訳ありの俺は国籍バレしたら終わりの学園で昔会った吸血鬼に恋をしている。

隴前

一話 夏休み 休みない生徒 補習なり

夏嵐 机上の白紙 飛び尽くす


 これは夏の季語で作られた俳句である。かの有名な正岡子規が詠んだことで有名である。俺はその俳句を聞いてこう思った。夏の南風が机の上にある白紙をすべて飛ばした。

 俳句への感じ方は人それぞれだ。

 そして俺は白紙ではなく用紙を飛ばしてしまった。

ボォーっとしていたことが原因なので怒られたりあの枚数分拾うのは苦労した。


夏休み 休みない生徒 補習なり


これは補習によって夏休みがほぼなくなった一人の学生が屋上で寝転んでいる時に思いついた下手な俳句だ。下手だ。

自覚しているから。


「頑張ろ‥‥‥」


そう寝転んでいる体制から起き上がる。

次の補習のため移動をするため屋上にまた来ると心の中で思い階段を降りていく。



さて移動中は時間があるため次の教科である歴史のことについて簡単な情報を思い出す。


 今から約160年前に120年戦争と言われる内乱が起きた。

結果としては停戦協定がひかれ日本は西と東に分かれてしまった。

そして境界線になっている旧滋賀県などの旧県では西と東の睨み合いが毎日のように行われている。


 120年戦争中に事態の重さを理解した連合国は東日本を支援して、西日本では共産主義の拡大を図った国々が支援した。


 そしてここは東遠院学園とうおういんがくえんという東日本にある学園だ。

普通なら俺はこの学園とは縁がないはずだった。


 なぜなら俺は西日本の人間であるから。

なぜ来るかという経緯はいつでもいいので今は思い出さない。

 そして西日本出身の俺がこの学園に来ることは西日本が企てたスパイ活動と捉えられる心配があった。

しかし俺の祖父はこの学園の理事長と関わりがあったため国籍を東日本に変えることで進学ができた。

なんで祖父は東日本と関わりがあるんだろう?という疑問をこの前聞いてみたところ、


「ああ、腰が痛いな、もう年かな」


とはぐらかされた。仕方ないことだろう。


「こんにちは、魄愛はくあ様」


俺は考えていることを放棄して挨拶をする。

挨拶は大事だ。


「こんにちは、佑夜ゆうや様」


よっしゃ!名前で呼んでいくれた!様はいらないと思うけど。

相手も返してくれるがお付きの人は俺にいぶかしげな目線を送ってくる。


「では」


 お付きの人はそういい、魄愛様は俺の横を通っていく。その時俺に向かって舌打ちをしてきた。

ああ、せっかく魄愛様と挨拶できて嬉しかったのに。


 今、俺が挨拶したのは城上魄愛しろじょうはくあ、サファイアを思わせるような純粋で深い青色のロングの髪はアメジスト色の瞳の左側を隠して、さらに左頬に少しかかっている。

そして右のこめかみあたりには銀色が目立つ髪留めをしている。

つまり美少女、というか俺の理想の好みにあっているのだ。


その魄愛様のお付きの人である木宮瑠奈きみやるなは魄愛様に向けてくるどんな視線にも気付き、訝しげな目を向けてくる。中にはその訝しげ目線を受けたくてわざとするMがいるのだ。

木宮ももちろん美少女と言われるところに属しており、ショートでエンスタタイトと言われる茶色の宝石のような色をしており、エメラルド色の瞳をしている。


 二人とも美少女であり、学園内の人気も高い。


「あらあら、かわいそうね」


そして俺のことをおちょくりに来たお幼馴染みが後ろから話しかけてくる。


「なに?用がないなら話けてくれないでくれ」


俺は眉を上げながら後ろを向き言う。こいつとは身分の関係上話しかけてはいけない。でも魄愛様の時は挨拶としてなのでセーフである。


「ならそんなにも懲りずに魄愛様に声を掛けられるのかしら?」


「誰だって挨拶はするだろ、小さい頃から挨拶をするように言われてきただろ?」


「そうね、なら私に挨拶をしなかったのはなぜかしら?」


「ああ、遅くなり申し訳ございません咲耶さくや様、これでいいでしょう?」


こいつと話すのは面倒なので適当に対応する。


「私からもご挨拶申し上げます、佑夜様」


両方ともにくたらしい顔をして接す。


こいつは連条咲耶れんじょうさくや、補足しては分類的には美少女に入るだろう。気に食わんが。セミロングのルビー色を思わせる赤色の髪をしており、トパーズの瞳のような瞳をしてやがる。

こいつも俺と同じく国籍を変えているのだが俺とは悔しいことに決定的に違うところがある。それはあとでわかるからいいか。


少ながらずこいつのことを好く野郎もいるがなぜかわからん。


そして今、紹介した。魄愛様、木宮、こいつの各三人には当然のようにファンクラブたるものがある。

咲耶こいつになぜファンクラブができるがわからないが魄愛様であるなら納得するし、会員になろうかと思った時もあったが、規則として魄愛様に接触ができなくなるので会員になることはやめた。


ピンポンパンポン


急に呼び出しの放送が流れる。


沖田佑夜おきたゆうや、直ちに理事長室にお越しください』


あー、またか。

咲耶こいつ以外いないことを確認してルンルンとスキップで理事長室に向かう。


「あのバカはまた補習か、思い出したら私のところでもいいけど」


もうバカには聞こえていないことだった。













「理事長〜どこですか?」


 俺はノックもなしに入り、理事長を探す動作をする。本当はどこにいるのか知っているけど。


「このやり取り何回してきた?」


ん?声が聞こえるな?

おかしいな?


「わざとらしくしても無駄じゃ」


この部屋には俺しかいないように見えるのに。


「沖田、これ以上ふざけると国籍の件バラすぞ?」


「やめてください」


俺は急に真面目に理事長が座っている席を見る。

国籍の件がバラされると下手したら死刑になるわ。

というかアイツは高族だから問題ない。

 高族というのは簡単にいえば120年戦争により手柄を取ったものに与えられた、昔の貴族のようなものだ。魄愛様も高族である。

しかし今の俺の国籍は高族ではない。


そしてそこに居たのは小さくていわゆるロリというジャンルに入る銀髪の人。


「おぬしと話していると疲れるから要件を言うぞ、国籍関係なしに退学になるぞ?」


「え」


なんでだ?テストの点が低くても補習を受けて最低は貰っているはず。

なのに退学?国籍は関係ない?ンンン?


「とぼけているのか?この学園のシステムを思い出せ」


「あ」


思い出した。そういえばこの学園は庶民は高族の人を一人決めてその人をあるじとして学園生活の世話をしなければならないのだ。でもそのシステムが適応されるのは2年の夏から。


あ。そうだわ、俺だ。


「沖田は最悪なことに補習のことで今まで忘れていたということは事前に希望書を出していないし、数少ない補習を受ける者としてクラスの評価もそこまで高くないし、高族のパイプもないし、注目すらされていない」


「おおお」


 俺は胸が刺された感覚に陥る。魄愛様にしようとしたが魄愛様は高族の中でトップクラスのところにいるためという身分差と、学園のシステムのことを考慮して木宮というお付きを一緒に入学させていることから俺のような補習のことだけ精一杯なやつには取り入れてくれる隙はないだろう。


ただ咲耶あいつはごめんだ。咲耶は高族で俺からしたら幼馴染みなのでいけそうな感じはするが、なんか俺が咲耶の言いなりになるのはいやだ。


「沖田は魄愛様がいいのだろう?」


俺は素直で顔を縦に振る。

そんなの当たり前だ。


「沖田も分かっているからこそ、魄愛様が選べないと思っているようだが一回ダメ元で頼んで見てはどうじゃ?」


このロリバァの言っていることは共感できる、俺はただでさえこの学園でカーストの中で下だろう、ならこの学園でバレてしまってはいけないことはあるが失うことはなにもない‥‥‥はず。


「希望書に書けばいいのか?」


「そうなのじゃが、沖田は私のことをバカにしたような気がしたから直接頼んでこい」


「え、いやいやそんな理事長様のことをロリバァとは言っていませんよ!?」


 俺は否定する、ただでさえ魄愛様と挨拶だけで舞い上がっている男が直接だなんで脳がショートするわ!!


「よしなら行ってこい」

















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