幻想闇鍋【彼の場合】
ODANGO WORKS
前置き
〈その夜〉は、天文学的と形容したとしてもなおいい足りないほどのわずかな確率で、一つの偶然がさらなる数多の偶然を呼んだ夜であった。いかなる神の気まぐれか、それとも邪神どもの目論見だったのか、〈彼の地〉を七回滅ぼしても足りぬほどの災厄の種が、その一夜の内に、いっせいに目を覚ました夜であったのである。
その夜、彼の地を中心として、十と三の世界が必然的に十字を形作る位置に急激な移動を開始し、それによって彼の地の地殻及び土着の神々が強力に、一つの方向に向かって牽引され、各地の海底地盤や陸海の火山、海流や各種の魔導線などが活動を再開し、あるいはその性質を望ましくない方向へ変えられた。結果的に様々な魔法的な力が、至る所に乱数的に降り注ぐこととなり、その現象はあらゆるよからぬものの注意を引くことになった。
その一夜だけでこの地を見いだした悪魔の数は百八を数え、ひそかに復活の手筈を整えた魔神の数は片手では足りなかった。星の干渉により己の魔力を驚くほど膨れ上がらせた世界中の魔法使い達は己が野望を実のものにせんと行動を開始し、火山活動によって生じた地の裂け目では太古に滅んだと言われていた原始の民族や恐竜達が目を覚ました。世界中の生態系は一夜にしてその様相を劇的に変化させ、肉食の生き物たちはさらなる獲物を求めて自分たちの縄張りを広げつつあった。
この一夜にばらまかれた災厄の種子達は、この地を揺るがすことになる次の一日へ向けて、それぞれに準備を開始したのであった。
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