ヒーローを目指す

星うめ

ヒーローを目指す

僕が子供の頃、憧れたヒーローがいたんだ。

ヒーロー。

誰も敵わない敵に、ただ一人立ち向かい。

決して折れることのない、最強のヒーロー。


誰もかれもが憧れた。

誰もかれもが彼を頼った。


僕もその一人だった。

テレビはいつも言っていた、

「最強のヒーローは彼しかいない!」と。

彼は、いつでも笑みを絶やさなかった。


憧れから、僕は彼みたいなヒーローを目指した。

そして知ったんだ。


ヒーローはいつも命がけだった。


怖かった。

他人のために命を落とすことになるかもしれない。

それでも立ち向かわなきゃいけない。


…誰も僕を助けてくれない。


だって、僕が守る側なのだから。

そしてふと思ったんだ。


彼は、怖いと思ったことはないんだろうか?


彼だって僕らと同じ人間のはずだ。

怖くないなんて事、あるんだろうか?

ましてや敵も彼を知っている。

当然対策もしてくるだろうし、それを捻じ伏せて、彼は勝たなきゃならない。



そんなの、いつまでもつんだ?



ぞっとした。

僕らは、当たり前のようにヒーローを頼って。

ずっと彼が最強であることを信じて。

今まで、彼を一人にしてきた。

彼を助けてくれる人は、この世界の何処にもいないんだ。


一度だけ、彼が言っていたことを思い出した。

「相棒がいてくれたら、と思う時があるよ」


彼は、彼のヒーローを求めていたんだと、はじめて僕は分かったんだ。


そう。だから今、僕が目指しているのはね、

ヒーローを助けるヒーロー。

彼の隣に立つことさ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒーローを目指す 星うめ @wakamori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ