ったならば相当の大悪人である。
里見は充電中のスマホを見つけると手に取る。
指紋認証画面に気絶したヤクザ男の指を当てる。
そして狛ちゃんソフトをインストールしてステルスモードに設定した。
◼️
不法侵入、傷害、強要、プライバシー侵害。
『だから何?』
そんな気持ちでベランダから飛び降りた。
電動バイクにまたがると犬坂毛野からメッセージが届いている。
『帰ったら話があります』
既読にした事は伝わっただろうと思い、
返信はしなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます